赤松健議員、追加学習などについて国会質問
この文化庁の考え方と連動する動きが、同じく3月19日、参議院文部科学委員会での、自民党の赤松健参議院議員による国会質問です。「考え方」の内容を、国会という場で、国の公式見解としてあらためて確認しておくことで、今後の運用なり、法改正なりをする場合の基準を作っておこうというものですね。
答弁の内容としては、文化庁と事前にかなり詰めていたと考えられるもので、考え方から新しい要素が出ることはありませんでした。ただ、圧巻だったのは、赤松氏の代表作の漫画作品『ラブひな』を例に使うことで、わかりやすい質問になったということです。漫画家出身議員ならではの質問だったと言えます。
赤松氏「『ラブひな』という漫画のキャラクターの絵だけを複数枚追加学習させて、意図的に表現上の本質的な部分を共通した絵を出力させることを目的として学習させる場合は、享受目的があるとされるのか」
文化庁(合田哲雄次長)「追加学習の程度等にもよりますが、享受目的が併存しうる場合が当たりうる」
赤松氏「『ラブひな』に出てくるキャラクターを学習した画像生成AIを使ったところ、『ラブひな』に出てくるキャラクターの絵と表現のコアな部分が共通した絵が生成できる、こうした事情がある場合に享受目的があると推認する事情になりうるか」
文化庁「学習で用いた著作物と創作的表現が共通する表現が著しく頻発するといった事情は、開発学習段階での当該著作物について享受目的の存在を推認しうる一要素になりうる」
この部分では、『ラブひな』を例に、開発・学習段階での特定キャラクターでのいわゆる「狙い撃ちLoRA」のような学習をした場合、享受目的が成立するため、著作権法の情報処理の場合の例外規定の対象とならない可能性があることが示されています。
赤松氏「依拠性について、生成AIにi2i(Image-to-Image)や、キャラクター名を入れた場合には」
文化庁「当該既存著作物について依拠性が認められうると考えられる」
生成段階での著作権侵害には、類似性と依拠性のどちらもが満たされている必要がありますが、依拠性については認めうる条件になりうるとの答弁でした。
また、赤松氏は持論としている学習元のデータ開示や権利者への対価還元の必要性についても問いました。文化庁からは「対価還元は著作権法の枠内を超える」と具体的な返答はなかったものの、政府見解として現在の限界についての確認をしています。
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