仮想マシン(VM)ホスティング対応のエッジ拠点を2024年内に75ヵ所開設
セキュリティとクラウドの企業になったアカマイ、次に目指すのは“真のエッジコンピューティング”
2024年02月19日 14時15分更新
アカマイ・テクノロジーズは、2024年2月15日、クラウド分野の新戦略に関する記者説明会を開催。同社は、コンピュートサービスを分散エッジネットワークに拡げるプロジェクト「Gecko(Generalized Edge Compute)」に取り組んでいく。
アカマイが次に目指すのは真のエッジコンピューティング
冒頭登壇したアカマイ・テクノロジーズの職務執行者社長である日隈寛和氏は、2023年度の決算発表について触れ、「通期で38億ドルを達成して、成長率で見ると6%。今回非常に大きかったのがセキュリティビジネス、初めて元々の(創業ビジネスである)CDNビジネスを上回った」と説明。
現在同社のビジネスは、SecurityとComputeの売上が60%を占めるようになっており、始まったばかりのComputeビジネスは前年比25%の成長を遂げている。つまり本格的に「CDNのプロバイダー」から「セキュリティとクラウドコンピューティングのプロバイダー」に変貌しつつあると言える。
アカマイは1年前の2023年2月に、「Akamai Connected Cloud」を発表した。これは、アカマイの強みとも言える分散処理能力を活かした超分散型のエッジ/クラウドコンピューティングのプラットフォームだ。超分散型だからこそエンドユーザーに近い場所で、低レイテンシのパフォーマンスを発揮。スケーラブルで高い信頼性を備え、オーバーコストの削減にもつながるという。
日隈氏は、Akamai Connected Cloudの大きな特徴は、エッジの拠点(PoP)数だと説明する。フルスタックのコンピューティングやストレージを提供する「コア・コンピューティング・リージョン」に加えて、エッジPoPをグローバルで4100拠点、日本国内においても202拠点を構える。
これまで、分散プラットフォームのエッジ拠点では、CDNやサイバーセキュリティ、FaaSの機能を提供してきたが、Geckoプロジェクトにおいて、VM(仮想マシン)も動かせるようにしていく。場所を問わず、必要に応じてコンピューティングインスタンスを動的にスピンアップできるようになり、ひとつの拠点に問題が発生すればすぐに他の拠点に移すことで高信頼性も担保される。
このGeckoにより、クラウドからエッジまでのコンピューティング全体で一貫したユーザー体験を実現していくという。「コンピューティングの技術をエッジにも融合していく。これにより、本当の意味でのエッジコンピューティングが可能になる」と日隈氏。
2024年内にVMを提供するGecko拠点を75ヵ所に開設 コンテナやワークロードの自動オーケストレーションにも対応
Geckoのロードマップについては、Akamai TechnologiesのField CTOであるジェイ・ジェンキンス(Jay Jenkins)氏が説明した。ジェンキンス氏は、「Geckoにより、最も分散化されたネットワークだけではなく、最も大きなクラウドコンピューティングのためのプラットフォームを提供していく。ユーザーは、より低レイテンシかつレジリエンスな(回復力の高い)、分散化されたアプリケーションを展開できる」と説明する。
今後のロードマップとして、まずは2024年内にVMを提供するGeckoのエッジ拠点を75ヵ所で開設。フルスタックのコンピューティングを提供する25ヵ所のコア・コンピューティング・リージョンと合わせて、VMに対応する拠点を100ヵ所に増やしていく。
Q1中にはGeckoの拠点を、香港特別行政区、クアラルンプール(マレーシア)、ケレタロ(メキシコ)、ヨハネスブルグ(南アフリカ)、ボゴタ(コロンビア)、デンバー(コロラド州)、ヒューストン(テキサス州)、ハンブルク(ドイツ)、マルセイユ(フランス)、サンティアゴ(チリ)の10ヵ所で開設。Geckoの拠点は、ハイパースケーラーが集中していない都市に設置していくという。
このGeckoの拠点は、コア・コンピューティング・リージョンと比べてキャパシティは小さいが、より低レイテンシな用途に向いている。「ユーザーに近いローカルなプロバイダーを利用し、レイテンシーを1桁ミリ秒以下にすることを目標にしている」とジェンキンス氏。
Geckoを用いてアプリケーションを分散展開することで特にメリットが得られる領域として、素早いレスポンスが求められるゲームやソーシャルメディア、ライブストリーミングなどのユースケースを挙げた。その他にも、AI推論(inferencing)やEコマース、製造業、自動運転、金融サービスにおいても、低レイテンシなサービスを提供できるという。
2024年の後半には、Geckoの第2段階として、コンテナ対応を予定しており、第3段階では、自動化されたワークロードオーケストレーションに対応。分散された場所でアプリケーションを容易に構築できるようにしていく計画だ。「将来的にはパフォーマンスベースではなく、コストや二酸化炭素の排出量に考慮した形でスケールアウトできるようになる」とジェンキンス氏。
ジェンキンス氏は、「データセンターの側にサーバーを置くのは利便性が高いが、Geckoのビジョンはエンドユーザーに近いところにサーバーを置くというものだ。色々な組織や企業と一緒に、今後どういったものを作っていけるか非常に楽しみだ」と締めくくった。