富士通とアマゾン ウェブ サービス ジャパン(AWS)は、レガシーシステムのモダナイゼーションの加速に向けた戦略的協業として、「Modernization Acceleration Joint Initiative(モダナイゼーション・アクセラレーション・ジョイント・イニシアティブ)」を発表。 2024年4月1日から開始する。
メインフレームのモダナイゼーションを実現するAWS Blu Ageの実績重視
富士通は、2030年に同社製メインフレーム「GSシリーズ」の販売を終了することを発表しているほか、2029年にはUNIXサーバーの販売を終了することを明らかにしている。今回の協業により、2029年度までに国内30社、海外10社のメインフレームのモダナイゼーションを推進する計画であり、富士通製メインフレームだけでなく、他社製メインフレームを利用している企業にも同サービスを提供するという。
富士通 執行役員SEVP グローバルテクノロジービジネスグループ長の島津めぐみ氏は、「富士通がモダナイゼーションでAWSを選択する理由は、グローバルスタンダードであること、メインフレームのモダナイゼーションで20年以上の実績を持つAWS Blu Ageを有していること、10年以上に渡る戦略パートナーとしての実績があることが理由である。富士通がさまざまな業種で培ったシステムイングレーション技術と、AWSのクラウドテクノロジーを、ビジネスに活用できるプロフェッショナルサービスとして融合し、顧客にサービスを提供する。富士通とAWSのノウハウやサービスを結集することで、従来のモダナイゼーション手法に比べて、期間の短縮やコスト削減が可能になる」と述べた。
一方、Amazon Web Services Inc. グローバルサービス担当バイスプレジデントのUwem Ukpong(ウウェム・ウクポン)氏は、「日本および海外において、富士通という最強のパートナーとともにメインフレームのモダナイゼーションを行うことになる。AWSは最も信頼性が高く、安全なクラウドを世界中に提供している。すでに、銀行、医療、保険といった業種においてもメインフレームモダナイゼーションの実績があり、こうした知見も生かすことができる。一方、富士通は、メインフレームのリーダーであり、日本においてナンバーワンのクラウド提供者でもある。AWS ジャパンの認定受賞数は最多であり、認定者数も最大規模である」と述べた。
COBOLからJavaへのリライト前提で、安心安全な基幹システムのクラウド運用まで
今回の協業は、2022年2月に富士通がメインフレームの販売停止を発表して以降、AWS側から提案があり、富士通は1年以上をかけて検討を進めてきたという。「AWS Blu Ageの機能を検証し、モダナイゼーションにおける協業の姿を追求してきた」(島津執行役員)という。
現在、富士通製メインフレームは約700台、UNIXサーバーは9400台が稼働しているという。2029年度の国内外40社の目標については、「メインフレームモダナイゼーションにおいては、COBOLからJavaに変えるリライトではなく、構築しなおすリビルドを選択する顧客もいる。今回の協業の対象は、リライトであり、リライト後にリビルドにステップを進める顧客もある。リライトを選定する顧客のボリュームから目標を立てた」(島津執行役員)とした。
今回の協業では、両社が設置した専任部隊を通じて、共同で課題解決を提案するほか、アセスメントによる最適なクラウドの提案、AWS Blu AgeによるCOBOLからJavaへのコンバージョン、最終テストからシステム移行までの支援、安心安全な基幹システムのクラウド運用までをサポートすることになる。
すでに、富士通の社内システムにおいて、AWS Blu Ageを活用したモダナイゼーションを実践しており、富士通製メインフレームの技術をAWS Blu Ageに最適に組み込むことで、富士通の保守管理システムの機能を、短期間に、同等性能で稼働できたという。また、両社が共同で、高島屋の基幹システムのモダナイゼーションに取り組んでいる実績にも言及した。
AWSのウクポン氏は、「富士通と高島屋のモダナイゼーションの取り組みは、重要な先行事例になっている」としながら、「モダナイゼーションにおいて、自動化は重要な要素であり、それを実現するのがAWS Blu Ageである。さらに、AIをモダイナゼーションに持ち込み、AWSへの移行を支えることになる。自動化を進めることが迅速な移行とコスト削減を進めることにつながる。AIを活用してメインフレームが抱える問題を分析するだけでなく、生成AIを活用したイメージングによる変革、テストや検証などにも活用できる」と述べた。AWSでは、生成AIを活用したメインフレームのモダナイゼーションの事例が日本で生まれていることも明らかにした。
AWSが注目してるのは富士通だけ 協業はテンプレートになる
富士通の島津執行役員は、富士通の立場から、今回の協業について説明。「他社が、富士通製メインフレームのユーザーを狙った提案をしているという実感はある。1社ではモダナイゼーションの提案はできない。AWSとの連携によって優位性を持ちたい」と説明する。
その上で島津執行役員は、「企業ITシステムには、俊敏性と強靭性が求められ、持続可能性や競争力向上にはデータドリブンな企業基盤構築が不可欠である。また、富士通は、メインフレームとUNIXサーバーの販売終了をアナウンスしており、顧客のビジネスを支えるシステムのモダナイゼーションに注力することになる。40年以上に渡り、さまざまな業種における基幹システムを構築してきた豊富な経験と実績、2022年9月に開設し、現在70人体制のモダナイゼーションナレッジセンターによるナレッジの集約、そして、Fujitsu UvanceおよびUvance WayFindersへの取り組みや、グローバルの戦略パートナーとの連携を生かして、モダナイゼーションを推進していくことになる」と述べた。
モダナイゼーションナレッジセンターの陣容は、2025年度には150人にまだ拡大する予定であるほか、2025年度までに1万人のコンサルティング人材、4万人のデリバリー人材を育成する。
また、富士通では、Road to 3X(ロード・トゥ・スリーエックス)」という考え方を提唱。「データを、目的をもってひとつに束ね、新たな価値を生み出す道を示すものであり、DXだけでなく、SX、GXまで、将来に渡って伴走することになる」と述べ、「富士通が提案するモダナイゼーションは、単なるITシステムの更新ではなく、データドリブン経営への変革の基盤と位置づけている。守りではなく、変革に向けた攻めのモダナイゼーションであり、DX、SX、GXを実現するためのパートナーになる」と語った。
なお、富士通では、他社とのメインフレームモダイナゼーションにおける協業の可能性について、「いま具体的に話をしているわけではないが、AWS以外との協業が、顧客にとってモダナイゼーションを加速させるのであれば考えていきたい」とコメントした。また、AWSのウクポン氏は、「AWSが注目しているのは富士通だけであり、正しい成果を出していくことが重要である。富士通はこの分野のリーダーであり、それだけでも忙しくなる。富士通との協業はテンプレートになる。グローバルでは、他社とのパートナーシップも進めていくことになる」と述べた。