毎回マニアックなアンプ製品を持ち込むAnalog Squared Paper。今回の展示はコンパクトなポータブル・ヘッドフォンアンプの「TR17hp」だ。まるで大型アンプのミニチュアのような製品で、小型のトランスを搭載して空中配線を取り入れるという、見た目で既にマニア心をくすぐる製品だ。試聴してみると音も小型な筐体とは思えないほど豊かで本格的だった。
ヤマハは新開発のヘッドホンアンプ「HA-L7A」を初展示。本体と別にトランスが強調されたデザインが特徴的で、いかにもパワーを感じさせる同社の平面磁界ヘッドフォン向けのアンプに思えるが、実のところは独自の音場再現技術を搭載して映画も楽しめるような設計がなされていると言うことだ。
HIFIMANは、日本初登場の新製品として、密閉型で平面磁界型のヘッドホン「Audivina」と新設計のヘッドホンアンプ「EF600」を展示した。ヘッドホンスタンドにもなる、EF600のデザインが面白い。Audivinaは「ハウジングが新設計」ということだが、試聴してみると密閉型らしからぬすっきりとしたサウンドを聴かせてくれた。
Dan Clark Audioの最新ラインナップ「Corina」も登場。これは独自のメタマテリアル技術である AMTSを採用したラインナップの静電型バージョンだ。静電型用のアンプはミョルニルオーディオの製品が使われていたがこれは参考品とのことだ。端子はSTAX Pro規格なのでSTAX用の静電型ドライバーでも使用できるのではないだろうか。
Woo Audioのブース。一見ただの接続ケーブルのようだが、実はESSのDACを内蔵しているというユニークな製品が「Phantom DAC cable」だ。入力端子はUSB。ここにドングル型のDACが内蔵されている。出力端子はRCAとXLRの二タイプが用意されているが、こうした製品で本格的なXLR端子が採用されているのは珍しい。
春のヘッドフォン祭 2023では、私自身もCRI・ミドルウェアのブースで「新世代のフルデジタルアンプの可能性」と銘打って講演をさせてもらった。アスキーの連載でも以前紹介したが、CRI・ミドルウェアの「D-amp」ドライバーの試作機を用いた解説と試聴のセッションである。立ち見が出るほどの盛況だったが、来場された方々にお礼を言いたいと思う。また、フルデジタルアンプというものに対しての興味がとても高まっているのを感じた。
会場では、Infineon社の技術を採用したVolumioの「INTEGRO」やL&Pの「W4」など、様々な形でフルデジタルアンプが登場してきていた。これもひとつにはDAC ICの供給に対する不安が背景にあるのかもしれない。
こうしたトレンドを長く発信してきたヘッドフォン祭も、中野サンプラザでの開催はこれが最後となった。次回からは会場を変えて、ステーションコンファレンス東京での開催となる予定だ。新しい場所で、新しい時代のトレンドを感じさせるイベントになってほしいと思う。
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