重要なのはAIが「工程」を理解すること
イリヤさんがこの技術で狙っているのは、「人間の絵を描く動作」のモデル化です。
この研究の副題は「デジタル絵画における描画動作の基本モデル」で、「Paints-Undoをベースモデルとして人間の行動を分析」することが目的に掲げられています。
AIというのは基本的に「人間の行動をいかにモデル化して、コンピューターで再現可能にするか」ということを大きな目標として持っています。今の画像生成AIの限界は、最終的な完成画像をいきなり出すところにありますが、絵として考えた場合に、人間は絵を完成させるまでに、下描きをしたり、着彩をしたりと、中間段階のことをやっていますよね。その作業そのものをAIでモデル化できないかということを目指しているわけです。
そしてイリヤさんは、さらに大胆な目標も掲げられています。
「Paints-Undoをスケッチガイド付き画像ジェネレーターと組み合わせて『Paints-Redo』を実現し、完成/未完成の作品を任意に前進/後退させ、人間の創造力を高めます」(イリヤさん)
Paints-Undoが「過去」の過程に戻すことができるのならば、それらを発展させ、絵を描いている最中に、「次に何をすればいいのか」ということをAIが補助して提案してくれるようになるということです。ある線を描いたときに、「次の線はここです」とガイドする。将棋で言えば「次の手はここです」ということをAIにサジェストさせるようなことをクリエイティブ向けにやりたいと言っているわけです。
イリヤさんが実際にPaints-Redoを作り上げるまでやるのかはわかりませんが、そういう事ができる可能性があることを具体的に示したということは、ブレイクスルーと言ってもいいでしょう。
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