このページの本文へ

Salesforce全国活用大会「SFUG CUP 2024」の優勝事例レポート

全会議で資料を廃止しSalesforce CRMに統一、三菱地所リアルの定着化施策の数々

2024年06月24日 08時00分更新

文● 福澤陽介/TECH.ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

運用・プロセス面の施策:すべての会議で会議資料を廃止、情報はセールスフォース製品に統一

 まずは運用・プロセス面での、営業にCRM入力を腹落ちさせるための施策だ。展開したのは“アメとムチ”を交えた4つの施策である。

 ひとつ目が、会議資料をデジタル化したことだ。

 まずは、無駄な会議資料を作ることを廃止した。これにより、営業はSales CloudとExcelの帳簿に、二重で入力せずにすむようになった。

 また、経営会議から幹部会、部会、課会と分かれるすべての会議で、参照する情報をSales CloudとTableauに限定した。これにより、営業が商談や活動の内容をSales Cloudに入力するだけで、各会議に必要な情報が揃う。「おのずと、Salesforceにデータが入っていないと会議ができない仕組みになった」と打田氏。

会議資料のデジタル化

 2つ目は、社長による“圧倒的な”コミットだ。「CRM・SFAは営業プロセスの背骨」「予算未達なのだからやり方を変えるしかない」「入手した情報を入れるのは当たり前でそんなレベルの低い話はしていない」。これらは、実際に社長から発信されたメッセージだ。トップ自ら、積極的に「変革」を呼び掛けたわけだ。

 3つ目は、未入力者の可視化や月次配信だ。入力率を上げるために、入力状況を全社にフルオープンで公開。更には、月次でこの情報を配信した。

未入力者の可視化

 4つ目は「CRM憲章」の作成と人事考課への反映だ。CRMの目的、事業間の協業や情報共有におけるルールを会社として制定し、取得した情報は速やかに入力することなどを義務付けた。さらに、人事考課においてもCRMの利用を反映し、昇格の条件となっている行動評価の項目に「CRMの利活用」を設けて、相対評価を実施している。

CRM憲章・登録ルールの作成

体制・人材面の施策:操作説明会は全社員参加必須、そこに行けば悩みが解決する特設サイトも

 次は、体制・人材面の課題である、ITリテラシーを向上させるための施策だ。打田氏は「不動産会社なので、システムの操作が苦手な社員が多い。CRMへのログインや入力ができない社員も当たり前にいた」と振り返る。

 まずは基本として、1時間半の操作説明会を、毎年必ず2回以上実施している。東京本社だけではなく、北海道から九州まですべての支店にも訪問して、すべての社員に参加してもらった。さらには、CRMの情報を集めた特設サイトを作り、「そこに行けば悩みが解決する」場所を用意した。誰でも分かりやすいようマニュアル動画も掲載した。

 「デジタルリーダー」制度も設けた。打田氏が所属するCRM推進チームは、合計6名の小編成チームで約700名の社内ユーザーからの問い合わせや個別開発プロジェクトを捌いていた。

 人手不足を解消するため、各部門で「デジタルリーダー」を任命し、営業が困ったときの相談役やレポート・ダッシュボード・ビューの作成などを担ってもらった。リーダーには、セールスフォース製品がアップデートするたびにトレーニングを受講してもらい、「なるべく現場に近いところ」にスペシャリストを育成。資格取得の補助制度も設けた。

デジタルリーダー制度

 問い合わせ対応については、Salesforceの「ケース」に集約。それをナレッジとして蓄積して、対応の標準化を進めた。2022年は1件の問い合わせに約22時間かかっていたが、現在は約2時間まで処理時間を削減している。

カテゴリートップへ

ピックアップ