電気自動車でドリフトができる圧倒的パワー
「見せてもらおうか。IONIQ 5Nの実力とやらを」ということで、まずは濡れた路面でドリフト体験からスタート。被験者はドリフト競技の国内最高峰「D1グランプリ」でシバタイヤレーシングのレースクイーンを勤める唯さん。
唯さんは以前、D1選手の田中省己さんの横に座り、D1マシンのドリフト体験をしたことがあるのだそう。国内トップのドリフトを体験した彼女は、IONIQ 5Nのドリフトをどのように感じられるのでしょうか?
ご自身でドリフトできる機会でもあったのですが、「助手席で」ということで体験。一通り体験した直後に感想を伺うと「すごかった!」と放心状態。ドライバーによるとアクセル開度は半分程度でドリフトするそうで、モータートルクの太さに驚かざるを得ません。
落ち着いた唯さんは「D1マシンと違って音がしないんですよね。それがまず大きな違いです。あと一気に加速する感覚もすごかった」のだそう。
続いてサーキット走行に挑戦、の予定でしたが唯さんはひと休み。同行の担当編集Sが「1万1000回転まで、キッチリ回してくる」と、意味のわからぬ事を言ってマシンに乗り込みタイムアタック。
サーキット走行の様子は撮影申請が必要だったためイメージ映像ということでお許しいただきたく存じます。IONIQ 5Nでサーキットアタックした担当編集Sも「すごかった!」と放心状態。「コーナーでアクセルを離した瞬間、すごい勢いで回生がかかってタックインするんですよ。ホントにワンペダルで行けますね。そしてアクセルを踏んだ瞬間、怒涛の加速。モーター駆動はすごい」とホクホク笑顔。
サーキットパフォーマンスは何となくわかりました。唯さんが復活したところで、一般道を走ってみましょう。
まずはノーマルモードで。静かな室内に、少し硬さは残しながらも快適な乗り味。なるほど日本向けにチューンしているなという印象です。「視界が広くていいですね。視点位置が高いから、車幅が広くても気になりづらいですね」と唯さん。ハンドリングの良さは特筆すべきところがあり、オンザレールのひとこと。
ワインディングでスポーツモードに挑戦。ステアリングや足は硬く引き締まるとともに、エンジン車のような音が車内に響き、パドルシフトを使う度に、ガクンとシフトショックが全身を襲います。「なにこれ! 面白い!」と唯さんは大笑い。さらに音が出てきて、これにも思わず笑みが。
ポルシェのタイカンやアバルトの500eなど、疑似的に走行音を出すBEVは過去にありましたが、音はそれらとは異なり、よりエンジンサウンドに近い印象。そして疑似的シフトショックも初めてです。ガクンガクンという感触は、「イマドキDCTのクルマでも、こんなものはないぞ」と思いつつも、無駄にガクガクしたくなる面白さです。これはクルマ好きなら絶対にハマるハズ!
一方で機能が多すぎて、何が何やら……。これはBMWのMシリーズやメルセデスのAMGも同じですが、1日で理解し、好みのセッティングを見出すのは不可能です。長く付き合ってなじむ設定を見つけ出すという楽しみを与えていると理解しました。それゆえステアリングホイールにショートカットボタンとかが用意されているというわけです。
試乗を終え、JooN Parkさんに「IONIQ 5やKONAといったハイテク満載で、知性が先行するクルマを作っているヒョンデが、IONIQ 5Nのような運転の楽しさを訴求するクルマを作るとは思わなかった」と伝えると、満面の笑みで「Nブランドが誕生するまで、ヒョンデには知性先行のイメージがありました。ですが、そこに感性を与えて、より一段高いクルマを作るのがNの役割なのです」と答えてくださいました。なるほど。
速いクルマを作るのも技術ですが、さらなるエクスペリエンスを与えるのが自動車メーカーの使命だと改めて感じた次第。ヒョンデは情熱をもってクルマ好きに刺さる1台を作り上げてきました。それをうれしく思うとともに「日本メーカー、うかうかしていられないぞ」と、黒船の第2波に恐れを抱いたのでした。
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