営業活動の記録が進まない! 企画部門に泣きつかれた情シスが選んだのは?
LINE WORKSとBotを組み合わせたパナソニック ホームズのデータ活用事例
2023年05月01日 10時00分更新
LINE WORKS DAY 23の講演で、パナソニック ホームズの情報企画部部長を務める石井功氏が登壇し、同社が開発したLINE WORKSとBotを組み合わせたデータ活用の事例を紹介した。聞き手は、ワークスモバイルジャパン シニアソリューションスペシャリストの荒井琢氏が務めた。
CSナンバーワンを目指してコミュニケーションを重視
石井氏は1981年に当時の松下電工に入社。情報システムの開発や再構築を担当した。その後、松下電工が松下電器産業と合併してパナソニックとなる際のシステム統合に携わった。その一方でコールエンターへのAI導入など新しい技術の取り組みも進め、パナソニック ホームズでもデジタル化、AI導入などを主導している。
パナソニック ホームズは、かつてパナホームと呼ばれた住宅メーカーで、国内が主な市場となり、一部海外に展開している。本社は大阪で、国内2ヵ所の工場と16の支社を構える。
同社の原点は、グループ創業者である松下幸之助氏の「人々の暮らしを幸せにしたい」という思いにあり、暮らしをよくする「良き家」を作る使命を受け継いでいる。現在の同社の経営方針も、CSナンバーワンを掲げ、事業活動を行なっている。
CSナンバーワンを実現するためには、顧客とのコミュニケーションを質、量ともに向上させることが不可欠である。「住宅はお客様の一生に1回の大きな買い物。家には人生の思いが込められている。当然、コミュニケーションが一番大事なものだという認識である」(石井氏)
だが、以前の同社は、顧客と営業部員のコミュニケーション(活動実績)の記録は手書きの日報がベースとなっており、確認が容易でなかった。そこで、本社部門がひな形のExcelファイルを作り、それに入力を進めたが、手作業で入力しなければならず、負担が大きかった。「毎日事務所に戻り、PCを立ち上げてExcelを起動して入力する必要があり、ほとんどの人がやってくれなかった。困った企画部門が、情シス部門に相談を寄せてきたというのが経緯だ」
石井氏のチームではこのニーズを聞いて、誰でも簡単に使えることが最優先だと考えた。そこで、LINE WORKSのインターフェースを用いて、それにBotを組み合わせるシステムを考案、iPhone、iPadなどデバイスを選ばす、かつ事務所に戻らなくても現場から入力できる仕組みを作ることにした。
このシステムを導入した後は、営業の現場(支店)では活動記録が最初からデジタルで登録することができており、記録を踏まえた上司から部下へのアドバイスなど、現場のコミュニケーションが活性化した。また、本社の企画部門では、各拠点別に営業活動が把握できるようになり、拠点ごとの販売戦略を検討し、実行できるようになった。
新築物件ごとにトークルームを設定し、部門横断で情報共有
家を建てる場合、施主(顧客)は住宅メーカーの営業、設計、建設(現場監督)の3種類の部署と連絡を密に取りながら進めていく。さらに、外部の業者も加わり、関係者が非常に多い。同社では邸別(顧客別)のトークルームを作り、顧客がLINEで連絡を入れてくると、社内の全ての部署の関係者とLINE WORKSで情報を共有し、外部業者ともLINEまたはLINE WORKSでつなぐことで、コミュニケーションを活性化している。
システム構築にあたって、ユーザーが簡単に入力できるように、できるだけタップ数を減らすことを目指した。そのため、基幹システムの組織マスターや顧客の情報を、RPAを用いてクラウド(AWS)に取り込み、そことAPI接続をしてBotに接続し、LINE WORKSのインターフェースで表示することにした。AWSに取り込んだ活動実績と顧客情報は、別途RPAを経由してBIツールで可視化する仕組みも追加した。
今後は、この仕組みをさらに発展させ、活動実績と社内のデジタルデータを掛け合わせて活用することを考えている。「例えば営業パーソンの活動データと受注データを分析すれば、どんな活動が受注につながっているかを可視化することができる。またお客様アンケートと活動実績を組み合わせれば、お客様満足度と営業活動の内容の関係を明らかにすることができる。こうした施策を通じて、従業員のスキルアップにつなげたい」(石井氏)