対処療法的な緩和策
今回検証に使用したのはASUS製Z790マザーボード「ROG MAXIMUS Z790 HERO」である。このモデルには4月19日付けでIntel Baseline Profileへの対応を謳ったBIOS 2202が配布されている。本稿で解説している設定値の変化や、この後の検証はすべてROG MAXIMUS Z790 HEROでの結果であり、ASUS以外のメーカーで同じ振る舞いをする確証はない。現時点でのIntel Baseline Profileとは、「各マザーボードメーカーが考えた、インテル製CPUをより安全に使うためのノウハウを集めたもの」なのだ。
Intel Baseline Profileの適用は当該メニューを選び、設定を保存(F10キー)するだけという簡単なものだ。ただ、BIOS 2202の時点ではBIOSの工場出荷設定(Optimized Default)はASUS Multicore EnhancementがAuto、つまりMTP無制限設定である。BIOS 2202の段階ではIntel Baseline Profileはオプション扱いであり、ユーザーの操作が必要だ。
このIntel Baseline Profileを選択すると“動作要件を満たす最少の設定にするが、性能は最適化されていない”という趣旨のメッセージが出る。ここでYesをクリックすれば必要な設定が自動的に適用される
BIOS 2202におけるIntel Baseline Profileは、本問題に対するASUSの“現時点での緩和策”と言うべきものだ。BIOS設定保存時に変更点が提示される設定とされない設定があるが、以下の設定がポイントになる。
・ASUS MultiCore Enhancement:Auto - Lets BIOS Optimize→Disabled - Enforce All limits
・SVID Behavior:Auto→Intel's Fail Safe
・IA CEP:Auto→Enabled
・SA CEP:Auto→Enabled
・IA TDC Current Limit:Auto→Intel's Default
・CPU Core/ Cache Current Limit:511.75A→280A
・Long Duration Package Power Limit:253W→253W
・Short Duration Package Power Limit:4095W→253W
動作クロックやコア電圧はそのままに、パワー制御に関わる設定や保護機能を有効にしたのがASUSのIntel Baseline Profileといえる。CPUのIccMAX(CPU Core/ Cache Current Limit)、PL2(Short Duration Package Power Limit)はASUS Multicore Enhancementの設定変更に伴い調整される(だから保存時に差分が表示されない)項目だ。
PL1(Long Duration Package Power Limit)は253Wで変わらずだが、これはBIOS 2202のデフォルト値が変化したことによるものだ。BIOS 2202未満のデフォルト設定では、Core i9-14900KのPL1は4095Wに設定されていたが、BIOS 2202では253Wに絞られている。長期間高電圧・高クロックにさらされることがトラブルの原因という暫定発表通りなら、この施策は妥当といえる。
このPL1のデフォルト値がASUS Multicore EnhancementがAutoでも253Wになる設定は、Core i7-14700Kにも適用されるが、Core i5-14600KやCore i9-14900では適用されない(4095W設定)。とりあえず不具合報告の出ている(出そうな)CPUに対して取り急ぎPL1を絞ることで対応した、という印象を受けた。
電力周りの設定を比較。中央がBIOS 2202のデフォルト(無制限設定)、右がIntel Baseline Profile適用後のもの。Tauの値も96秒から56秒に短縮され、ブーストがより早い段階で終わるようになっている

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