今年4月、KDDIと楽天モバイルは新たなローミング協定を締結した。これまでローミングエリア外であった東京23区や大阪市、名古屋市などの都市圏を含む一部繁華街がローミングエリアとなった。
KDDIとのローミング協定を改定したことにより、楽天モバイルは「最強プラン」として、ローミングエリアでは月間5GBまでというこれまでの通信制限を撤廃。ローミングエリアでもデータ通信が使い放題となったのだ。
締結直後、新しいローミング協定について、具体的な内容が明かされることはなかった。しかし、7月28日に開かれたKDDIの決算会見において、KDDI髙橋誠社長から「今期の予想では600億円の減収を見込んでいた。その後、ローミング協定を見直したため、減収規模は100〜200億円程度、改善が見込める」との言及があったのだ。
楽天とKDDIの利害が一致した「最強プラン」
ここ数年、政府による値下げ圧力によりARPU収入が落ち込む中、KDDIにとって楽天モバイルからのローミング収入は貴重な収益源でもあった。
実際、楽天モバイルはユーザーがローミングエリアで1GBを使うたびに、500円弱の接続料をKDDIに支払ってきた。三木谷浩史会長は常々「KDDIへのローミング料が高すぎる」とぼやき、これが楽天モバイルが赤字体質から抜け出せない元凶となっていたのだ。
楽天モバイルとしては、早期にKDDIへのローミング支出を減らそうと、全国のネットワーク設備計画を3年近く前倒してきた。その結果、設備投資の支出も3年分、前倒しとなり、赤字も3年分膨らんでしまったのだ。
楽天グループ全体で収益が厳しくなるなか、ローミング収入を維持したいKDDIと、全国への設備投資を控えたいという楽天モバイルの思惑が一致。ローミング協定の見直しが実現した。

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