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業務を変えるkintoneユーザー事例 第177回

kintoneを会社のセンターポジションになるまで育てた2つのアプリ

お蔵入りしていたkintone モバイル版で活用を再開した長崎ロードサービス

2023年05月24日 09時00分更新

文● 柳谷智宣 編集●MOVIEW 清水

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 「kintone hive2023」の第2弾が福岡で開催された。会場はいつものZepp福岡。kintone hiveはkintoneのユーザー事例を共有しあうイベントで、優勝した企業は「kintone AWARD」に進出する。登壇したのは5社で、今回は4番手、長崎ロードサービスの総務 町田利枝氏によるプレゼンの様子をレポートする。

長崎ロードサービス 総務 町田利枝氏

「うちの情報このままで大丈夫?」という危機感からkintoneへ

 長崎ロードサービスはJAF(日本自動車連盟)のようなロードサービスを提供している民間企業。扱える車種が豊富な点と、小さなトラブルから大きな事故まで対応できるのが特徴だという。昭和61年創業で、現在37年目となり、スタッフ15名で24時間365日、車のトラブルに対応してるという。

 2011年、東日本大震災が起き、長崎ロードサービスもレッカー組合と一緒に気仙沼でボランティア活動に従事したそう。現地の映像を目にした町田氏は、「うちの情報このままで大丈夫なの?」と危機感を持った。当時は、Microsoft Accessに情報を入力し、社内サーバーに保有していたのだ。

建物ごと流されてしまうような災害の映像を見て危機感を覚えた

 そんな時、付き合いのある会計事務所の人から、kintoneのことを教えてもらった。早速、調べてみると、お試しありで、月々1人880円と財布に優しいと感じた町田氏は、とりあえず触ってみることにした。

「ドラック&ドロップするだけでできるので、とりあえず顧客管理アプリを作ってみると、Accessと同じようなものができてしまいました。そこでkintoneの運用を開始したのですが、しばらくすると、サイボウズって大丈夫なの?と疑問が生まれました」(町田氏)

 そこで、2013年にサイボウズが福岡でイベントを開催したので、青野社長に会いに行った。そこで、サイボウズでは、データを東日本と西日本に分けてしっかり守っているということを聞き、安心したという。

2013年、青野社長の話を聞きにイベントに参加

 しかし、kintoneの使い方を学ぼうにも、ヘルプを見てもさっぱりわからず、サポートセンターに連絡しても言っていることが理解できず、心が折れてしまったそう。その後数年は、kintoneは情報を入れるだけの箱になってしまった。

 従来は、紙を使って現場に指示していたが、なくしたり雨に濡れて見えなくなるリスクがあった。そこで、スタッフに渡しているガラケーへ携帯メールで連絡するようにしたのだが、それもうまくいかなかった。

 携帯メールだとフォーマットがないので、人によって書く内容の順番が異なったり、ずっとスクロールしないと重要な情報が出てこないので、見逃されてしまったりしていた。個人情報保護法が施行され、コンプライアンスを重視するようにクライアントから言われるようにもなった。

お蔵入りしていたkintoneにモバイル版が出たことで活用を再開

「kintoneにモバイル版が出たと耳にしました。パソコンから情報が送れるようになるのか、と福岡のサイボウズオフィスに電話しました。意外にも、快く相談を受けていただき、いろんなことを教えていただき、指示書アプリを早速作ってみることになりました」(町田氏)

モバイル版が出たのでサイボウズ福岡オフィスに相談した

 町田氏は、仕事が忙しいときには現場に出ていたので、その時の経験がアプリ作りに役立った。現場スタッフが知りたいこと、見たいことがある程度わかっていたのだ。

 現場がいつまでにどこへ行き、どんな作業をするのかということがわかるように指示書アプリを作成。すんなりと社内に受け入れられ、活用されるようになった。

指示書アプリで紙の指示書から脱却できた

 さらに忙しくなると、新たな課題が発生した。誰がどんな作業をしているのかわからないので、現場スタッフから事務員に対する不満が噴出したのだ。全体の情報が見えないので、自分だけが働かされていると感じてしまったそう。そこで、町田氏は全員が情報を確認できるようにポータルの作成に取り掛かった。再度、ヘルプセンターに連絡してみると、今度は親切に手取り足取り教えてくれたそう。

 完成したポータル画面には、現場スタッフがすべきことだけでなく予約案件や保管している車を次にどこに運ぶのか、などが表示され、会社全体の流れがわかるようになった。

「ポータル画面を見ると、自分だけでなく、みんなも忙しいんだ、ということがわかり、共有が生まれてきます。そして、あいつの現場、大変そうなんで、俺も手伝いに行ってきます、とスタッフから声が上がるようになりました」(町田氏)

ポータルで情報を全社共有することで、現場スタッフとの共感が生まれた

kintoneが生み出した共有と共感、そしてチームワーク

 kintoneの活用は進み、スタッフはコメント欄も使うようになった。顧客からの要望やクライアントからの連絡事項を入力し、共有できるようになったのだ。連絡漏れがなくなり、写真添付で報告もできるようになった。

 従来は伝票に到着時刻や走行距離などをすべて手書きしており、1枚につき約15分ほどかかっていた。例えば、1日に5つの現場を回るなら、1時間以上も書類作成に費やすことになる。現場のスタッフは疲弊し、汚い伝票や読めない伝票が増えてしまった。

 今では、kintoneに情報を入力すれば、5分で伝票を作成できるようになっている。約3分の1に業務を圧縮できたのだ。

伝票作成が15分から5分に圧縮できた

 町田氏が作ったkintoneアプリは、10年間でたった3つ。しかも、今も活用しているのは2つだけだという。しかし、それでもkintoneは長崎ロードサービスのセンターポジションにいる。

「kintoneは共有と共感、そしてチームワークを我が社に生み出しました。我が社の合言葉は「kintone見て」です」と町田氏。今後は、勤怠管理や会計処理、請求業務、などもkintoneで行おうと考えている。

「私の大きな夢は、kintone版の三蔵法師になることです。全国のいろいろな方々とkintoneで繋がりたいと思っています。様々なシステムがありますが、その多くは自分で変更することが難しかったり、高額だったりしますが、kintoneは違います。こんなおばちゃんでも、kintoneで会社を変えることができました。あなたもkintoneで会社を変えられます。たくさんのお金をかけなくても、自分の会社に合ったシステムがkintoneでできるんですよ、一緒に頑張りましょう。そんな存在に私はなりたいです」と町田氏は締めた。

三蔵法師ならぬキンゾウ法師になりたい、と町田氏

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