USB-C版AirPods Proは5GHzの通信も使用する
トン氏が「Apple Vision Pro」とUSB-C対応AirPods Proを組み合わせた場合のロスレスオーディオの可能性について聞くと、ファン氏は「低遅延とロスレス伝送を満たすためには大容量できれいな(pristine)ワイヤレスのパイプが必要である。このために我々は5GHz帯で動作させようとしている。ご存知のようにBluetoothは2.4GHzで動作しているが、ここはWi-Fiとの競合などでかなり混んでいる。そのため我々はApple Vision ProとAirPods Proを5GHz帯で交信させようとしている。これはH2が提供する新しいプロトコルのほかにクリーンな帯域が必要だからだ。このためにUSB-C対応のAirPods Proは5GHz対応になっている。以前のAirPods ProはH2が搭載されているが、この5GHz通信はUSB-C対応のものだけだ」とロスレス伝送について興味深い発言をした。
本当は「その5GHzを使うプロトコルは何か」ともう少し突っ込んで欲しかったが、トン氏はあまりこの話題には興味がなかったようで。この話題に関してはここで打ち切られた。
いずれにせよ話題になっている、アップルのロスレス伝送が5GHz帯を使うことが判明したわけだ。
ファン氏はここで知性派らしく、「pristine」といういささか難しい英語を使用した。pristineはまだ汚されていないというようなニュアンスだ。これは2.4GHz帯のいわゆるISMバンドが混んでいているのを濁った大気のように例えて、5GHz帯がまだ汚染が少なく澄んでいるという意味だと思う。5GHzの電波は直進性が高いので短距離通信向きだが、ゴーグルとイヤホン間なら問題にならないだろう。
しかし、現在のところBluetoothは5GHz帯に対応していないはずだ。
Bluetoothの5GHz・6GHz帯域の利用についてはまだ規格制定はされていない。現在はワーキンググループが制定に向けて活動している段階と認識している。Wi-Fiは5GHz帯に対応しているが電力消費が大きく、AirPodsには搭載されていない。ここではH2について語っているので、アップルが独自にBluetoothを独自拡張したとも考えられるが、新プロトコルとも語っている。ここでさらに謎が深まったとも言える。
インタビューは直接アップル幹部の言葉が聞けたことで様々なことがわかった。
アップル製品の内部ではAIや機械学習が駆使されていること、よくお荷物のように言われるSiriも、ハンズフリーの理念のもとで、トリガーの一つとして重要視されていることもわかった。センサーの多いAirPods Proはますますウェアラブルの要となっていくことだろう。
もっとも興味深かったのは、アップルのソフトウェアには、リリースされない機能や工夫がさりげなく入っているということだ。もしiPhoneを使っていて、他社のスマートフォンよりもなぜか使いやすいと漠然と感じたならば、それは知らない間に入っている人目につかない機能の積み重ねによるものだろう。
それがアップルの「マジック」の秘密なのかもしれない。
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