AIで強さを発揮するGeForce
次は「Topaz Video AI」に内蔵されたAIを利用して検証する。ここでは内蔵ベンチマーク機能を使い、入力動画の解像度を1920×1080ドットに設定。“Artemis 1X”“Proteus 1X”“Nyx 1X”の3種類の処理におけるフレームレートを計測する。
Topaz Video AIはTensorRTを利用するためGeForce系が強い(=高フレームレート)。ここではRTX 4080 SUPERもRTX 4080の約4~6%上回る結果を出した。
ここで再びUL Procyonに戻るが、ここでは“AI Inference for Windows”を実施し、AIによる推論処理を同一時間内にどれだけ実施できるかを比較する。AI処理デバイスは当然GPUを、計算精度はFP32を指定した。Radeonも比較に加えるためAPIは“Windows ML”としている。総合スコアーの他にテストごとの推論回数も比較する。
RTX 4090が飛び抜けて高いスコアーや推論回数を誇っているのに対し、RTX 4080 SUPERはRTX 4080と同じAD103ベースであることを改めて強調する結果となった。1回でも多く推論を重ねられるGPUを探しているならRTX 4080 SUPERはRTX 4080よりも有利だが、コスト的なメリットがなければRTX 4080 SUPERを選べ、とはならないだろう。
最後に「SDXL+Automatic 1111」環境で生成系AIのアウトプット時間を比較する。モデルは「sx_xl_base_1.0_0.9vae.safetensors」とし、Automatic 1111にTensorRTを組み込んだ状態でテスト(ゆえにRadeon勢は除外している)。出力解像度は1024×1024ドットで、同じプロンプト&同じシードから1枚ずつ10個の画像を生成する時間を計測した。
グラフの形はDaVinci Resolve StudioのMagic Maskの処理時間と非常に似ている。RTX 4090とRTX 4080の間にRTX 4080 SUPERが着地しているが、着地地点はRTX 4080のほうに近い。RTX 4090は買えないが生成系AIの処理時間を極力短くしたいと考えているなら、まず健闘すべきはRTX 4080 SUPERだろう。予算があれば、だが。
パワーアップしているが、SUPERとは言い難い
以上でRTX 4080 SUPERの検証は終了だ。全体を通してRTX 4080より確かに進歩しているが、RTX 4080との差異を見いだせるシチュエーションは4Kゲーミングだとか、処理負荷が重くてVRAMへのアクセスも重要なゲーム、あるいはAIを使った処理などに限られる。
NVIDIA予想価格モデルが運良く入手できればコストパフォーマンス最高! と言えなくもないが、発売済みのRTX 4070 SUPERやRTX 4070 Ti SUPERのNVIDIA予想価格モデルがもう市場にない状況を考えると、コストパフォーマンス的には厳しいだろう。RTX 4080 SUPERはどちらかといえば、RTX 4080に強めのOCを施したファクトリーOCモデルといった印象が強い。RTX 4080を超えているという意味では間違っていないが、SUPER感はあまり感じない。
今回のRTX 40 SUPERシリーズ3モデルレビューを通じて、NVIDIA予想価格モデルという存在がなんとも買う側のマインドに暗い影を落としているのではと考えざるを得ない。NVIDIA予想価格モデルはごく一部の幸運(熱心)なユーザーしか手にすることができず、買えなかった人たちにとっては“似たような製品だけどえらく割高なものしか買えない”という事実だけが残ってしまう。「予想価格モデルがあったのだから、NVIDIAが示した価格は嘘ではない」という主張は間違いではないが、フェアではない。
こういう歪さがまかり通っているのは、GeForceの「どんな用途に使っても強い」という強さの裏返しでもある。ゲームでもクリエイティブ系アプリでも、AIでも強い。さすがにAFMFが出てきたおかげでゲームでの強さは揺らいできているが、その他の要素がまだGeForceの価値を盤石にしている。この背景があるから価格の歪さが成立しているとすれば、なんとも悲しいことだ。
だが徹夜明けの筆者の頭では、これを改善する策はとても考え出すことはできない。老人の愚痴はこのあたりにしておくとしよう。
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