連載:今週の「ざっくり知っておきたいIT業界データ」 第147回
IT市場トレンドやユーザー動向を「3行まとめ」で理解する 8月10日~8月23日
AI時代の「新しい働き方」適応遅れる日本、デジタルな仕事空間のハイプ・サイクル発表、ほか
2024年08月26日 08時00分更新
本連載「ざっくり知っておきたいIT業界データ」では、過去1週間に調査会社などから発表されたIT市場予測やユーザー動向などのデータを、それぞれ3行にまとめてお伝えします。
今回(2024年8月10日~8月23日)は、生成AIなどを活用した「新しい働き方」のグローバル/日本の動向、パリ五輪を狙ったサイバー攻撃の実態、AIインフラに対する需要、ユーザー企業におけるデジタルツインの導入の進捗、デジタルな仕事環境における新技術のハイプ・サイクルについてのデータを紹介します。
[働き方][生成AI]「生成AIを仕事上で活用せず」日本は57%、グローバルと大差(PwC Japanグループ、8月22日)
・「新しい働き方に適応する準備ができている」日本は45%、グローバル77%
・「過去1年で生成AIツールを仕事に使っていない」日本57%、グローバル37%
・「今後1年以内に転職する可能性が高い」は29%、2022年の14%からアップ
50カ国/500地域、5万6000人以上を対象に、従業員の意識や職場環境を調査した「2024 Global Workforce Hopes and Fears Survey」。グローバル平均では「過去1年間で仕事量が大幅に増加した」が45%、「職場の変化のペースが速くなった」は62%。一方、日本のみのデータを見ると、「新しい働き方に適応する準備ができている」は45%(グローバルは77%)、「過去1年間に仕事で生成AIを使っていない」が57%(グローバル37%)など、将来に向けた変化に対する保守的な姿勢が浮き彫りになっている。
この1年間の「仕事上の変化」について。(オレンジ:グローバル、赤:日本)(出典:PwC)
「仕事量が大幅に増えた」「新しいツールやテクノロジーについて学ぶ必要が出てきた」はグローバルで45%(出典:PwC)
過去1年間の生成AIの活用(出典:PwC)
[セキュリティ]オリンピック関連サイトへの脆弱性スキャンが急増、スポーツ/旅行サイトもDDoS攻撃が増加(Imperva、8月1日)
・オリンピック関連サイトへの脆弱性スキャンは7700倍増加
・スポーツ、旅行関連サイトへのDDoS攻撃はそれぞれ前月比230%、31%の増加
・「Olympic Shop」を名乗る悪意あるアプリなど、ソーシャルエンジニアリング攻撃も観測
7月26日から8月11日に開催された2024年パリオリンピックをターゲットとしたサイバー攻撃動向を調べた。オリンピック関連サイトへの脆弱性スキャンは7月、前月比で7700倍(770000%の増加)となり、攻撃者の活動が活発化したことがうかがえる。脆弱性スキャンを自動化するツールの利用も増えたという。同様に、スポーツ関連サイトへのDDoS攻撃は前月比3.3倍(230%増)、旅行サイトへのDDoS攻撃は同 1.3倍(31%増)だった。オリンピックロゴを不正使用し「Olympics Shop」を名乗るフィッシングアプリが登場するなど、ソーシャルエンジニアリング攻撃も観測されている。
[AI][インフラ]AIインフラ、日本はクラウドへの依存度が高い(レノボ・エンタープライズ・ソリューションズ、8月19日)
・AIインフラへの需要に対して、日本企業の47%が「クラウド」で対応
・27%がAI向けに新しいハイブリッドクラウド環境を構築
・データ管理の複雑さが課題――28%
AIとデータ管理をテーマに、アジア太平洋地域550人(うち日本は100人以上)のCIOやIT意思決定者の調査をまとめた「Smarter Data Management Playbook 2024」より。日本企業は他の地域と比較して、AIインフラとしてクラウドを採用し、クラウドベースのデータストアにデータを移行して戦略的に活用する傾向が強いことが分かった。AI需要を満たすために「クラウドベンダーへの依存が強い」(47%)ほか、「新たなハイブリッドクラウド環境の構築を優先的なアプローチとしている」(27%)ことも分かっている。
[働き方]生成AI、エモーションAIなどが「過度な期待」のピーク期―デジタルな仕事空間のハイプ・サイクル(ガートナージャパン、8月21日)
・生成AI、エモーションAIなどが「過度な期待」のピーク期に
・「AI PC」「AIリテラシー」などが黎明期入り
・幻滅期には「メタバース」「デジタルアダプションプラットフォーム(DAP)」など
デジタルな仕事空間をデジタル・ワークプレイスと定義し、「日本におけるデジタル・ワークプレース・イノベーションのハイプ・サイクル:2024年」を発表した。「過度な期待」のピーク期に位置付けられた「エモーションAI」は、ユーザーの感情状態をAIで分析する技術。コンピューターが人の気分に合わせて特定のアクションをとるといったことが可能になる。「AIリテラシー」では、AIを使いこなす能力だけでなく、AIの負のインパクトやリスクといった知識・理解、AIの実行能力も含まれる。
[デジタルツイン]産業領域で理解・導入が進むデジタルツイン、69%が導入済み/検討中(IDC Japan、8月22日)
・産業領域のデジタル化に取り組む企業の69%がデジタルツインを導入/検討中
・対象は「複雑な製品や機械」(37%)、「工場のライン、作業員の動作など」(33%)など
・76%がデジタルツインについて「概要以上のことを理解している」
デジタルツインに関するユーザー企業調査。産業領域のデジタル化に取り組む企業では、69.1%が「導入済み/導入検討中」と回答している。デジタルツインの適用対象としては「複雑な製品や機械」(37.5%)が最多で、次いで「工場のライン、作業員の動作など」(33.3%)、「ビル、施設など」「人流、交通流など」(共に26.4%)など。

この連載の記事
-
第211回
ITトピック
要件定義をAIが支援し「工数を半分以上削減」7割超/“日本独自のAI推進モデル”が判明/AIセキュリティ導入の課題、ほか -
第210回
ITトピック
生成AI普及後も「IT技術者採用は減らない」が約8割/今後5年で倍増のデータセンター電力消費、3分の2は米国・中国、ほか -
第209回
ITトピック
脆弱性のあるVPN機器、6割の企業が「すぐ特定できず」/来年注目の“11のIT戦略テーマ”発表/管理職の半数が「燃え尽き」を経験している、ほか -
第208回
ITトピック
日本のクレカ情報、闇市場では世界一高値で売買/東京が2年連続で世界一、DC建設コスト/誤情報・偽情報への企業対策が加速、ほか -
第207回
ITトピック
人事評価に6割超が自己評価との「ギャップ」感じる/“AIの波”を生き延びるための技術トレンド/AIプロジェクトの6割超がPoC止まり、ほか -
第206回
ITトピック
IT技術者として何歳まで働く? 40代と60代の意見差/年率66%で急成長の「DAP」市場/フリーランス新法施行1年で改善実感の声、ほか -
第205回
ITトピック
ランサム被害企業の3割が「繰り返し被害に遭った」/インフラ技術者の年収アップに効く資格取得/AIに雇用を奪われるのは若手人材? ほか -
第204回
ITトピック
技術学生の大手SIer就職人気が躍進、その理由/成長率37%“急速拡大”の国内AI基盤市場/物価上昇で退職金の実質減少が続く、ほか -
第203回
ITトピック
1件のセキュリティ事故が281社に影響連鎖、恐ろしいサプライチェーンリスク/シニア人材がプロとして働くモチベーションは? ほか -
第202回
ITトピック
ICT求人の8割で「AIスキル」が職務要件に/経営層が熱望するソフトウェア革新/セキュリティのハイプサイクル発表、ほか -
第201回
ITトピック
顧客接点にデジタルヒューマンが浸透/「週休3日」求人はこの5年で5倍に増加/iPhone 16eが期待外れだった理由、ほか - この連載の一覧へ







