消え去ったI/F史で取り上げるものとして「次はLocal Talkだ」なんて予言もあったが、Local Talkはもう少し先になる。今回はSCSIの前身であるSASI(サジー)を説明しよう。
世界初のFDDを開発したAlan Shugart氏が
そのFDDを機器に接続するために作ったSASI
SASIはFDDおよびHDDをPCに接続するためのI/Fとして、Shugart Associatesという会社によって開発された。このShugart Associatesは、「業界に痕跡を残して消えたメーカー」シリーズで取り上げているので、繰り返さない。要は世界で最初のフロッピードライブ(とフロッピーディスク)であるIBM 3330を開発したAlan Shugart氏が、IBM退社後に(何社かを経て)1973年に設立した会社である。
そのShugart Associatesは1976年に、同社のSA-400というフロッピードライブを発表しているが、このSA-400を接続するためのI/Fを1979年にSASI(Shugart Associates System Interface)として公開する。
ちなみにShugart氏は1974年に設立したShugart Associatesを退社、新たに興したのが現在のSeagateであるが、これは余談である。
そんなSASIであるが、当時ほかにFDD/HDDをつなぐ有力なI/Fがなかったこともあって、瞬く間に広がることになった。1981年9月にはANSI Document X3T9.3として業界標準化も完了しており、初期のパソコンでは広く利用されることになる。
さてそのSASIだが、別にFDD専用やHDD専用というわけではなく、FDDもHDDも接続できた。さらに言えば、複数のホストから最大8台までのデバイスを接続することも「規格上は」可能だった。
"Up to 8 SASI DEVICES can be supported"と書いておきながら、一番下のCOMPLEX SYSTEMは10個ドライブがいるじゃないか、という突っ込みが可能なあたり、まだ脇が甘かった1980年代という気がする
もっともこんなCOMPLEX SYSTEMを実装していた例は筆者もまるで聞かない。それどころか"BASIC TWO CONTROL UNIT SYSTEM"も見た記憶がない。一応Shugart Associatesが1980年にリリースしていたSA1403/SA1403DというSASI HDDコントローラーのマニュアルを見ると最大4台までのHDDを制御できるようなので、あるいは市場には存在したのかもしれないが、普段お目に掛かるのは一番上の"SIMPLE SYSTEM"の構成のみだった。
SA1403/SA1403DというSASI HDDコントローラーのマニュアル。SASIはFDDないしHDDのI/Fと書いたが、厳密にはFDDコントローラーやHDDコントローラーとのI/Fというのが正確で、HDDとのI/Fはまた別である。実際これを見ると、20ピンと50ピンの2種類のケーブルでコントローラーとHDDが接続されているのがわかる
なお、筆者はHDDとFDD以外で利用された例を見かけたことがないが、デバイスの側は以下のさまざまな機器が接続可能になっている。
- "Winchester Disk"(HDDの事だ)
- "Floppy Disk"(FDD)
- "MAG TAPE"(磁気テープドライブ)
- "OPTICAL DISK"(CD-ROMが世間に登場したのは1985年だったことを考えると、ここで言うOptical DiskはLD(Laser Disk)を念頭に置いていたのかもしれない)

この連載の記事
-
第852回
PC
Google最新TPU「Ironwood」は前世代比4.7倍の性能向上かつ160Wの低消費電力で圧倒的省エネを実現 -
第851回
PC
Instinct MI400/MI500登場でAI/HPC向けGPUはどう変わる? CoWoS-L採用の詳細も判明 AMD GPUロードマップ -
第850回
デジタル
Zen 6+Zen 6c、そしてZen 7へ! EPYCは256コアへ向かう AMD CPUロードマップ -
第849回
PC
d-MatrixのAIプロセッサーCorsairはNVIDIA GB200に匹敵する性能を600Wの消費電力で実現 -
第848回
PC
消えたTofinoの残響 Intel IPU E2200がつなぐイーサネットの未来 -
第847回
PC
国産プロセッサーのPEZY-SC4sが消費電力わずか212Wで高効率99.2%を記録! 次世代省電力チップの決定版に王手 -
第846回
PC
Eコア288基の次世代Xeon「Clearwater Forest」に見る効率設計の極意 インテル CPUロードマップ -
第845回
PC
最大256MB共有キャッシュ対応で大規模処理も快適! Cuzcoが実現する高性能・拡張自在なRISC-Vプロセッサーの秘密 -
第844回
PC
耐量子暗号対応でセキュリティ強化! IBMのPower11が叶えた高信頼性と高速AI推論 -
第843回
PC
NVIDIAとインテルの協業発表によりGB10のCPUをx86に置き換えた新世代AIチップが登場する? -
第842回
PC
双方向8Tbps伝送の次世代光インターコネクト! AyarLabsのTeraPHYがもたらす革新的光通信の詳細 - この連載の一覧へ












