ビル・ゲイツは書簡を一蹴、マスクは「TruthGPT」発表
ただ、この書簡の内容はGPT-4を名指しにしていることもあり、「ChatGPTが技術的に突き抜けちゃったから、みんなで食い止めようとしてる」と見えてしまうこともありますね。
イーロン・マスク自身がOpenAIの取締役たちと揉めて、資金を実質的に引き上げたため、資金繰りに困ったOpenAIがマイクロソフトと提携したという話も暴露されました。「マスクはああ言ってるけど、結局ポジショントークじゃないの」という印象も受けてしまいます。6ヵ月間開発を中止すると言っても、影響を受けるのは事実上OpenAIしかないわけですから、その間に追いかけることができると。そんなのありかよという感じもします。
実際に、マスクは17日に「TruthGTP」と呼ばれるAIチャットボットを発表し、そのサービスを開始していますしね。米FOXニュースのインタビューの中で、「宇宙の本質を理解しようとする最大限に真実を追究するものだ」とぶち上げています。実際、彼自身もこの書簡で開発が止まるとは本気で思っていなかったように思います。
一方、マイクロソフトの創業者のビル・ゲイツは5日、ロイターの取材に答えて一蹴するようなニュアンスのコメントを出していました。マイクロソフトとしてはグーグルに大きな差をつけられるチャンスだからそりゃ当然引きませんよね。ゲイツ自身も自身のブログでAIの可能性と安全性について議論をしたばかりでもありましたし。
ただ、今のGPTの延長線上でAGIができるのかどうかっていうのはちょっと正直よくわからないんですよね。これが一度成立してしまうと、彼らが自分のプログラムを書いて自分で作って人間を出し抜いて、というのはよく言われるシナリオでもあるんですが、本当にできるのかなと。GTP-4に聞くと「そうはなりません」と言っていましたが(笑)。
その一方、OpenAIはGPT-4の論文を通じて、自分たちでどんなデータを収集しているのかを一切明かさないと発表しています。背景としては、競争環境が激しくなっていてキャッチアップされたくないという事情もあると思います。また、OpenAIは裁判も抱えているので、何のデータを使っているかということから訴えられる可能性もあります。そうした批判を不必要に受けたくないというのは本音としてあると思います。
このことから、OpenAIが非常に物事を隠してるように見えてしまっている。もともとNPOとしてそのオープン性を意識させながら、スタートした組織でしたが、利益を出すことに主眼が移るようになるにつれて、企業と変わらなくなってきました。情報をオープンにするからOpenAIだったはずなのに、マイクロソフトとの提携を通じて、独占的な技術提供の約束をしているとも言われており、全部隠してしまったらどこがオープンなんだという話はよく言われるようになっています。

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