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ERPのマイグレーションは「顧客企業とSAPの存続のために必要不可欠」、SAP Sapphireレポート

SAP CEOが語る「ビジネスAI戦略」と「マイグレーションの重要さ」

2024年06月28日 07時00分更新

文● 末岡洋子 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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 SAPは2024年6月、米国とスペインの2カ所で年次イベント「SAP Sapphire」を開催した。今年の主役は「AI」。1年前に打ち出した、生成AIアシスタント「Joule(ジュール)」を中心とする「ビジネスAI」戦略をさらに進化させる内容だった。

 SAPのAI戦略は他社とどのように違うのか、基幹システムのマイグレーションという課題をどうとらえているのか。スペインでSAP CEOのクリスチャン・クライン氏が出席した記者発表会の一問一答を見てみたい。

SAP CEOのクリスチャン・クライン(Christian Klein)氏

――今年のSapphireで注目すべきポイントは何だったか?

クライン氏:ポイントは大きく3つある。

 1つ目は「AI」だ。あらゆるテクノロジー企業がAIの話をしているが、今年のSapphireではSAPのAIに対するアプローチを顧客に示すことができた。発表の中心はコパイロットのJouleだ。これを利用することで、データをシステムにフィードしたり、引き出したりする必要がなくなる。会計を早く締めることができ、経営陣は財務予測を得られる。Jouleはすべてのエンドユーザーに新しい体験をもたらすだろう。

 SAPのユーザーは世界に3億人おり、この規模のリーチとスケールを考慮すると、SAPが生成AIに取り組むことは世界に大きなメリットをもたらすとみている。

 2つ目は「NVIDIAとの提携強化」だ。NVIDIAとは2年前から関係を強化し、SAPソフトウェアのコーディングや実装方法をどのように変革していくのかを話し合ってきた。今回は、その成果を具体的な製品として発表できた(「Joule with SAP Consulting」「Joule with ABAP Developer」)。SAPコンサルタントやSAP上のソフトウェア開発者は、世界で600万人もいる。ビジネスプロセスの再設計や、ERPを拡張するための機能開発など、彼らの業務を生成AIの力で効率化できる。

 3つ目が、Microsoftとの提携による「Microsoft CopilotとJouleとの統合」。両社共通の顧客企業は多く、2つのコパイロットが相互運用できることは、顧客にとって大きなメリットになる。SAPは(AI戦略において)オープンなエコシステムを重視している。

 以上の3つは米国で開催したSapphireからのニュースだ。バルセロナ(スペイン)ではさらに、Mistral AIとの提携を通じて「SAP GenAI Hub」で同社のLLMを利用できるようになることも発表した。GenAI Hubでは、OpenAIのGPT、Google Geminiなどさまざまなモデルをサポートしている。

――SAPでは「ビジネスAI」を打ち出しているが、そもそもビジネスAIとは何か? AI分野におけるSAPの優位性は?

クライン氏:ビジネスAIは、SAPが提供するAIの差別化ポイントとなる。ほかに「組み込み型AI」「AIの責任と信頼」も、SAPの優位性と考えている。

 SAPでは世界100カ国以上に40万を超える顧客を抱えており、世界の商取引の60%が、何らかのかたちでSAPを経由して行われている。そのため、われわれには顧客企業が利用に合意した、匿名化されたデータがある。BtoBの世界において、これほどの規模のビジネスデータを持つITベンダーはSAPしかいない。また、BtoC分野のAI企業のようにインターネットから収集した情報ではなく、現実のビジネスデータだ。ゆえに、ビジネスの文脈でAIを使うことができる。

 また、われわれは他のベンダーのようにAIユースケースをわざわざ構築して、手作業でビジネスに統合する必要もない。ビジネスプロセスにAIを組み込むコトができ、顧客はAIのもたらすメリットをすぐに享受できる。

 欧州で「AI法」が成立したが、われわれは欧州の企業であり、欧州の法に準拠する。ドイツ、フランス、スペインなどでソブリンクラウドを構築している。SAPのAIは“ブラックボックス”ではなく、顧客は透明性を得られる。

 SAPは欧州企業として最初にAI倫理を公開しており、2021年にUNESCO(国際連合教育科学文化機関)で採択された「人工知能の倫理に関する勧告」を採用することも発表している。AI技術が人権を尊重し、公正さを促進し、持続可能な開発につながる方法で開発・使用されることを目的としたもので、SAPもこの考えに同意する。

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