春である。桜が咲く。
桜が咲けば、写真が撮りたくなる。
筆者は音楽もやっているのだが、最近できたご縁で、ライブに呼んでいただけることになった。筆者にとっては、ソロで出演するのは初めてのことだ。
せっかくなので、ライブの主催であるシンガーソングライターのはる陽。ちゃんに筆者の自作のウェアラブルロボットを装着してもらって、写真を撮ってZINEを制作することにした。はる陽。ちゃんには、ピンク色のイメージがある。ウェアラブルロボットの外装パネルをラメの入ったピンク色のアクリルに換装することにした。ピンク、ピンクときたら、背景もピンクにしたくなる。ちょうど桜の季節だ。桜を背景に撮影することにした。
キヤノン「EOS 10 QD」で写真を撮る
撮影は筆者だ。筆者は普段、古いフィルムの一眼で撮影している。
EOS 10 QDというキヤノンのカメラで、父親から受け継いだ。
以前もウェアラブルロボットの撮影をしており、三崎港という神奈川県の港でロケ撮影をした。
基本日光頼みの屋外写真を撮るのが好きだ。照明を組むのが得意でないので。
フィルムをたくさん消費するのでフィルム代と現像費がばかにならず、経済的ではないのだが、デジタル写真より筆者としては楽しく撮れるので気に入っている。
この記事では、ウェアラブルロボットのアクリルパーツなどの準備過程と、撮影した写真の中で制作したZINEに入らなかった没写真などを紹介していきたい。
フィルムで撮る過程が好きだ
冒頭で紹介した写真が、今回一番良く撮れた写真だ。ZINEの表紙にした。
真ん中で割って表紙と裏表紙にしたときに、要素がちょうど分散して入るように考えて撮影した写真だ。
筆者はフィルムで撮ったものを写真屋さんで現像してもらう時に、デジタルデータにしてもらう。そのデジタルデータを、Photoshopを使ってレタッチしたり色をいじったりする。
純粋なフィルム撮影ではないのだと思う。
年代の上の方に写真を見てもらうとフィルムなので「懐かしい」というコメントをいただくことが多い。
筆者としてはその時代を知らないので懐かしいという感情は抱かず、時代背景を抜きにしてフィルムの質感が好きで選択している。
デジタルをフィルム風に加工すれば良いのではないかとも言われるが、フィルムで撮る過程はわくわくして好きだ。過程が本物である良さがある。
フィルムの持つ楽しさや質感をツールとして、ハイブリッドで楽しんでいるのだと思う。
考えてみると、デジタル写真は、筆者にとって記録写真の意味合いが強い。もちろん記録でない作品性をデジタルで出す写真家さんはたくさんいるが、筆者にはそれは出せないと思ってしまうのだ。フィルムの方が作品として捉えやすい。それには、写真の時代的背景が絡みそうだ。
ピンク色のウェアラブルロボットを用意
今回、ピンク色に換装したウェアラブルロボット「METCALF clione」を用意した。
ラメの入った濃いめのピンクのアクリルを使用し、はる陽。ちゃんのキャラクター「ぴぴちゃん」のシルエットを切り抜いて柄にした。
レーザーカッターは、秋葉原の「明神下くるーむFACTORY」さんでお借りした。筆者が最近お気に入りのファブスペースだ。
世田谷にあったファブラボの機材が移動しておりファブ機材が使えるだけでなく、プラモデルの組み立てや塗装に適した機材が使える。
このパーツを組み立てて、ピンクのウェアラブルロボットが完成した。
筆者の作るものは青色の印象が強いので、ピンクは違和感がすごくて面白い。
「ふんわり」「強め」2つのコーデでスタイリング
今回、衣装スタイリングも筆者が担当した。
2コーデ組んでいる。
1コーデは、ウェアラブルロボットを装着する用の、白系のふんわりしたコーデ。もう1コーデは、ギャップのある、強めのコーデだ。
すべて筆者の私物だ。思ったよりいいコーデが組めて、普段がんばってかわいい服を買っている自分を褒めたくなった。かわいい服は高いので。
筆者は写真が上手いわけではないが、ロケーションとスタイリングを組み合わせるのはうまくできているのではないかと思う。
以前撮った港の写真だったら、港の船と黒のロリータだったり。
今回は桜と白ふんわりコーデだったり。
写真の腕に自信がないからこそ、他の要素で盛ることに恥ずかしさがないのだと思う。
写真に合わせたエッセイも書いた
桜は咲く時期が限られている。
今回ライブでZINEを発売できるようスケジュールを組んだのだが、桜が咲く時期とライブの日取りが近すぎた。撮影して、次の日には入稿しないと間に合わない。
しかし、フィルムで撮っているからには、撮ってすぐレタッチ作業、という流れはできない。フィルムを写真屋さんに出して、現像を待つ、という時間が発生する。
今回2コーデ撮ったので、コーデとコーデの間に現像に出して、時間をずらすことでなんとか入稿を実現した。
写真だけではストーリーが伝わらないと思い、詩をはる陽。ちゃんにかいてもらい、写真の上に載せることにした。
短時間でこのクオリティの詩を書いてくるはる陽。ちゃんには脱帽である。
筆者も、書くコンテンツを用意したいと思い、エッセイを書き下ろした。
はる陽。ちゃんとは音楽の場で出会ったので、音楽にまつわることを書きたいと思った。
筆者は音楽をやりたいと思い、やろうとしているのだが、ウォッチャーの皆さん(筆者をウォッチしている方々)にも、なんで音楽始めたの?とよく聞かれる。確かにちゃんと言葉にして説明してこなかったなと思い、このタイミングでエッセイに書くことにした。
というか、言葉にしていなかったというより、筆者自身が明確にはわかっていなかったのかもしれない。今回図にして整理しながらエッセイを書いたのだが、その過程でわかることがたくさんあった。詳しくはZINEを参照されたい。
ウェアラブルロボットというフォーマット上で遊ぶのは楽しい
上記はすべて写真集の没カットだ。
撮影当日、晴れてくれたのはありがたかったのだが、日が強すぎてコントラストが強くなってしまったのが問題だった。
むしろ、日の入る屋内の方がきれいに撮れたかもしれない。
レフ板があればいいのかなあ……。今度写真に詳しい人に聞いてみたい。
ウェアラブルロボットというフォーマットの上で、こうやって遊ぶのは楽しい。
また新たなフォーマットを作ってみたいなとも思っているので、今年の夏はそれに挑戦してみようかな。
ライブがそろそろ終わるので、夏にやる展示のことを考えはじめる時期だ。
展示全体のテーマと自分のやりたいこと、やるべきことのバランスをとっていい作品を作りたいと思う。音楽も絡められたらいいなと思う。
またここで報告できたらいいな。
筆者紹介:きゅんくん
1994年東京都出身。
ロボティクスファッションクリエイター / メカエンジニア
高校生の頃に「メカを着ること」を目標にロボティクスファッションの制作を始めた。「人間とメカがゼロ距離で近づいた際に人は何を思い感じるのか?」を明らかにするため、2014年よりファッションとしてのウェアラブルロボットの開発を開始。2018年よりウェアラブルロボットと人のインタラクションについて深めるため修士課程に進学。修了後もATRの連携研究員として、ウェアラブルロボットと人のインタラクションの研究を進めている。 DMM.make AKIBAスタートラインメンバー。
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