2023年10月31日~11月2日、ウイングアーク1stは「updataNOW23」を開催した。会場開催となった10月31日の基調講演では、ウイングアーク1stのCEOの田中潤氏に加え、北九州市、SMFL、清水建設、大和ハウス、東芝がスペシャルゲストとして登壇。それぞれの意思決定ストーリーを披露した。
課題だらけの日本でいまこそ必要な「データ活用」
「2023年、意思決定の最前線」と題した基調講演に登壇したウイングアーク1st 代表取締役 社長執行役員 CEOの田中潤氏はさまざまなデータから世界と日本の現状をひもとき、まずは聴衆たちとの認識合わせからスタートする。
世界の実質成長率は経済成長を前提として、3%を上回っているかどうかが一つの指標となるが、過去20年間を振り返ると3パーセントを下回ったのは2001年のITバブルの崩壊、2009年のリーマンショック、そして2020年の新型コロナではマイナス成長に転落している。物価も米国や英国、ドイツは2020年に比べて25%以上の上昇で、為替も2011年あたりは80円を切っていたが、現在は150円近く。「海外からモノを買うと、単純に以前の倍の価格で購入する感覚になる」と田中氏は指摘する。
一方で、日本での賃金はほぼ上がっていない。GDPに関しても、最近ドイツに抜かれ、4位に転落したというニュースが報じられた。そして、人口減少も加速しており、定年の延長や共働きの増加もあるが、生産労働人口は基本的にどんどん減少している。あらゆるデータが日本の厳しい現状を浮き彫りにしているわけだ。
では、日本企業はどうすべきか? 田中氏が披露したのは、有吉弘行さんが登場した「判断力はある。判断材料がない」というTVCM。「ポイントなのは、労働力だけに頼るのではなく、うまくデータを活用し、効率を上げていくことが重要」と田中氏は指摘する。実際、ウイングアーク1stの調査では、71%の企業はなんらかのデータ活用を行なっており、そのうち82%は注力領域と見なしているという。そして結果得られたものは、経営の判断材料になるという。
逆にデータ活用していない企業を調べてみると、できない理由は人がいないことになるという。「データ活用には専門的な人材が必要というのが現状」と田中氏は語る。こうしたデジタル人材に関しては、51%の企業が育成に踏み込んだり、多国籍の人材を採用しているという。
生成AIで実現される「全人類上司化計画」とは?
田中氏は、「データ活用に専門的な人材が必要なのか?に関してはイエス。でも、人材がいないからデータ活用をやらないのかというとノーだと思います」と語る。やるべき利用の大きな要因は、この1年で大きなブームとなった生成AIの台頭。元来人間が作っていた文章だけでなく、画像や音声、動画まで、AIが高いレベルで生成してくれる時代がやってきたのだ。
人間の仕事を代替してしまうかもしれないインパクトを持つだけに、生成AIはさまざまな議論を呼んでいる。生成AIは、正の側面を見れば、今まで特殊なスキルを持っている人しかできなかった作業を瞬時に行なえるというメリットになるが、負の側面としては、いろいろな情報を元にするため、間違った情報か正しいかを判断できないというデメリットになる。実際、負の面にフォーカスし、実際に規制や利用制限に踏み切る国や企業もある。
しかし、「素晴らしいテクノロジーを業務で使わないのはもったいない」と田中氏。なぜなら生成AIは、スマホのように簡単にいろいろなことができるからだという。「(スマホは)すごいテクノロジーをいとも簡単に使えてしまう。生成AIもそれに近いと思う」と田中氏は指摘する。スマホをタップして操作するように、ふらっと会話するだけで、すごいプログラムを書いてくれる。これが生成AIのインパクトだ。
頭脳としての生成AIに、自社データを与えれば、すごいことができるはず。これを可能にすべく、ウイングアーク1stとしてもDejiren、Dr.Sum、MotionBoardなどの製品に生成AIを積極的に組み込んでいく。田中氏は、「人口がどんどん減少する中、日本が成長していくには、ITを使いこなしていくしかない。人間は意思決定者となり、AIをうまく使って、ロボットの作業者を作っていく。『全人類上司化計画』と呼んでいますが、こんな冗談みたいな話が現実的に進んでいるのが現在です」と語る。
ウイングアーク1stでやりたいのは、「誰もがテクノロジーを使いこなす世界」だ。「小難しいテクノロジーを無理に押しつける気はない。AIは使いこなすべきテクノロジーなので、当社のテクノロジーとうまく組み合わせ、新たに使いこなせるテクノロジーにしていく。こうすればスマホのような感覚でいろいろなことができる。私はそう信じています」と語る。