この記事は7月31日刊行の書籍、三上洋氏著『深掘り! IT時事ニュース──読み方・基本が面白いほどよくわかる本』(技術評論社 刊)より一部抜粋・編集したものです。詳しくは本書をご確認ください。
大手ネットサービスが一斉にストップする大規模障害が繰り返し起きています。上流にあるクラウド・IT基盤そのものの障害によるものです。これらクラウド障害の事例・影響と対策を紹介します。
クラウド・IT基盤が社会を支えている
私たちの生活・仕事から企業・政府・自治体業務まで、ほとんどの営みはネットを経由、もしくはネット上で行なわれています。今やネットなしでは社会は成り立ちません。
それを支えるのがクラウドとIT基盤です。クラウドとはネット経由で様々な機能・サービスを提供すること。同様の言葉として「IT基盤」と表現することもあります。IT基盤はITサービスの裏側で動いている基礎、インフラだと言っていいでしょう。次の表はクラウド・IT基盤の主な種類をまとめたものです。
まずクラウドと言えば、企業やネットサービスが使うAmazon Web Services(AWS)やマイクロソフトのAzureなどがあげられます。これらは様々なサービスを利用できる総合型で、この表の下にある機能を含んでいるとも言えます。それに対してワードやエクセルをネット経由で利用できる「Microsoft365(旧Office365)」は、アプリケーションをネット上で提供するタイプのサービス。私たちにもっとも身近なクラウド利用だと言えそうです。
「自治体向けクラウド」は税・住民管理・健康保険などの自治体業務のアプリケーションをネット上で使えるもの。多くの自治体はすでにクラウド上で業務をしているわけです。CDN(コンテンツデリバリーネットワーク)は、動画などのコンテンツを本来のサイトとは別の場所から配信して高速化・負担軽減をはかるものです。その他に企業ではビジネスチャットやテレビ会議をクラウドサービスで使っている他、私たち個人もネット上でファイル置き場であるデータストレージを使っています。
このように、クラウド・IT基盤は今や社会のあらゆるシーンで利用されている公共インフラと言えるでしょう。