EUは規制強化、アメリカ政府はまだ初期段階
気になるのはここに政府がどう係わっていくかです。AIの規制は、FLIに見られるように、その危険性を制御するために、介入するべきという議論が、欧米圏で一定の支持を受けているんですね。
アメリカ政府の方針としては、4日に、米バイデン大統領が、ホワイトハウスで開催された大統領科学技術諮問会議の席上で、「AIは、病気や気候変動といった非常に難しい課題に対処するのに役立ちますが、私たちの社会、経済、国家安全保障に対する潜在的なリスクにも対処しなければなりません」との発言をしています。その場には、学術関係者以外に、マイクロソフトやグーグルの幹部も参加していたとのことです。
「アメリカの権利と安全を守り、プライバシーを保護し、同様に可能な偏見や偽情報に対処するために、責任あるイノベーションと適切なセーフガードを確保する」必要性をあげ、ハイエク企業に(AIに対して)責任あるイノベーションと適切なセーフガードを確保するために、権利と安全を守ることの重要性を議論し、「製品を公開する前にその安全性を確認する責任がある」としています。さら若年層への保護について話しています。すでに昨年10月にAIについてのに、議会に対し、子どもを保護しテクノロジー企業によるデータ収集を抑制するための法案を可決するよう改めて呼びかけた」としています。
アメリカではAIについてのプライバシー保護の基本法案が昨年10月に提出されており、その内容についても触れています。「1つは、ハイテク企業が私たち全員について収集する個人データに厳しい制限を課すこと、2つは、子どもに向けた広告(ターゲット広告)の禁止、3つは、企業が作る製品に健康と安全を第一に考える」というものです。
アメリカでの重要なポイントは、個人のプライバシーデータを集中してターゲティング広告などに利用される問題と、子供の権利保護が適切になされているのかが政治的な焦点になりやすいポイントです。2018年には、当時のフェイスブックがユーザー情報を他のサービスでも利用可能であったことが大きな問題となったことからもわかるように、この点はとてもセンシティブなんです。ただこうした、安全性についての議論はあっても「ChatGPTを規制せよ」という方向まではひとっとびに行っていません。
翌5日、OpenAIは、「AIセーフティへの取り組み(Our approach to AI safety)」という方針をブログにて発表し、バイデン政権が掲げた懸念点に答える文章を発表しています。この発表内容は事前に政権側と調整されていたと考えてよいでしょう。
AIが世界を滅ぼすという考えは、現時点ではアメリカ政府の方針に影響を与えるというところまではいっていないようです。アメリカでは、比較的社会的な焦点になるまではプラットフォームに任せておく傾向が強いため、より大きな具体的な政策として見えるにはまだ初期段階のように見えます。

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