AI技術の発展に伴い、肥大化していく開発コスト
なぜこうした方向になっていくかといえば、学習データの開発にコストがかかるようになっているためでしょう。AI分野での人件費の高騰もあります。肥大化し続ける開発費を回収するため、自らのモデルを公開することなく、クラウド上で展開される課金サービスが今後は主流になる段階に入ったと思えます。
ただし、これは何も悪いことばかりではなく、一般ユーザーにとってのサービス体験も向上させられます。
例えば、先月末に正式サービスを開始したアップスケーラー専用AI「Magnific.ai」もクラウドのみでサービスを展開しています。月30ドルで200枚生成できます。特定の画像を読み込むと、ディティールを描き込んだ上で、2倍サイズの画像を生み出してくれるというサービスです。
特定能力に特化したウェブサービスならではの直感的な使いやすさがあります。
Discordを使って画像生成をする仕組みだったMidjourneyも、現在ウェブサービスで利用できるように準備を進めています。一部ユーザーを招待し、α版の運用が始まっています(Midjourney Alpha)。現状のDiscordを使ったUIよりも圧倒的にわかりやすくなっています。スタンダードプランは月20ドルです。
Stable Diffusionを共同開発していたRunwayは、昨年10月に「Stable Diffusion v1.5」をオープンデータとしてリリースした後、生成動画サービスに集中しましたが、そのサービスはすべてクラウドサービスとして展開しています。実質的な標準のプロの価格は月28ドルです。
それぞれの特化した性能の高さを利用して、「Midjourneyで画像を生成し、Magnific.aiでディティールを作り込み、Runwayで動画化する」といった試みも欧米圏のユーザーには出てきています。合計すると月に80ドル(約1万1300円)程度の費用がかかってしまうため、使える人は限られると言えますが、プロフェッショナル用途では複雑化が続くローカル環境ではなく、整理された機能で絞り込んで品質の高い用途を求めるニーズが出てきているとも考えられます。
Midjourney v6 > Magnific AI > Runway pic.twitter.com/sulPnqIuzL
— 新清士@(生成AI)インディゲーム開発者 (@kiyoshi_shin) December 23, 2023
▲完成画像
今後も、Tiktokのようなライトなユーザーにも簡単に扱えるようにする環境と、プロ用途に耐えうるものとして使われる環境はどちらも追求されることになるでしょう。しかし、そのどちらも肥大化する開発費をいかに回収するのかという段階に入りつつあるとも言えます。
画像生成AIは、その技術が複雑化し応用範囲も広がっていますが、学習データを少コストで開発し、それで競争力を持つことができたイノベーションの最初期段階は終わりに向かいつつあるように思えます。来年には、その傾向はさらに顕著になるのではないでしょうか。
それでも、ControlNet、LCM、AnimateDiffといった小さなチームがローカル環境に引き起こした革新は今年1年に起きているので、少チームでの技術革新の余地はまだまだ残っていると期待したいとも思います。
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