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AWS re:Inventで披露されたデータベースの革新

AuroraはServerlessからLimitlessへ 量子チップのR&Dも披露

2023年11月29日 11時00分更新

文● 大谷イビサ 編集●ASCII

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 ラスベガスで開催されている「AWS re:Invent 2023」の初日は、恒例のピーター・デサントス氏による「Monday Night Live」が行なわれた。インフラやチップに関する内容の多いインフラ担当デサントス氏の講演だが、今年のテーマは「データベースのサーバーレス化への道」。最後には量子コンピューティングへのチャレンジも披露され、エンジニアにとって満足度の高い内容となった。

AWS ユーティリティコンピューティング担当シニアバイスプレジデント ピーター・デサントス氏

アプリケーションの苗床にRDBほど適切な場所はあるだろうか?

 登壇したデサントス氏は、まずサーバーレスへののメリットをひもとく。サーバーレスは弾力性があるため、膨大なインフラを数多くの顧客で共有するにあたって、余剰のリソースを効率的に利用できる。顧客としても使った分だけを支払えばよいし、サステイナビリティの観点でも優れている。「もっとも電力効率がよいのは電力を使わないことだ」とデサントス氏は指摘する。もちろん、AWSが構築しているインフラに載っているため、AZ(Availability Zone)や独自ハイパーバイザーのNitroのような差別化された機能を利用できる。

 発売当初のDynamo DBは高性能な読み書きを、最低限のクエリとセマンテック機能で提供していた。幅広い機能で利用できるものの、既存のSQLデータベースの一部を提供するに過ぎなかった。また、2006年にAWSが最初にリリースしたAmazon S3とSimple Queueing Serviceだった。しかし、その後の絶え間ない技術革新により、サービスの使い方は大きく変わった。たとえば、2018年にDynamo DBはトランザクション可能なビルドを追加し、リレーショナルデータベースの置き換えを実現した。その後、サーバーレスコンピューティングの先駆けとも言えるLambda、コンテナ管理を容易にするFargateなどをリリース。「驚くような機能を開発してきた。しかし、今夜は別のストーリーにフォーカスしたい」とデサントス氏は話を進める。

 「アマゾンで働く上で、私が気に入っていることの1つは、私たちが1つのことだけを追求する必要性を否定していることだ」とデサントス氏は語る。AWSでは顧客のニーズにより、多様なサービスが生まれており、今やデータベースやファイルシステム、OS、ソフトウェアなど幅広い管理サービスを提供している。「みなさんがソフトウェアを実行するための最適の場所を持つことにコミットしている。このコミットメントこそが、サーバーレスコンピューティングの価値を、みなさんが愛するサーバーフルソフトウェアに提供するために、私たちが大規模な投資を行なってきた理由だ」とデサントス氏は語る。

 データベースに関して言えば、「リレーショナルデータベースほど適した場所はあるのか?」これがサーバーレスに進むまでの道程を語り尽くした今回のセッションの大きなテーマだ。

サーバーレスへの道が大きなテーマ

リレーショナルデータベースのデメリットを解消するAmazon Aurora

 従来、アプリケーションの基盤であったリレーショナルデータベースは、データの一貫性を保ち、パワフルで柔軟なSQLのクエリインターフェイスを持つなど、多くのメリットを持っている。しかし、データベースを扱うには、インスタンス構成を選択し、インストールとセットアップを行ない、複雑なレプシケーションを設定する必要があった。定期的なパッチ当ての作業も重要だし、スリルのあるアップデートも必要だった。2009年にAmazonが発表したRDSは、こうしたリレーショナルデータベースの設定、運用、スケールを容易にすることに目的があったという。そしてここでのデータベースの管理テクノロジーはリレーショナルデータベースの再定義でもあるAmazon Auroraにつながっていく。

 AuroraはMySQLやPostgreSQLと互換性を持ち、価格性能比もよい。そして最大の技術革新は、「Grover」と呼ばれるデータベースに最適化された分散型ストレージシステムにあるという。従来のRDSインスタンスはEBS(Elastic Block Storage)をアタッチして利用していたが、Groverはより優れた特徴を持っているからだ。

 現在のほとんどのリレーショナルデータベースは、1つのコンポーネントにフォーカスを当てて構築されている。これがログだ。ライトヘッドロギングという技術で、データベース内の挙動をすべて詳細に記録したログは性能にも影響を与え、クエリを効率的に行なうためのインデックスで利用され、データベースのリストアにも関わってくる。

ログこそデータベース

 Auroraはローカルではなく、各グローバルエントリにログを記録する。そしてGroverは単にログを記録するだけではなく、処理も行なう。そして、データベースと同じメモリ構造をリモートにも生成しているので、Aurora DBはいつでもメモリ構造を再現できる。これにより、メインDBのI/Oを大幅に削減でき、メモリに恒久ログを書き込む必要もなくなるという。ログの書き込みはシーケンシャルI/Oで、負荷も低く抑えられる。従来のOSS DBに比べて3~5倍のコストパーフォーマンスを実現する。

 またAuroraはマルチテナントなので、レプリケーションは不要。AZ同士でサーバーレスのスケーリングも可能だ。「1つのテーブルから膨大なテーブルまでスケールすることができる。データベースが小さければ、インデックスも必要ない。これこそサーバーレスだ」とデサントス氏は語る。

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