日立ブランドの家庭用エアコン「白くまくん」シリーズの開発、生産を行うジョンソンコントロールズ日立空調(JCH)のすべての株式を、ドイツのRobert Bosch GmbH(ボッシュ)に譲渡することが発表された。2025年4~6月までに買収が完了する予定だ。
JCHは、2015年10月に、日立製作所の白物家電の100%子会社である日立グローバルライフソリューションズ(日立GLS)が40%、ジョンソン・コントロールズ・インタナショナル(JCI)が60%の株式を保有する形でスタートしたジョイントベンチャーで、日立ブランドの家庭用ルームエアコンや業務用空調機器の開発および製造を行ってきた。
今回の合意では、両社がそれぞれに保有しているすべての株式を、ボッシュが取得。新会社を設立することになる。日立GLSが保有しているJCHの40%の株式の譲渡額は14億ドル(約1950億円)となる。
ボッシュが設立する新会社に対して、日立GLSはブランドライセンス契約を締結し、従来同様、日立ブランドの空調機器を世界各国に提供することになる。また、日本における家庭用ルームエアコンの販売およびサービスは日立GLSが行う。
日本でルームエアコン事業を統括しているジョンソンコントロールズ日立空調の菊地正幸ゼネラルマネージャーは、「発表があってから、取引先やお客様から多くの問い合わせがあった。栃木での生産を継続するのか、白くまくんのユーザーはサポートを継続してもらえるのかという問い合わせが目立った」とする。
そして、その問いに答えるように、「日立ブランドのルームエアコンは、これからも継続する。『白くまくん』もなくならない」と断言。「日本国内での販売、アフターサービス、製品保証もこれまでと同様である。お客様には安心してもらいたい」と説明した。
白くまくんのエアコンは、栃木県栃木市の栃木事業所で引き続き生産。「これまでと同じ工場でモノづくりを続け、品質もこれまでと同様に厳しい基準を維持する。円安が続いていることもあり、栃木事業所は、競争力のある地産地消での拠点として、また確固たる供給力の要として、大切な製造拠点であることに変わりはない」と続ける。
同社では、国内ルームエアコンの国内生産比率50%を目標に掲げており、すでに2024年春に、この目標を達成している。
エアコンは季節商品の最たるものであり、需要は暑さに大きく左右される。また、すぐに欲しいというニーズが強く、急激な需要変動にあわせて安定的に商品を供給しやすい国内生産は強い武器になる。海外生産に移行したメーカーがシェアを落とし、国内生産を強化した日立のルームエアコンがシェアを拡大している理由もそこにある。新会社設立後も国内生産によって、その強みは維持されることになる。
白くまくんは、1959年に、同社エアコンの前面パネルに白くまのシンボル―マークを貼付したのがはじまりであり、その後も製品カタログなどに使われてきた経緯がある。1975年に、日立ルームエアコンの愛称として採用され、2025年には50周年の節目を迎える。また、2025年には、日立が栃木に工場を構えてから80周年を迎える。栃木事業所がある栃木市は、今年生誕150周年を迎えた日立製作所の創業者である小平浪平氏の出身地でもある。
「長年愛されてきた白くまくんの節目となる年を迎え、新たな歴史をスタートすることになる。古いけれども、新しい白くまくんを、多くのお客様にご愛顧いただきたい」と語った。
なお、新会社が「日立」ブランドや「白くまくん」ブランドを、いつまで利用できるかは現時点では決定していない。菊地ゼネラルマネージャーは、「長い期間になると聞いている。具体的にはこれから詰めていくことになる」としている。
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