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利用者の6割がミレニアル・Z世代。金融業界の常識を覆す資産運用アプリ「Bloomo」

連載
このスタートアップに聞きたい

 ブルーモ証券株式会社は、5月21日に個人投資家向けに米国株資産運用アプリ「Bloomo」を正式リリースした。海外株式投資は高い利回りが魅力的だが、日本企業に比べて情報が少なく銘柄選びが難しい。Bloomoは、専門家やほかのユーザーのポートフォリオを参考にしながら投資の初心者でも自分で資産運用ができるサービスだ。ブルーモ証券株式会社CEOの中村 仁氏にサービスの特徴や今後の事業展開について伺った。

初心者でも気軽に真似ができる優れたUI

 Bloomoの特徴は、①目標ポートフォリオ機能、②ポートフォリオ共有機能、③リバランス機能の3つ。目標ポートフォリオ機能は、最初に理想のポートフォリオを設定して入金しておくと、アプリが自動で投資管理をしてくれる仕組み。銘柄選びや買い付けの手間がかからず、複数銘柄による分散投資が簡単にできる。ポートフォリオを作るには金融リテラシーが必要だが、②のポートフォリオ共有を使うと専門家やほかのユーザーのポートフォリオを見て参考にしたり、ポートフォリオをコピーして真似することが可能だ。

ポートフォリオを作成するとブルーモが自動買付してくれる

著名な投資家やほかのユーザーのポートフォリオをコピーできる「ポートフォリオ共有」

 中村氏はポートフォリオ共有機能を搭載した理由として、「投資の初心者は身近な人に相談して、そのとおりに投資をする傾向が多い。ただし、相談時と実際に買い付けをするタイミングにはズレがあり、状況が変わっていることもあります。また、何を買えばいいのか忘れてしまったり、教わった単語で検索すると似た商品が数十件出てわからなくなる、という意見もありました」と話す。

 ポートフォリオ共有は、専門家や信頼できるユーザーのポートフォリオをそのまますぐにコピーして投資実行できる。アプリで導入できるUIのため、初心者でもわかりやすく先達の真似から進められる。

 リバランスは、相場変動で比率が変わった資産を売買してポートフォリオを再調整する機能。プロの投資家にとってリバランスは必須だが、個人投資家が各銘柄の値動きを記録し、変動比率を計算してこまめに売買して自力で調整するのは難しい。リバランス機能はワンタップで実行でき、理想のポートフォリオを簡単に維持できる。

お任せ投資でもデイトレードでもない「自分で考える資産運用」

 投資初心者をターゲットにしたサービスとしては、お任せ投資のロボアドバイザーや短期売買向きのスマホ証券に対して、Bloomoは「自分で考える資産運用」という位置づけだ。

 中村氏は、「米国は短期売買のスマホ証券が流行ったが、日本ではあまり盛り上がらず、ロボアドバイザーのほうが大きくなっている。これは日本ならではの特殊性」だと話す。

 とはいえ、国内の証券の新規口座開設数が年々増加しており、特に若年層では、完全なお任せ投資でもリスクの高い投機でもなく、自分で勉強してしっかりと資産形成をしたい、という投資への関心は高まっている。Bloomoのような「自分で考える資産運用」が個人投資家のマスマーケットになっていくだろう、と中村氏は予測する。

 専門家や信頼できる友人のポートフォリオを真似しつつも、資産配分は自分で決めて、それ以外のオペレーションはアプリで自動化するのがBloomoのコンセプトだ。

 手数料は、残高手数料が年率0.55%、為替手数料0.25%、取引手数料は無料で、一般的なロボアドバイザーより水準として安く設定されている。

 最低投資金額は10万円で100円からのワンコイン投資などに比べると敷居が高そうだが、2月にローンチした招待制アプリのユーザー数百人のうち、約6割が30代以下のミレニアム世代・Z世代だったそう。中村氏によれば、日本の個人投資家全体では40歳未満は15%、ロボアドバイザーによるサービスを提供している上場スタートアップであるウェルスナビは30%であり、30代以下が6割というのは資産運用サービスとしては驚愕の数字だという。

 Bloomoには、自分の作成したポートフォリオをSNSに投稿する機能があり、友人間で自分の資産運用を見せ合うことで、Z世代を中心とした認知拡大を期待しているそうだ。

日本人の金融リテラシーを育てるには新しい金融システムが必要

ブルーモ証券株式会社CEOの中村 仁氏

 中村氏は、社会人になる前にバブル崩壊とリーマンショックを経験し、日本の経済・金融システムのあり方に疑問を持つようになったという。

 「その問題意識を胸に財務省やコンサル会社で金融に関わり、円安やインフレ進行のリスクを強く感じるようになりました。これからの個人はグローバルで資産運用をする金融リテラシーが必須です。しかし、これまでの日本の投資活動は国内に閉じており、海外投資のための金融リテラシーが足りていません」

 こうした課題意識から自分たちで新しい金融インフラを作るために2022年6月にブルーモ証券株式会社を創業。23年6月に第1種金融商品取引業の登録を受けて、2024年2月に招待制のアプリ「Bloomo」をリリース。3カ月間の運用を経て、今回の一般公開となった。

 これまでBloomoのようなサービスが生まれなかった理由として、中村氏は「日本は、金融プロダクトを立ち上げるのが難しい。米国であれば類似のプロダクトが次々と出てくるが、日本では証券会社を立ち上げるための条件が厳しく、なかなか新しいプロダクトが生まれづらい。既存の証券会社が子会社などで新サービスを立ち上げる方法もあるが、既存顧客からはペインが上がってこないため、本気で取り組みにくい」と説明する。

 投資対象を米国株式にしたのは、今後もインフレや円安傾向が続くというマクロトレンドを意識したものだ。

「コロナ前後から投資を始めた個人投資家からの強いユーザーニーズがあったのが理由のひとつ。それは一過性ではなく、マクロトレンドで支えられれていることが大きかった。投資には、暗号資産や不動産投資など流行はありますが、マクロトレンドでは、グローバル市場のほうが平均的なリターンは高くなることから、事業としては米国株式を選択しました」(中村氏)

 今後の展開として、2024年6~7月頃に配当金の再投資機能、7~8月頃にユーザーの銀行口座から定期的に入金・買付を実行する積立入金機能をリリース。10~11月にはNISA口座へ対応する予定だ。

 Bloomoは、アプリをダウンロードして、本人情報を登録するだけで口座開設ができる。外国株式や新NISAに興味はあるけれど何を買えばいいのかがわからない、ネット証券を始めたけれどうまく運用できているか自身がない、というような日本人にとっての新たな「自分で考える資産運用」の入口となるか、今後の動きに注目したい。

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