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3D都市モデルの開発環境を構築した「PlateauKit + PlateauLab」がPLATEAU AWARD 2023グランプリ獲得

「PLATEAU AWARD 2023 最終審査会・表彰式」レポート

特集
Project PLATEAU by MLIT

提供: PLATEAU/国土交通省

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データ活用賞はドローン運航基盤システム「PLATEAU DIPS-4D」

 データ活用賞は株式会社大林組の「PLATEAU DIPS-4D」が受賞した。

データ活用賞を受賞した株式会社大林組のメンバーと、審査員の小林 巌生氏(写真左)

 PLATEAU DIPS-4Dは大林組DX本部が開発したドローン運用の基盤システムだ。現在、ドローンの情報基盤システムとしては国土交通省が提供するDIPS 2.0が使われており、ドローンの利用者はここから各種申請や飛行計画の登録を行う。DIPS 2.0はあくまで現在のドローン運用(同地域に1機)のルールをベースにした静的なものだが、今回大林組DX本部が提案するのは、複数のドローンが飛び交う将来のドローン運用を支える基盤システムだ。

PLATEAU DIPS-4Dの画面の例(飛行経路計画)。緑の領域は飛行規制領域を表す

 人手不足をはじめとする産業界全体の課題に対して、将来的にドローンの都市間飛行が期待されるという背景がある。PLATEAU DIPS-4Dではドローンを中心としたさまざまな情報をPLATEAUの3D都市モデルを元に再現したバーチャル空間に統合し、飛行シミュレーションから飛行経路計画の作成、申請まで行うことができる。また、飛行の開始地点と終了地点の2点を平面上で入力するだけで、飛行規制領域を3次元的に回避する最適経路を自動生成することも可能だ。

 同地区同時刻帯に飛行予定のドローンの経路を可視化し、物理演算により近接飛行の有無を判定する機能も備えており、各利用者の申請内容を一括管理・共有することでより安全な運用をサポートできるとする。

PLATEAU DIPS-4Dのシステム構成。メインのアプリケーション開発はUnity、モデリングソフトとしてRhinoceros、データベースとしてPostgreSQLを使用している

 

さまざまなシーンでの活用が可能。官庁や自治体、民間企業などの情報を扱うことにより、ユーザーのニーズに応じた飛行計画やドローンを使ったサービス設計への活用など、プラットフォームとしての価値をさらに高めることができる

 審査員の小林氏によるデータ活用賞の授賞理由は次のとおり。

小林氏:審査員一同、高く評価しました。一方で、ドローンの規制データ、飛行計画のデータ、ひょっとしたらリアルタイムの管制データといったものも組み合わせないとなかなか実用化までいかないのではないかと思います。確実にニーズはあると思いますので、ぜひ、そういったデータを組み合わせて、引き続き実用化に向けて取り組んでいただけたらと思っております。

受賞した大林組DX本部の藤岡氏は「ドローンについて、弊社ではすでに測量などの形で使っていますが、今後いろいろな形で使えるといいです」とコメント

UI/UXデザイン賞にはドライビングシミュレータ「ぷらっとドライブ in 沼津」

 UI/UXデザイン賞を受賞したのは、 九州産業大学合志研究室による安全運転学習用Unity版ドライビングシミュレータ「ぷらっとドライブ in 沼津」。沼津のLOD3のモデルを使って実装した、実在の街を舞台にしたシミュレータだ。実行環境はWindows版とWebGL版の2つ。PLATEAUのジオメトリだけではなくセマンティクス情報も活用し、実際の走行データを使ったシミュレーション体験ができる。

UI/UXデザイン賞を受賞した九州産業大学合志研究室のメンバーと、審査員の松田 聖大氏(写真左)

 PLATEAUCityGMLSharpをフォークしたPLATEAUCityGMLUnityを使って、PLATEAUのCityGML形式のデータを直接Unityのモデルに変換している。Unityでストレスなく扱えるようテクスチャは軽量化。信号機についてはモデルを分離し、Unity側で点灯制御している。また、道路モデルLOD1は高さ情報を持たないが、PLATEAUCityGMLUnityにより平均化した地形の高さを与えることで道路データを生成している。

 あるべき箇所に信号機がないなどのデータ不足は手作業で修正している。また沼津ということで、背景に地理院地図の3Dモデルも活用して富士山を表示させるなど、リアルさを追求した。

信号機、自車・他車の制御はUnityで行っている

 今回は交通事故で一番多い追突事故の対策として「車間距離の維持」を教育テーマにし、安全運転学習用のドライビングシミュレータに仕上げた。スピード違反や通行区分違反、信号無視などの違反にはパトカーが登場するなどの演出も入っており、コンテンツとしても楽しめる。

 実車の走行データの活用については、その緯度経度の位置情報を使って他車の走行経路のほか、シミュレータ上でのリプレイに用いる。この走行データのリプレイは、PLATEAUにより実在の都市を再現しているからこそ容易に可能となる。なお、シミュレータ上での交通量(他車の量)はPLATEAUの持つ交通量に関する属性情報を元に(多い/少ないレベルで)制御しているという。

車間距離の取り方を学習する教育画面

 

 今後、追突事故防止以外の交通教育への対応とともに自動車学校や病院(リハビリ)での実証実験等を行っていく予定だ。

 審査員の松田氏は授賞理由を次のように語った。

松田氏:そもそも交通の物理シミュレーションは非常に難しい分野です。こちらの作品、私も実際に触ってみましたが、慣性が車にも効いているし、車の周りの風景が普通に自然に流れていく。そうしているうちに、不条理に前の車が止まる。今回テーマが体験を通して交通学習を行うというところで、全体の体験がしっかり考えられているなと思いました。それがいい方向に向かっていると思いまして、UI/UXデザイン賞に選ばせていただきました。

受賞した九州産業大学合志研究室のメンバーは「このプロジェクトは私の卒研と先輩方の研究や後輩たちの研究が組み合わさっています。今回は、このような賞をいただいてうれしいです」とコメント

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