重要なのはAIが「工程」を理解すること
イリヤさんがこの技術で狙っているのは、「人間の絵を描く動作」のモデル化です。
この研究の副題は「デジタル絵画における描画動作の基本モデル」で、「Paints-Undoをベースモデルとして人間の行動を分析」することが目的に掲げられています。
AIというのは基本的に「人間の行動をいかにモデル化して、コンピューターで再現可能にするか」ということを大きな目標として持っています。今の画像生成AIの限界は、最終的な完成画像をいきなり出すところにありますが、絵として考えた場合に、人間は絵を完成させるまでに、下描きをしたり、着彩をしたりと、中間段階のことをやっていますよね。その作業そのものをAIでモデル化できないかということを目指しているわけです。
そしてイリヤさんは、さらに大胆な目標も掲げられています。
「Paints-Undoをスケッチガイド付き画像ジェネレーターと組み合わせて『Paints-Redo』を実現し、完成/未完成の作品を任意に前進/後退させ、人間の創造力を高めます」(イリヤさん)
Paints-Undoが「過去」の過程に戻すことができるのならば、それらを発展させ、絵を描いている最中に、「次に何をすればいいのか」ということをAIが補助して提案してくれるようになるということです。ある線を描いたときに、「次の線はここです」とガイドする。将棋で言えば「次の手はここです」ということをAIにサジェストさせるようなことをクリエイティブ向けにやりたいと言っているわけです。
イリヤさんが実際にPaints-Redoを作り上げるまでやるのかはわかりませんが、そういう事ができる可能性があることを具体的に示したということは、ブレイクスルーと言ってもいいでしょう。

この連載の記事
-
第134回
AI
“AI読者”が小説執筆の支えに 感想を励みに30話まで完成 -
第133回
AI
xAIの画像生成AI「Grok Imagine」が凄まじい。使い方は簡単、アダルト規制はユルユル -
第132回
AI
画像生成AI:NVIDIA版“Nano Banana”が面白い。物理的な正確さに強い「NVIDIA ChronoEdit」 -
第131回
AI
AIに恋して救われた人、依存した人 2.7万人の告白から見えた“現代の孤独”と、AI設計の問題点 -
第130回
AI
グーグルNano Banana級に便利 無料で使える画像生成AI「Qwen-Image-Edit-2509」の実力 -
第129回
AI
動画生成AI「Sora 2」強力機能、無料アプリで再現してみた -
第128回
AI
これがAIの集客力!ゲームショウで注目を浴びた“動く立体ヒロイン” -
第127回
AI
「Sora 2」は何がすごい? 著作権問題も含めて整理 -
第126回
AI
グーグル「Nano Banana」超えた? 画像生成AI「Seedream 4.0」徹底比較 -
第125回
AI
グーグル画像生成AI「Nano Banana」超便利に使える“神アプリ” AI開発で続々登場 -
第124回
AI
「やりたかった恋愛シミュレーション、AIで作れた」 AIゲームの進化と課題 - この連載の一覧へ





