可能な限り市販のIPを利用して作られたFSD
ということで長い枕になってしまったが、現状車載の自動運転向けプロセッサーはレベル2~3あたりをターゲットにしたものとなっている。まずFSDの設計目標が下の画像となる。
ここで“Retrofit existing HW2.x vehicles”というのは説明が必要だろう。Teslaは2008年から自動車の発売を開始しており、2014年には最初の自動運転用のハードウェア(HW 1.0)を搭載した。これが利用できるようになったのは2015年10月だ。
2016年にはHW 2.0がリリースされている。このHW 1.0/2.0はNVIDIAのプロセッサーを利用していたのだが、今回発表されたFSDを搭載するHW 3.0から自社設計/自社生産に切り替わった。ここの互換性というのは、まだHW 2.x台を搭載している旧来のTesla車を、HW 3.0にアップグレードすることを想定しているという話である。
そんなFSDは下にある画像の基板で、2つのFSDチップが搭載されている。
ただこの2のチップは冗長構成を取っており、電源やカメラからの入力もやはり冗長構成になっているので、片方のユニットや電源などがダウンしても問題なく処理を継続できるように配慮されているあたりはさすがに自動車向けである。
パッケージは37.5×37.5mmで、2116ボールのBGAと説明されている。
開発期間を短縮するためか、可能な限り市販のIPを利用しており、CPUは2.2GHz駆動のCortex-A72×12、GPUは16コア構成のもの、他にISPやビデオエンコーダー、PHYなども全部市販のIPを利用しており、Teslaが自前で設計したのはNNA(Neural Network Accelerator)とSafety&Securityのユニットのみと言ってもいい。
GPUは公表されていないが、時期および構成を考えるとMali-G71 MP16あたりではないかという気がする。ただ1GHz駆動で600GFlopsと発表されており、微妙に数字が合わない(G71だとスペック上は543.4GFlops)ので、もう少し動作周波数が上なのか、キャッシュなどの関係で性能が上がってるかのどちらかかと思われる。
ちなみにSafetyは2つのFSDを冗長構成(Lockstep動作)させるための制御回路であり、Securityは文字通りセキュリティ対策の部分である。

この連載の記事
-
第852回
PC
Google最新TPU「Ironwood」は前世代比4.7倍の性能向上かつ160Wの低消費電力で圧倒的省エネを実現 -
第851回
PC
Instinct MI400/MI500登場でAI/HPC向けGPUはどう変わる? CoWoS-L採用の詳細も判明 AMD GPUロードマップ -
第850回
デジタル
Zen 6+Zen 6c、そしてZen 7へ! EPYCは256コアへ向かう AMD CPUロードマップ -
第849回
PC
d-MatrixのAIプロセッサーCorsairはNVIDIA GB200に匹敵する性能を600Wの消費電力で実現 -
第848回
PC
消えたTofinoの残響 Intel IPU E2200がつなぐイーサネットの未来 -
第847回
PC
国産プロセッサーのPEZY-SC4sが消費電力わずか212Wで高効率99.2%を記録! 次世代省電力チップの決定版に王手 -
第846回
PC
Eコア288基の次世代Xeon「Clearwater Forest」に見る効率設計の極意 インテル CPUロードマップ -
第845回
PC
最大256MB共有キャッシュ対応で大規模処理も快適! Cuzcoが実現する高性能・拡張自在なRISC-Vプロセッサーの秘密 -
第844回
PC
耐量子暗号対応でセキュリティ強化! IBMのPower11が叶えた高信頼性と高速AI推論 -
第843回
PC
NVIDIAとインテルの協業発表によりGB10のCPUをx86に置き換えた新世代AIチップが登場する? -
第842回
PC
双方向8Tbps伝送の次世代光インターコネクト! AyarLabsのTeraPHYがもたらす革新的光通信の詳細 - この連載の一覧へ
















