Google Cloud Day基調講演レポ パートナープログラムやユーザー事例も披露
DXに必要なデータ活用、内製化、コラボレーションをジェネレーティブAIで支援
Google Cloud活用でW杯を乗り越えたAbemaTV、DXと内製化を進めた損害保険ジャパン
後半ではGoogle Cloudの国内導入事例についても紹介した。
AbemaTVでは、「FIFAワールドカップ カタール2022」の全64試合をインターネットで配信して話題を集めたが、この配信基盤にGoogle Cloudを活用していた。現在、アプリのダウンロード数は9600万、1週間あたりの利用者数は1500万人に達して、W杯期間中は3409万人が利用したという。AbemaTVでは、開局当初となる2016年から、Google Cloudを活用している。
AbemaTV CTOの西尾亮太氏は、「Abemaを構成するシステムのほとんどはクラウド上に構築されており、重要な機能はGoogle Cloudによって実現している」とし、「W杯では、ネット配信ならではの視聴体験の実現に向けて、画質の向上やマルチアングル機能、スポットスタッツ機能などを計画する一方、何倍ものトラフィスックが想定される未知のイベントに対応するために、広範囲のキャパシティプランニングや負荷試験、障害試験を行う必要があった。しかも、それを半年間の準備期間のなかで完遂させなくてはならなかった。そこで、Google Cloud Professional Servicesの支援を得て、現行アーキテクチャーにおける課題や、Google Cloud上でのあらゆるインシデントの可能性を事前に洗い出し、限定された期間のなかで、システムの信頼性を効果的に向上させることができた」と振り返る。
その上で「その結果、想定以上に安定性をコミットしてくれたため、クラウドインフラに対する絶対的な安心感が得られ、新たな視聴体験の検討という本題ともいえるテーマにフォーカスすることができた。配信期間中においては、Google Cloudのシステムにおける大きなトラブルはひとつもなかった。また、新たな視聴体験を提供できたことで、メディアとしての価値を大きく向上させることができた。今後もスポーツを含む大規模なライブ配信において、ネットならではの体験を提供し、新しい未来のテレビの実現を目指す」とした。
また、損害保険ジャパンでは、2021年4月に設置したDX推進部を中核としたDX推進において、Google Cloudを活用。社内および代理店向けナレッジ検索システムの「教えて!SOMPO」では電話照会件数が45%減少したり、保険の見積もりから成約処理、契約管理を行う「トリシンマスター」では見積もり件数が5倍に増加したりといった成果が生まれているほか、海外良好保険契約者などを対象に、次回契約時の割増率や割引率を算出する「メリデメ算出ステム」では、1カ月半かかっていた作業が数日に短縮するといった効果が出ているという。
損害保険ジャパン 執行役員CDO DX推進部長の村上明子氏は、「DX推進部では、圧倒的な生産性の実現、データドリブン施策の全社展開、デジタルによるビジネス拡大、DX風土構築とDX CoE、お客様および代理店への新たな体験価値の提供に取り組んでいる。従来はこれらを実現するためにプロトタイプであってもベンダーに依頼することが多かったが、DX推進部内に内製化チームを設置し、Google Cloudアカウントチームの支援を受けながら、スピーディなPoCや開発を行えるようにした。DXはプロジェクトをアジャイルに進める必要があるが、そのためにはクラウドと内製化は必要である」などとした。
Google Cloudに対しては、高速な自動スケーリング、OSSベースの技術展開、PaaSの安定した稼働実績を評価しているほか、社内の技術者からは、マネージドサービスの優位性や公式ドキュメントが充実していることなどに高い評価があるという。また、アプリケーション開発支援プログラムであるTAPを利用して、内製化を支援。それをもとに内製化した「かんたん家財評価ツール」は、代理店の生産性向上、売上向上に貢献することを期待しているという。
「今後は、生産性向上などを目指す業務変革型DXと、デジタルによるビジネス拡大を目指す事業創造型DXを両輪としていくが、クラウドの重要性はさらに高まると考えている」と語った。
Google Cloud Dayは東京(5月25日~25日)、大阪(6月2日)、名古屋(6月22日)、福岡(6月30日)の4都市で開催し、東京会場では2つの特別講演と61のセッションを用意。その他の開催では、各都市でのDX事例なども紹介する。内容はオンラインで配信した。