重要なのはAIが「工程」を理解すること
イリヤさんがこの技術で狙っているのは、「人間の絵を描く動作」のモデル化です。
この研究の副題は「デジタル絵画における描画動作の基本モデル」で、「Paints-Undoをベースモデルとして人間の行動を分析」することが目的に掲げられています。
AIというのは基本的に「人間の行動をいかにモデル化して、コンピューターで再現可能にするか」ということを大きな目標として持っています。今の画像生成AIの限界は、最終的な完成画像をいきなり出すところにありますが、絵として考えた場合に、人間は絵を完成させるまでに、下描きをしたり、着彩をしたりと、中間段階のことをやっていますよね。その作業そのものをAIでモデル化できないかということを目指しているわけです。
そしてイリヤさんは、さらに大胆な目標も掲げられています。
「Paints-Undoをスケッチガイド付き画像ジェネレーターと組み合わせて『Paints-Redo』を実現し、完成/未完成の作品を任意に前進/後退させ、人間の創造力を高めます」(イリヤさん)
Paints-Undoが「過去」の過程に戻すことができるのならば、それらを発展させ、絵を描いている最中に、「次に何をすればいいのか」ということをAIが補助して提案してくれるようになるということです。ある線を描いたときに、「次の線はここです」とガイドする。将棋で言えば「次の手はここです」ということをAIにサジェストさせるようなことをクリエイティブ向けにやりたいと言っているわけです。
イリヤさんが実際にPaints-Redoを作り上げるまでやるのかはわかりませんが、そういう事ができる可能性があることを具体的に示したということは、ブレイクスルーと言ってもいいでしょう。
この連載の記事
-
第85回
AI
誰でもVTuber時代へ フェイシャルAI技術、続々登場 -
第84回
AI
画像生成AI「Stable Diffusion 3.5」性能はものたりないが、自由度が高いのは魅力 -
第83回
AI
リアルすぎてキモい 動画AIの進化が止まらない -
第82回
AI
もはや実写と間違えるレベル 動画生成AI「Runway」の進化がすごい -
第81回
AI
AIイラスト、こうしてゲームに使っています -
第80回
AI
ゲーム開発はAI活用が当たり前になりつつあるが、面白さを作り出すのは人間の仕事 -
第79回
AI
AIが考える“アイドル”がリアルすぎた グーグル「Imagen 3」なぜ高品質? -
第78回
AI
話題の画像生成AI「FLUX.1」 人気サービス「Midjourney」との違いは -
第77回
AI
画像生成AI「FLUX.1」が相当ヤバい LoRAで画風の再現も簡単に -
第76回
AI
「Stable Diffusion」の失敗に学び、画像生成AIの勢力図を塗り変える「FLUX.1」 -
第75回
AI
商業漫画にAIが使われるようになってきた - この連載の一覧へ