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AWS re:InventのCEO基調講演は生成AIのトピックが中心

生成AIに傾倒するAWS Amazon Qはビジネスユーザーも視野に

2023年11月30日 18時00分更新

文● 大谷イビサ 編集●ASCII

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 ラスベガスで開催されているAWS re:Invent 2023の3日目には、AWS CEOのアダム・セリプスキー氏が基調講演を行なった。2時間半近くに及ぶ講演はかなりの部分が生成AI関連のトピックとサービス発表に締められ、新たにAIアシスタント「Amazon Q」が発表。AWSの生成AIへの傾倒ぶりがうかがえた。

AWS CEOのアダム・セリプスキー氏

reinventing(再発明)はAWSの遺伝子

 毎年、AWS re:InventでのCEOの基調講演は、同社の方向性を顧客やパートナーに強くアピールする内容になる。基調講演に登壇したAWS CEOのアダム・セリプスキー氏は、学習にフォーカスしたAWS re:Inventの趣旨を説明した上で、さまざまな業種での顧客紹介からスタートした。

会場のディスプレイいっぱいに拡がる顧客企業のロゴ

 まずは昨今連携を強めるセールスフォースをユーザーおよぶパートナーとして紹介。セリプスキー氏は、「セールスフォースはAWSをたくさん使っており、AWSもセールスフォースをたくさん使っている。今後は生成AIをアプリケーションを展開できるようにする。セールスフォースのAIであるEinstainとAWSのBedrock、DataCloudとアナリスティックサービスを使うことで、顧客はいち早く洞察を得ることができる」とアピール。さらにAWSのマーケットプレイスにセールスフォースのサービスを載せることでより使いやすくなると説明した。

 また、きわめて高い企業価値を持ついわゆるユニコーン企業も、80%以上がAWSを導入しているという。イスラエルのセキュリティ企業であるWiz、DNAの配列解析を提供するUltra Genomicなど。歴史を持つ企業としてはギターメーカーのMartinが電子パスポートのシステムを構築している。「お客さまは重要なニーズを解決し、次の新しい流れの準備をしている。そのためにはセキュアで、信頼できて、急速に開発ができなければならない。すべてAWSなら実現できる」とセリプスキー氏は語る。

 セリプスキー氏はAWSのカルチャーについても改めて紹介。顧客の声からサービスを開発する「Working Backwards」を実践し、新しく作り直す「reinventing」がAWSの遺伝子に組み込まれているという。そもそもクラウドコンピューティングを生まれたのも、Amazon.comでインフラ構築や運用の課題を解決すべく、ITインフラを作り直したからだという。

 AWSはクラウドを進化させる過程ルーターから冷却システム、プロトコルに至るまで再設計した。現在、AWSは世界の32箇所にリージョンを展開しているが、地域ごとにある複数のデータセンターをAZという単位でまとめ、高い可用性、キャパシティを実現している。

従来より10倍速いAmazon Express S3 One Zone、新世代のGraviton4

 最初のreinventingは汎用ストレージサービスのAmazon S3だ。2006年にAWSが最初にリリースしたのは、コンピュートのAmazon EC2ではなく、このAmazon S3。安価で高い可用性を誇り、あらゆるデータを安心して格納できるAmazon S3はAWS躍進の立役者とも言えるサービスと言える。アーカイブ用途で単価の安いGlacier Deep Archive、自動階層化管理を実現したIntelligent-Tieringなどのサービスも追加されてきた。

 こうしたストレージのreinventingとして基調講演で早々に発表されたのが「Amazon Express S3 One Zone」になる。専用ハードウェアによって「速いS3」を実現したAmazon Express S3 One Zoneは、S3に比べて10倍高速で、1ミリ秒の低遅延を謳う。機械学習やデータレイク、大型データセットなどの特定用途を想定するという。「Pinterestの場合、ライトスピードも10倍となり、ビジュアルインスピレーションエンジンも40%もコストを下げることができる」(セリプスキー氏)。

専用ハードウェアを用いたAmazon Express S3 One Zone

 続いてのreinventingは汎用コンピューティングで、AWS独自のプロセッサーであるAWS Gravitonが取り上げられた。ARMコアをベースに、2018年にリリースされたGravitonだが、2020年にはGraviton2、2022年にはGraviton3と着々と性能とエネルギー効果を向上させてきた。SAP HANA CloudもGravitonを活用しているとのことだ。

 そして今回発表されたGraviton4はGraviton3より30%高速で、データベースで40%、Javaアプリケーションで45%の速度向上を実現する。Graviton4を搭載した「R8g Instance for EC2」もリリースされた。

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