このページの本文へ

前へ 1 2 次へ

業務を変えるkintoneユーザー事例 第242回

1人で悩んでいた担当者 年度末に立ち直った3つのきっかけとは?

ヘビーなExcelをkintone化した阪急阪神不動産 迷っても「ありたい姿」があれば

2024年09月17日 09時00分更新

文● 大谷イビサ 編集●ASCII

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

プラグインのフル活用でデータ連携から可視化まで

 導入ストーリーの後は、具体的な活用例の披露となった。まず前提条件として、属人化を避けるため、JavaScriptによるカスタマイズは禁止。その代わり、アールスリーインスティテュートの「gusuku Customine」やメシウスの「krewシリーズ」、トヨクモの「kbackup」などのプラグインを活用している。kintone公式ホームページ内の「kintoneの歩き方」を参考に、お知らせ画面も整え、社内の反響も上々だった。

 買取再販事業でのアプリは全部で31個。マンション、戸建て、土地など物件の種別によって収支内容が異なるため、基本的にはアプリを別々に作成し、gusuku Customineを用いて、これらを転記・集約している。検討リストに入った段階で案件ごとに自動採番し、これらをキーにアプリ間のデータ連携を行なっているという。

買取再販事業でのkintoneの構成図

 このうち特に重要なのは、事業収支計算アプリ。ここではもともと使っていたExcelファイルへの出力が可能になっている。「役員報告や稟議起案で使っていたフォーマットなので、変えたくないという声があった。だからそのまま使えるようにしました」(川本氏とのこと。基本情報を収支から転記し、関連レコード機能で、情報を一元化・可視化を実現。事業部進捗の確認で必要な指標は上部に見やすく表示しつつ、タブと色分けにより実務担当者にもわかりやすくなっている。

 担当者が日々の収支を保存すると、バックエンドでkrewDataがデータを集約し、krewDashboardで進捗を見ることができるようになった。「今、事業がイケているのか、イケてないのか。今期はどうなのかを、一目でわかるダッシュボードとなっている」(川本氏)とのこと。月次資料の作成もボタン一発でPDFが生成されるとのこと。

 予実管理に関しても、今までは物件が増えるたびに、Excelの式を更新していたが、今ではkrewDataで集計し、krewDashboardで図表化することで、手間を削減。数式の更新漏れもなくなり、最新情報が可視化されるようになった。

事業進捗をダッシュボード化

実務担当者、情シス、コミュニティとの付き合い方 だって、みんな仲間

 川本氏がアプリを作るときに気をつけていたのは、まずたたき台を作ってイメージしてもらうこと。「自分からしたら100点だと思っても、実務担当者からすると100点じゃないことはある。実務担当者にレビューをお願いし、何度も使ってもらうことで、利用するイメージを持ってもらうことが大切」(川本氏)。

 また、改善や修正の要望は可能な限りすぐ対応。修正までは難しくても、すぐになんらかのアクションをとることで、担当者との信頼感を醸成し、チームでアプリを作っている雰囲気を構築していた。さらにできるだけkintone内で完結するよう、わかりやすく表現すること。マニュアルを別途で用意し、更新するのはユーザーも、開発者も大変なので、文字を変えたり、色を変えることで、なるべくkintone内の説明で理解してもらうように設定した。

 DX推進部と言われる情シスとの関係も重要だった。同社では、システム管理やプラグイン導入は情シスが主導し、全社的に活用できるプラグインは情シスが費用を負担しているという。「出張して話を聞くなど、他社の事例を知る機会を創出してもらい、私がのびのびとアプリを作る環境を整えてくれた」と川本氏はコメント。

のびのびアプリを作れる環境を構築してくれた情シス

 キンコミをはじめとするユーザーコミュニティや他社事例の活用についても触れた。「社内のアプリ担当者は一人でも、社外にはいっぱいいます。100社100通りの事例を学び、真似ることこそ、kintone活用を素早く運用に持っていくための近道だと思っている」と川本氏は語る。

今後も情報の一元化とデータの可視化を継続していく。仲介事業での営業活動管理や部内の予実管理、経理・庶務業務の効率化など、部内に山積している課題はまだまだある。ほかの人を巻き込みながらこうした課題を解決しつつ、kintone人材の育成にも取り組んで行くという。

 最後に川本氏は「ありたい姿(目標)を掲げること」「まずはたたき台を作り、イメージしてもらうこと」「人を巻き込み、一人だけで抱え込まないこと」を大切なこととしてあげる。「今日この会場にいらっしゃる方は、年齢は違っても、業種は違っても、立場は違っても、kintoneで業務改善したい仲間なんです。というくらい、考え方をポジティブにして、人を社内外問わず巻き込んでいくことこそ、kintoneを長く活用するのに重要なこと」と、一人で悩んでいるkintoneユーザーにエールを送った。

 

前へ 1 2 次へ

カテゴリートップへ

この連載の記事