【バイク】全日本ロードレースにドゥカティのチームが参戦! Team KAGAYAMAの挑戦

文●折原弘之 写真●折原弘之

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ドゥカティからファクトリーマシンを与えられ、全日本ロードレースのJSB1000クラスに挑むTeam KAGAYAMA

スズキの加賀山からドゥカティの加賀山へ! Team KAGAYAMAの挑戦

 オートバイライダーの加賀山就臣(かがやま ゆきお)選手は、バイクメーカー「スズキ」の大看板ライダーであり、「Team KAGAYAMA」はヨシムラに並びスズキを背負って立つチームだ。その加賀山選手がスズキを離れ、ドゥカティを使って全日本ロードレースのJSB1000クラスに参戦することになった。

 「なぜスズキからドゥカティへ?」そのことについて加賀山選手は「33年間スズキにお世話になっている間に、スズキがレースから撤退することは何度もあったよ。でもレース部門は残ってたんだ。それが2022年のレース撤退は、レース部門そのものがなくなってしまったわけ。そうなると僕は契約どころか、今後の話をする相手さえいなくなったんだ」わかりやすく言えば、読売新聞社はあるがジャイアンツがなくなったようなもの。当然、選手や監督は契約先を失うのである。

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スズキの加賀山からドゥカティのKAGAYAMAへ鮮やかな転身を見せた

 「そうなるとほかのメーカーと仕事しない限り、勝つためのレース活動はできないよね。でもカワサキの加賀山とかホンダの加賀山って想像できる?」バイクファンなら想像すらできない事態ではある。「それに、もっとスタイリッシュにレース活動がしたかった。そうなると海外メーカーに目が行くでしょ」そこで自身がワールドスーパーバイクに参戦していた頃に、交流の深かったパオロ・チャバッテイ(2023年までのドゥカティスポーティングディレクター)と連絡を取り始める。

いきなりワークスマシンを渡された

 昨年6月くらいから連絡を取り始めるも、話は遅々として進まない。これは望み薄かと思っていた矢先、チャバッティから「10月のMOTO GP JAPANでミーティングしよう」と返事がありモビリティーリゾートもてぎへと向かった。そこにはチャパッティと、ドゥカティレーシング部門の要人も同席していた。果たしてどんな回答が来るのか、緊張気味の加賀山選手に、「昨年のワールドスーパーバイク(WSB)のチャンピオンマシンを使いなさい」と言う信じられない提案ををもらうことになる。

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昨年のワールドスーパーバイク・チャンピオンマシンのドゥカティ・パニガーレV4Rと水野 涼選手

 「最初は何を言っているのかわからなかった。だって初めて仕事をする新参者のチームに、ファクトリーマシンを預けるなんて聞いたことがない。僕はファクトリーマシンがどういうもので、どれほど機密があるのかを知っているから。まさか、こんなオファーをもらえるとは思ってもみなかった」メーカーがプライベートチームに、ファクトリーバイクを渡すのは異例なことである。ただしドゥカティサイドも何も調べずに、こんな話を持ちかけるわけもない。

 そこには今まで加賀山選手がライダーとして、そしてチーム監督としてやってきたことを細かく調べて、信用し得る人物なのかを精査した結果なのだ。とてつもなくありがたいオファーだが、それによって大きな問題が生まれることも確かだ。

 それは、人材と資金である。ファクトリーマシンを走らせると言うのは、キットパーツを組み込んだレーシングマシンを走らせるのとはワケが違う。走らせてしかも勝つためには、マシンを良く知るエンジニアやメカニック、それに見合うデータやスペアパーツが必要になってくる。それだけでもマシンレンタル料以外に、莫大な資金が必要となる。2024年の開幕まで、たった4ヵ月しか残されていない。そんな状況で満額集めるのは到底不可能だが、加賀山選手はこのオファーを受けることに一分の迷いもなかったと言う。

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開幕戦のグリットにつく水野選手

DUCATI Team KAGAYAMAはノウハウを学ぶところからスタート

 こうして「DUCATI Team KAGAYAMA」の2024シーズンの挑戦が始まった。まずメカニックたちをイタリアに連れて行き、マシンを整備するノウハウを学ばせねばならなかった。そこでもドゥカティは、暖かく迎えスクーリングをしてくれたと言う。

 「工場に行くと、MOTO GPのチャンピオンマシンの横にTeam KAGAYAMAって書かれたスペースがあるわけ。そこにマシンが置いてあって、このマシンを一度バラして組み直して日本に送れと。でもウチのメカニックたちは、触ったことがないからわからない。するとドゥカティのファクトリーメカニックが集まってきて、教えてくれるんだよね。その光景はもう、サテライトチームじゃなくワークスの扱いだよ」と、その時のことを思い出しながら話してくれた。

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元ホンダのエース水野選手の勇気ある決断には心を動かされた

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 スクーリングの後も、ファクトリーチームのテストに同行し、ピット内から見学。セットアップなどの仕事を、真近で勉強してきたと言う。あとはライダーだが、勝てるライダーを呼ばなければ話にならない。そこで話を持ちかけたのがホンダの水野 涼選手だ。ホンダのエースである水野選手がこのオファーを受けた理由には感動させられた。

自分のパフォーマンスを発揮できる
水野選手がホンダのエースからドゥカティに移籍した理由

 「2021~2022年とイギリスのスーパーバイクで走っていて、昨年日本に帰って全日本ロードレースで走っていたんです。その時にWSBに代役として、走れるチャンスが来たんで1レースだけ走りました。WSBのマシンは同じホンダのバイクと言っても、国内のキット車とは別物です。普段乗ってるマシンと違うマシンで走っても、自分本来のパフォーマンスを見せられる可能性は低いと感じました。そんな時に加賀山さんから、ドゥカティのファクトリーマシンで戦えるチャンスをもらったんです。これは面白いなと感じました」とは言え、ホンダのエースなのだから、ホンダに残った方がレース以外の面も含め自分の人生にとって有利なはずである。そこをわかったうえで、Team KAGAYAMAを選んだのだ。

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レースに向けて集中力を上げる水野選手

 「僕の目標は今も、WSBで戦うことです。このままホンダにいても、キット車でレースを戦う事になります。でもTeam KAGAYAMAに行けば、シーズン中に代役の話が来ても全日本で戦ってるマシンに近い環境でレースできます。そうなれば自分のパフォーマンスを見せやすいし、引き抜かれてWSBに残れる可能性が高いと判断しました。自分は今年26歳になる年なんですけど、世界を見据えるには最後のチャンスだと思いました。なら一生ホンダに戻れなくても、この機会に賭けようと思ったんです」プロとして経済面やメーカーの動向を考えるライダーは少なくない。そんな中、まだこう考えるライダーがいるのだと胸が熱くなった。

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レースは途中赤旗となりやり直しとなったが、水野選手は終止トップを引き続ける。結果は2位だったが、数字以上のインパクトを残す結果と言える

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データがない中で勝ち取った2位は非常に価値がある

 人生を賭けた挑戦をする加賀山選手と水野選手。3月10日に鈴鹿サーキットで行なわれた、全日本ロードレース選手権の開幕戦では優勝に一歩届かずの2位。しかし、何のデータも持たず、海外のファクトリーマシンを走らせて5日目のチームが、多くの走行データを持つヤマハファクトリーを追い詰めたのだ。この2位は、優勝以上の価値があるだろう。

 2人の考えるシリーズチャンピオンも、夢物語ではないかもしれない。しかし、レースはそれほど甘くない。今シーズンのスーパーバイクには海外から戻ったライダーも参戦し、群雄割拠という言葉がふさわしいカテゴリーだ。強力なライバルたちをなぎ倒し、早く表彰台のテッペンに立ってほしい。

■筆者紹介───折原弘之

 1963年1月1日生まれ。埼玉県出身。東京写真学校入学後、オートバイ雑誌「プレイライダー」にアルバイトとして勤務。全日本モトクロス、ロードレースを中心に活動。1983年に「グランプリイラストレイテッド」誌にスタッフフォトグラファーとして参加。同誌の創設者である坪内氏に師事。89年に独立。フリーランスとして、MotoGP、F1GPを撮影。2012年より日本でレース撮影を開始する。

■写真集
3444 片山右京写真集
快速のクロニクル
7人のF1フォトグラファー

■写真展
The Eddge (F1、MotoGP写真展)Canonサロン
Winter Heat (W杯スキー写真展)エスパスタグホイヤー
Emotions(F1写真展)Canonサロン

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