ゲームの市場規模は減少。そのなかで市場がさらに伸びる鍵は?
2022年はゲーム市場が初の減退!?その実情とゲーム業界の未来を浜村氏が語ったオンラインセミナーレポ
2023年5月24日、KADOKAWAデジタルエンタテインメント担当シニアアドバイザーの浜村弘一氏がオンラインセミナー「ゲーム産業の現状と展望 2023年春季 シーズン2へと向かうゲーム産業」を実施。
本セミナーでは、コロナの時期を超えて新たなシーズンに入るゲーム産業についてさまざまなデータをもとに分析。今後の展望についても語った。
世界のゲーム産業の状況は?
前年('21年)に比べ、世界のゲームコンテンツの市場規模は7%も減少した。ここまでゲームの市場規模が減少したのは初めてだと浜村氏。
内訳ではモバイルが6.6%のダウン、PCは3.9%のダウン、家庭用ゲーム機にいたっては11.7%もダウンしている。シェアでは、モバイルは変わらないけれども、PCのシェアは少しアップして、家庭用ゲーム機は1%ダウンしているという。
地域別に見ると、北米が11%、欧州は15%、東アジアは3%とそれぞれダウンしている。巣ごもりの需要がなくなったことに加え、不況の影響など、さまざまな要因でダウントレンドになってしまったようだ。
ゲームのシェアでは最もダウン傾向にある家庭用ゲーム機だが、ハードの売り上げではソニー・インタラクティブエンターテインメント(SIE)の拡大が目立っていると浜村氏。去年の年末あたりからPlayStation 5(PS5)の生産体制が整い、普及が始まっているという。
ハードを含めた市場規模では、SIEは前年比118.3%、任天堂は99.7%、マイクロソフトが前年比97.1%、家庭用ゲーム機は確かにコンテンツの市場規模は落としたが、ハイエンド機の普及から復調の気配を見せ始めていると語る。
国内のゲーム産業の状況は?
国別の状況では、世界の家庭用ゲーム機市場が減退する中、日本国内の家庭用ゲーム機市場はアップ。ここまでの状況をまとめると、ハードは117.5%、ソフトは96.7%、そして合計が108.2%と、ソフトは微減だが、ハードが売れたため、ゲーム産業全体の市場規模は伸長した。
ソフトは売り上げを落としているけれども、去年ヒット作が2つ出ている。1つは『ポケットモンスター スカーレット/バイオレット』。前年も『ポケットモンスター ダイヤモンド/パール』が1位を取っているが、その2倍の売り上げを誇っているという。
もう1つは『スプラトゥーン3』。こちらも前年の『ポケットモンスター アルセウス』の1.5倍となっており、トップの2つの売り上げは前年よりも、ほぼ2倍になっている。
なのに、なぜソフトの売り上げが下がったかというと、3位以下のソフトの売り上げが弱かったため。そこが重要なポイントだと浜村氏。
市場全体を底上げするということは、いくつかのタイトルが売れるだけでなく、全体の規模として中小のソフトも売れないといけない、ということがここから読めるだろうと語った。
ハードの販売台数は'21年に比べると、Nintendo Switch(Switch)の売り上げが83.3%に下がった。Switchは世界的にピークアウト現象を見せている。
PlayStation 5(PS5)は前年から倍近い伸びを見せ、結果、185.7%と台数ペースでは前年並みだけれども、売り上げベースでは17.5%と伸長。これはSwitchよりPS5の値段が高いので、売り上げでその分増していることだという。
ソフトの販売本数で見ると、Swtichは去年とほぼ同じ。『ポケモン』と『スプラトゥーン3』が売れたけれども、そのほかのソフトが売れなかったため前年から微増ということになった。
一方で、PS5のソフト販売本数は、大きく数字を伸ばして167%ということになったが、任天堂と比べると規模が小さいとのこと。PS5のソフトの売り上げが上がっているけれども、PS4のソフトが前年から数字を落としてしまった結果、トータルの販売本数の前年比が97.5%という数字なったという。
ハードの累計台数では、Switchが2860万本ということで、ニンテンドー3DSを超える数字まで来ている。PS5はようやく320万台というところだが、ハードの発売から3年目ということで、真価を発揮するのはこれからだろうと浜村氏。
世界一のゲーム市場であるアメリカでは、経済状況の悪化により、PC、家庭用ゲーム機、モバイル含めて5%下がって市場規模はマイナスになってしまった。
マイナスになった要因としては、ハードの供給の制約があったことと、大型のタイトルが不足していただめだという。加えて、経済状況の悪化があると浜村氏。
アメリカのハード市場では、Switchが前年比で76.6%に。PS5は前年より売れ132%に。同じくXboxも前年より売れ120.4%と数字を伸ばした。
とはいえ、合計は前年比で98.7%。単価の高いPS5などは台数を伸ばしたものの、数をそろえられたのが後半だったため、結果としてアメリカのハード市場全体の台数ベースは下がってしまったとのこと。
続いて欧州・ドイツの数字では、前年比で63.7%とSwitchが台数を落とした。PS5も台数の供給が間にあわなかったようで、前年比59.3%に落ちた。
Xboxは台数を間に合わせたようで、108.5%となったものの、ハード台数のトータルで見ると64.3%とハード市場は落ちてしまった。
Switchのピークアウトは世界的に見られるところだが、ドイツではPS5の供給が間にあわなかったことにより、シェアの落ちが目立った。
世界のトータルで見ると、Switchはピークアウト傾向に。PS5やXboxの供給ができたところは台数を伸ばし、用意ができなかったところでは落としたという見方になると思われると浜村氏は語った。
少し事情が異なるのが中国。伸長著しかった中国のゲーム市場が、統計開始以来のマイナスとなり、前年から10.3%も落ちてしまった。カテゴリー別に見ると、モバイルゲームが14.4%減、ブラウザーゲームも12.4%減、家庭用ゲーム機が8.8%減。一方、PCのオンラインは4.4%と少し伸びている。
原因としては、21年夏に行なわれた若年層に対する規制の強化と、21年夏から22年春にかけてのタイトル認可停止。これらが市場の縮小のきっかけになったと言われているという。
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