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“プッチンプリン問題”で注目集める基幹システム移行、年次イベントでは企業事例や新たな支援策を紹介

「S/4HANA」発表から9年、マイグレーションという難題に取り組み続けるSAP

2024年06月25日 08時00分更新

文● 末岡洋子 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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S/4HANA Cloudへのマイグレーションを進める企業事例を披露

 S/4HANA Cloudへのマイグレーションを進める1社が、エレベーターメーカーのKONEだ。同社のエレベーターは、世界で1日に100万人以上が利用するという。KONEのCIOを務めるアシシュ・アグラワル氏は、都市への人口集中と高層化が進むなかで重視されるエレベーターの拡張性と効率性、地政学的な変異や予想外の障害などにも対応できるサプライチェーンの強靱化、IoTなど最新技術の活用、と大きく3つの理由から、10年にわたり利用してきたERPを刷新したという。

 「旧システムはカスタマイズした部分が多かったが、刷新をきっかけに簡素化を進めて『クリーンコア』に徹することにした」(アグラワル氏)。SAPが提唱するクリーンコアは、ERPのコア部分をクリーンに(カスタマイズせず)維持することで、常にアップデートを通じて最新技術を導入可能にするという考え方だ。アグラワル氏は、KONEにおけるマイグレーションプロジェクトの進め方を次のように説明した。

 「最初のステップとして、全事業ラインのトップをはじめとした経営層が新しいシステムへのマイグレーションにコミットした。次は、SAPとSIerが熱意のあるチームを作り、野心的な目標に対して団結を図った。そして、フィットトゥスタンダード(Fit to Standard)をできるだけ守ることでスピード感を出した」(KONE アグラワル氏)

 KONEのマイグレーションプロジェクトはまだスタートしたばかりで、バイロット導入の対象国でロールアウトを行う段階にあるという。今後、数年をかけて世界に拡大していく。

 アグラワル氏は「ECCが2027年にサポート終了を迎えるという事実に直面したことで、われわれには切迫感が生まれた。その結果、マイグレーションが具体化した」とSAPに感謝を述べたうえで、マイグレーション成功のポイントを「経営陣がしっかり関与すること」だとまとめた。

 さらに、チームが柔軟に作業を進められるようにサポートすること、クリーンコアはサービスやプロセスだけでなく、従業員、パートナー、SIerといった「人」の取り組みでもあることなどを、マイグレーションプロジェクトから学んだこととして来場者に共有した。

KONEのCIO、アシシュ・アグラワル(Ashish Agrawal)氏(左)と、SAP エグゼクティブボードメンバーでカスタマーサービス&デリバリー担当のトーマス・ザウアーエシッヒ(Thomas Saueressig)氏(右)

中堅中小向け「GROW with SAP」でも企業のマイグレーション事例を紹介

 SAPでは、大企業向けのRISE with SAPと並んで、パブリッククラウド版の「S/4HANA Cloud Public Edition(S/4HANA Cloud PE)」へのマイグレーションを支援する中堅中小企業向けの「GROW with SAP」も提供している。

 製糖、エネルギーなどの複合企業である南アフリカのRoyal Eswatini Sugar(RES)では、このGROW with SAPを利用してS/4HANA Cloud PEへのマイグレーションを進めている。同社でグループITマネージャーを務めるロブ・コムベ氏は、従業員6000人の同社がS/4HANA Cloud PEを選択した理由として「デジタル化の時代が我が社にとって何を意味するのかを考えた時、コスト効果と効率性、新しい製品と市場という2つの方向性を追求するためにはクラウドが最適だった」と振り返る。

 S/4HANA Cloud PEの稼働から1年、「ゆっくり、リスクフリーのアプローチで導入を進めているが、順調だ」とコムベ氏は語る。SAP運用コストの15%削減など、すでに成果も出ている。さらには思いもよらぬ効果もあったという。「これまでは人材獲得に苦労していたが、クラウドというモダンな環境になったことで、現在はエンジニアリングを学んだ学生が入社2日目からSAP製品で作業している」(コムベ氏)。

 マイグレーション成功のポイントとしては「まず始めること」だと強調した。また「自社の将来像を描いた結果、その実現のためにパブリッククラウドやクリーンコアなどの要素が重要だとわかった。順序が逆ならばうまくいかなかっただろう」と述べた。

中堅中小企業向けのS/4HANA Cloud PE移行支援「GROW with SAP」

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