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LINE WORKS上にWebアプリを作れるWOFFをフル活用

LINE WORKSとkintoneの連携で業務改善 とある産廃業者の挑戦がすごかった

2024年04月19日 09時00分更新

文● 大谷イビサ 編集●ASCII

提供: LINE WORKS

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 まだまだアナログな産業廃棄処理の業界で、DXで社内の業務改善を成功させている中小企業がある。LINE WORKSとkintoneを連携させた関西クリアセンターだ。LINE WORKS導入までの経緯、顧客管理、配車システム、コンテナ管理などさまざまな用途で活躍しているLINE WORKSとkintoneの連携事例を聞いた。

関西クリアセンター 総務部 情報システム課課長 向井武士氏、常務取締役 環境事業部部長 伊山正義氏、専務取締役 伊山雄太氏、運搬部 管理運行課課長 山科幸平氏

両極化が進む産廃業界 まだまだ残るアナログな業務フロー

 関西クリアセンターは1970年に設立された産業廃棄物中間処理業者。業務は工場での廃棄物の処理から 、収集運搬、リサイクルまでを手がける。顧客は産業廃棄物を排出する企業だが、最近は自治体の案件も増えているとのこと。国内屈指の処理能力を持つ堺本社工場に加え、2020年7月から泉州プラントが稼働を始めており、両処理施設には、ドライバーが多くの産業廃棄物を持ち込んでいる。

2020年7月から稼働している泉州プラント

 産廃業界は、いわゆる「3ちゃん経営」と言われる家族経営の小規模事業者と全国規模で事業を展開している大手の二極化が激しい業界だ。跡継ぎや人材不足などの課題を抱えているが、関西クリアセンターは泉州プラントができた3年前に比べて、人数は倍増しているという。「コロナのときに(エッセンシャルワークである)廃棄物処理がいい仕事と言われたタイミングがあったのです。そんなときにたまたま新規募集をかけたら、採用できた感じです。ただ、紹介も多いですね」(専務取締役 伊山雄太氏)

 少数精鋭で事業を拡大してきた関西クリアセンターはITもかなり以前から活用してきたが、業界全体はまだまだアナログな世界だ。たとえば産業廃棄物の処理が適切に行なわれたかどうかを確認するために廃棄事業者から発行される「産業廃棄物管理票(マニフェスト)」は電子もあるが、紙を利用することも多い。

 関西クリアセンターは電子マニフェストや電子契約にも対応しているが、顧客や取引先の対応には時間がかかっているという。「紙の場合は5年間保存しなければならないので、本当は電子で全部やりたいのですけど、お客さまから発行するものなので、なかなか進まないですね」と伊山雄太氏は語る。LINE WORKSも協力業者に導入を勧めているが、なかなか使ってもらえないのが現状だという。

業務データベースのkintoneに続き LINE WORKS導入へ

 こうした関西クリアセンターの基盤となるシステムの一つがサイボウズのkintoneになる。クラウド型のデータベースをアプリとして利用できるkintoneでは、顧客情報、契約や案件管理を行なっており、営業も外から確認できるようにしている。「昔は各人が勝手にお客さまの氏名や住所を登録していたので、全角と半角が混ざっているとか、英語とカタカナで同一人物なのにデータの重複がいっぱいあるとか、そういう状態でした。kintoneをカスタマイズし、フォームに入力された時に書式が統一されるようにすることで正しいデータが登録されたデータベースにしました」と語るのは、同社のITを手がけている総務経理部 情報システム課の向井武士氏だ。

 2019年に導入したのがビジネスチャットのLINE WORKSになる。以前はサイボウズOfficeを管理職のみが利用していたが、LINE WORKSの導入を機に全社員に利用範囲を展開することにした。「泉州プラントを立ち上げる準備をしていたとき、社内の情報が特定の人に閉じていることに気がつきました。今後従業員がもっと増えていくのにコミュニケーションツールが必要と感じていたので、kintoneだけだとちょっと厳しいと思い、LINE WORKSを導入しました。LINEと似た使い勝手なら、みんな使えるよね?と」(伊山雄太氏)。当初はサイボウズ Officeと並行する利用だったが、スタンダードプランを利用すれば問題ないことがわかり、LINE WORKSに全面移行した。

 1ヶ月の試験導入を経て、2019年4月にスタンダードプランを契約して本導入。サイボウズ Officeと1ヶ月のみ併用し、当時20名だった従業員全員に展開した。「まずは全員スマホにインストールして、トークから使い始めました」(常務取締役 伊山正義氏)とのことだ。現在は、アドバンスプランを契約しており、社外とやりとりするためのメールもLINE WORKSを使っている。

 掲示板の利用もあわせてスタート。「当初は朝礼で発表した内容などを掲示板に載せましたが、既読が全然付かなかったので、意図的に賞与の話を入れたのです。そうしたら、めちゃくちゃ既読付くようになりました(笑)」(伊山雄太氏)。利用を浸透するために、有休申請や健康診断のアンケートも、会議室の予約もLINE WORKSから行なうようにし、社員として使わざるを得ない状態を作ったという。

掲示板に賞与の案内を告知することで、自然と全社員が閲覧する場所になった

LINE WORKSのアドレス帳を自動で更新させるためにSansanとkintoneを連携

 続いて進めたのが、LINE WORKSとkintoneの連携だ。LINE WORKSとkintoneはそれぞれAPIを搭載しており、相互に連携できる。関西クリアセンターの場合、メールをLINE WORKSで送受信している都合上、アドレス帳には最新のメールアドレスが欲しかった。そこでkintoneにある顧客データベースをLINE WORKSのアドレス帳と同期できないかを考えたという。そこで、API経由でkintoneのデータをLINE WORKSのアドレス帳に持っていくようにし、データの入力と管理はkintone、確認や利用はLINE WORKSという棲み分けになったという。

 この顧客管理システムは、営業担当者が使っていた名刺管理サービスのSansanとも連携することにした。Sansanで読み取った名刺情報をAPI経由でkintoneに登録し、それをLINE WORKSのアドレス帳にも反映するという流れだ。同じ名刺データを複数社員が所持しているケースではkintone内で最新のデータを優先するので、営業担当者は普段通りSansanで名刺をスキャンするだけで、社内の顧客データベースが自動的に最新になる。

 「リテラシーが高くない社員でも全員使えるようになったのがLINE WORKSでした。LINE WORKS以外のシステムを覚えさせるよりLINE WORKSで完結させたかったのです」(向井氏)

配車依頼はLINE WORKS上で動くWOFFのミニアプリから

 産廃処理業者特有の利用方法としてはトラックの配車が挙げられる。関西クリアセンターは20台くらいの自社トラックがあり、営業担当は顧客の希望、作業場では担当者が荷物にあわせて配車をかけ、配車担当者が予定を組み、配車表を作成してドライバーに伝えている。

 昨年は産業廃棄物業者向けの配車業務をAIで自動化する「配車頭」(ファンファーレ)というサービスを導入し、配車担当の負荷を削減した。具体的には、LINE WORKS上にWebアプリを展開できるWOFF(WORKS Front-end Framework)という仕組みを用い、配車を希望する者はLINE WORKSのトークからkintoneと連携したWOFFアプリを呼び出し、配車依頼を登録。依頼内容はkintoneでリスト化され、配車担当者が配車頭に登録すると配車表が作成される。

 作成された配車表はLINE WORKSのグループカレンダーにインポートするようにしている。「配車頭の配車表を見ることをドライバーたちが嫌がったのですよね。今までと見え方が全然違って。そこで普段使い慣れているLINE WORKSのカレンダーにインポートするようにしました」と運搬部の山科 幸平氏は語る。

 これにより、ドライバーはLINE WORKSで自分の予定だけ見れば配車スケジュールを確認することができ、プッシュ通知でも気づけるようになった。配車担当の属人性も排除され、業務の負担も減ったという。「配車によっては『きつい現場ばっかり』という不満も出るのです。でも、一生懸命配車して、文句言われたら、配車担当者がかわいそうじゃないですか。その点で、属人性を減らすのは重要です」(向井氏)。

産廃コンテナの所在地を管理 社員だから実現する業務改善

 kintoneと連携するLINE WORKSのWOFFアプリでは、有休申請などのワークフローも可能になっている。申請内容はkintoneに反映され、管理職はkintone上で申請を承認する。申請結果はBotを通じて、申請者のLINE WORKSに通知され、管理職と労務担当者のスケジュールにも自動登録されている。燃費を知る目的で社用車の給油情報を管理するアプリも作った。

WOFFアプリから登録された申請はkintoneにリスト化され、管理職が承認をしていく

 最近開発したのは、産廃コンテナの位置管理を行なうWOFFアプリ。産廃コンテナは産業廃棄物の保管に用いられるが、収集や運搬にも使えるため、多くの現場に設置されている。関西クリアセンターでもすでに60個近く保有しているが、従来はどんな種類の産廃コンテナがどこに設置されているのかを正確に把握するのは難しかった。「GPS端末を付けることも検討したのですが、やはり費用対効果は悪い。どうすればいいか向井さんと相談したら、LINE WORKSとkintoneを利用したらいいのではないかと」(山科氏)。

 これに対して、向井氏は産廃コンテナにQRコードを貼り付け、ドライバーがWOFFアプリで読み込める仕組みを構築した。スマホのGPSで取得した産廃コンテナの位置情報はkintoneに登録され、所在地を管理できるようになっている。「次はコンテナの残量まで管理したいのです。そうしたらお客さまの発注が来る前に、こちらで配車手配できるので。こうなったら、もはやおもてなしですね」(山科 氏)。

WOFFアプリから産廃コンテナの位置情報を入力すると、kintoneにデータが登録されていく

 kintoneとLINE WORKSを運営しつつ、連携アプリまで開発する向井氏は、「アイデアが降りてきたら早いですね。納期がある普通のシステム屋さんと異なり、あくまで内製なので融通効きますね」と語る。現場もシステムもわかる社員のクリエイティビティが、実を伴う業務改善につながっている。

 なお、4月23日(火)に大阪で開催されるLINE WORKSユーザー会「LWUG(えるわぐ)」に、本記事で紹介された向井氏が登壇。kintone連携についても触れるため気になる人はぜひ参加してみよう(Connpass:https://lwug.connpass.com/event/313965/)。

 LINE WORKSのWOFFアプリやAPI連携について、興味がある場合は「LINE WORKSそうだん窓口」(03-4316-2996)や「お問い合わせフォーム」に相談してみよう。

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