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あのクルマに乗りたい! 話題のクルマ試乗レポ 第437回

中国BYDのEVセダン「SEAL」を試乗! キツい坂も軽快に上るパワフルさと俊敏さが魅力

2024年06月29日 12時00分更新

文● 鈴木ケンイチ 編集●ASCII

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最大航続距離は640km!
EVのシェアを伸ばし続けるBYDからセダンが登場

 6月25日、BYDは新型セダン「SEAL(シール)」の日本国内での販売を開始しました。

BYD

BYD「SEAL」

 SEALはBYDが日本に導入するEVの第3弾となります。全長4800×全幅1875×全高1460mm。Dセグメント相当のミッドサイズセダンで、流麗なデザインを特徴とします。ちなみに、SEALとは「アザラシ」を意味しており、BYDの第2弾モデル「DOLPHIN(ドルフィン)」の「イルカ」に続いて、海洋生物を名前に持つクルマとなります。

 メカニズム的には、BYD独自のリン酸鉄を使うリチウムイオン電池「ブレードバッテリー」を床下に並べ、後輪用は効率の良い交流同期型モーターを、フロントは引きずり抵抗のない誘導型モーターを搭載します。1モーター仕様は後輪駆動、2モーター仕様は4WD。そのパワーは2WDで230kW(約313馬力)、4WDはリヤの230kW(約313馬力)にさらにフロント用160kW(約218馬力)を加えます。

 Dセグメントのセダンとしては、必要十分以上のスペックです。搭載するバッテリー容量は82.56kWhもあり、航続距離は2WDで640km、4WDでも575kmを実現するとか。

BYD

試乗会ではキツい上りを軽快に駆け上った!
この性能でこの価格は割安感あり

 発表に先駆けて6月中旬に開催されたメディア向け試乗会で、SEALのハンドルを握る機会がありました。きつい上りのワインディングを駆け上がるSEALのパワフルさと俊敏さには脱帽しました。2WDは後輪駆動ならではの運転の楽しさ、4WDは高速道路などの安定性を確認することができました。個人的には、パワステやアクセルオフ時の制御に違和感がありましたが、全体として非常に高い実力を備えている、スポーティーで高性能なセダンであることが感じられました。

BYD
BYD

 そんな「SEAL」を、BYDは528万円(2WD)/605万円(4WD)で売るというのです。82kWhものバッテリー容量を鑑みれば、その値付けには、ドイツ勢どころか日本車、さらにはヒョンデのBEVよりも割安感があります。さらに驚いたのは、BYDは導入記念キャンペーンにより1000台限定で、さらなるお買い得価格を用意したのです。その価格は、495万円(2WD)と572万円(4WD)。これはEV補助金を加味していない価格です。現在申告中のEV補助金が決定すれば、最大で85万円もの補助金が期待できます。

BYD

今年中に1000台売るのは難しくなさそう
その上を目指すなら強大なライバルたちが立ち塞がる

 また、BYDのキャンペーンでは注目すべきは1000台という台数です。これはEVであること、BYDであることを考えると、意外なまでに大きな数字となります。そもそもBYDは2023年に日本に上陸してから、これまでの1年半での販売台数は約2500台です。最初の挑戦でありながら立派な数字と言えるでしょう。2023年の販売は約1500台で、今年は半年で約1000台というペース。この調子ならSEALなしでも、年間2000台以上はかたいのではないでしょうか。

BYD
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 これにSEALのキャンペーン1000台分を今年後半で売り切ってしまうと、2024年のBYDの販売実績は年間3000台に達することが予想できます。ちなみに発表の6月25日の時点で、「発売開始になれば買う!」という顧客が全国に100名ほどいて「試乗して、良かったら買う」という人が300名ほどもいるとBYDは説明します。それを考えると、今年後半で1000台を売り切るのは、それほど難しくないのかもしれません。

BYD

 そして、年間3000台という販売数は、日本車的に言うと小さな数字です。ところが、輸入車としては決して小さな数字ではありません。2023年度のJAIA(日本輸入車組合)の発表した新車販売台数を見ると、年間3000台に達しない、年間1000~2000台を売るインポートブランドは、マセラティ、アバルト、アルファロメオ、フェラーリがあります。どれも歴史があり、知名度の高いブランドです。これらをBYDは抜き去っていくのです(価格帯は違いますが)。

BYD

 そして挑戦するのが、そのその上にあるのが4000~10000台というゾーン。ここには、シトロエン、フィアット、ルノー、プジョー、ポルシェ、ランドローバーがあります。ここの販売領域にBYDは肉薄することになるわけです。ちなみに、テスラの販売は年間5000台レベル。これもBYDのライバルとなります。

SEALが他のモデルを引っ張ってくれれば
日本でのシェア拡大も夢物語ではなくなる

 日本に上陸してわずか2年目であるBYD。これが、あっという間に歴史あるブランドに肩を並べるまでに成長したことは、驚くべきことでしょう。

 しかもBYDは、今後も「新型車を毎年1車種以上導入する」「2024年末にはディーラーネットワークを全国90に。2025年には100店体制を目指す」と宣言。まだまだ攻勢を続けるというのです。BYDオートジャパンの社長は「2024年後半は、BYDビジネス創業期の総仕上げとして、全国の販売会会社と共に、販売をフル加速。国内EV販売のトップランナーを目指す」とも。

BYD
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 2023年の国内のEV販売台数(乗用車)の総数は4万3991台で、全体の1.7%。ブランド別で、最も数多くのEVを販売したのは日産の1万7660台です。BYDがEV販売を5000台、1万台と増やしていけば“トップランナー”も夢ではなくなるはず。これからの成長に注目したいと思います。

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