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新清士の「メタバース・プレゼンス」 第80回

ゲーム開発はAI活用が当たり前になりつつあるが、面白さを作り出すのは人間の仕事

2024年09月23日 07時00分更新

文● 新清士 編集●ASCII

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画像や音楽、音声などにAIアセットが活用

 SteamではAI生成コンテンツを「事前生成」と「ライブ生成」とに分けて申請を求めています。事前申請では「開発中にAIツールを使用して作成されたあらゆる種類のコンテンツ(アート/コード/サウンドなど)」と、ライブ生成は「ゲームの実行中にAIツールを使用して作成されるあらゆる種類のコンテンツ」と説明されています。この流れを受けて、AIコンテンツの利用方法も、アセットの利用の場合と大規模言語モデル(LLM)を使ったサービスとに大きく分かれています。

 アセットとしての使い方としては、カードバトルゲームのカードを作成する手段として使わることが少なくないようです。

 例えば、3月に発売された伊Gindro Gabrieleの「ARC TCG」は下記の様に説明しています(オリジナルは英文で翻訳は筆者、以下同)。

 「AIはカード・アートワークの生成にのみ使用された。AIツールを使用するという選択は、開発コストを大幅に削減するためになされたもので、そうでなければこのゲームは発売されなかったかもしれない」

「ARC TCG」 Steamより

 10月に発売される欧州を舞台にした戦略ゲームのポーランドŁukasz Jakowski Gamesの「Age of History 3」はシンプルな説明です。

 「ゲームには、AIによって生成されたユニット、建物、キャラクターの画像が含まれています」

 このゲームは2018年にシリーズ第2弾をリリースしており、その続編なのですが、2ではシンプルなアイコンにとどまっていたものを、AI生成コンテンツを使うことで、リッチ化を図っているようです。

「Age of History 3」 Steamより

 同じような事例は、すでにいくつも登場してきており、AI生成のアセットの使用がインディゲームの開発者に広がっているようです。

 ヒットゲームに説明がついているものもあります。2023年12月にリリースされたスウェーデンのEmbark Studiosが開発した無料の対戦型FPS「THE FINALS」は、数百万ダウンロードされ、現在でも常時1万人以上のユーザーを抱えている人気ゲームですが、以下のような説明がついています。

 「開発過程では、プロシージャルやAIベースのツールを使用してコンテンツ制作を支援することもあります。いずれの場合も、最終的な成果物には開発チームの創造性と表現力が反映されます。例えば、音声合成ツールを利用して、ゲーム内のコメンテーターであるスコッティとジューンの音声を生成することもあります」

 このゲームは「ゲームプレイの様子がテレビ中継されている」というコンセプトで、ゲーム中にコメンテイターがバトルの展開に合わせて発言するという仕組みになっているのですが、その音声にAIを使っているということのようです。ゲーム開発の様々な面に広げていこうと考えていることはわかるものの、全体としてどれぐらいAI生成コンテンツを利用しているのか、この文面でははっきりとはわかりません。

「THE FINALS」 Steamより

 現状Steamの審査は、かなり曖昧な文面であっても、特に問題とされることなく通過しているようです。ただし、ゲーム会社側の申請は画像、音楽や音声といったユーザーに見える部分にのみの表記になっていることが多く、プログラミングに使用したといったことが書かれていることは極めて稀な印象です。

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