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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第711回

Teslaの自動運転に欠かせない車載AI「FSD」 AIプロセッサーの昨今

2023年03月20日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII

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可能な限り市販のIPを利用して作られたFSD

 ということで長い枕になってしまったが、現状車載の自動運転向けプロセッサーはレベル2~3あたりをターゲットにしたものとなっている。まずFSDの設計目標が下の画像となる。

FSDの設計目標。当然ながらHW 2.x台よりも高い性能が求められる

 ここで“Retrofit existing HW2.x vehicles”というのは説明が必要だろう。Teslaは2008年から自動車の発売を開始しており、2014年には最初の自動運転用のハードウェア(HW 1.0)を搭載した。これが利用できるようになったのは2015年10月だ。

 2016年にはHW 2.0がリリースされている。このHW 1.0/2.0はNVIDIAのプロセッサーを利用していたのだが、今回発表されたFSDを搭載するHW 3.0から自社設計/自社生産に切り替わった。ここの互換性というのは、まだHW 2.x台を搭載している旧来のTesla車を、HW 3.0にアップグレードすることを想定しているという話である。

 そんなFSDは下にある画像の基板で、2つのFSDチップが搭載されている。

FSD。車にはむき出しではなく、液冷のユニットに囲まれる形で実装される

 ただこの2のチップは冗長構成を取っており、電源やカメラからの入力もやはり冗長構成になっているので、片方のユニットや電源などがダウンしても問題なく処理を継続できるように配慮されているあたりはさすがに自動車向けである。

水色と青色の2系統で動く格好。左端の上下のコネクターが冗長電源のものである

 パッケージは37.5×37.5mmで、2116ボールのBGAと説明されている。

ダイは14nm FinFETプロセスで60億トランジスタ/2億5000万ゲート。ダイサイズは260mm2と発表されている

 開発期間を短縮するためか、可能な限り市販のIPを利用しており、CPUは2.2GHz駆動のCortex-A72×12、GPUは16コア構成のもの、他にISPやビデオエンコーダー、PHYなども全部市販のIPを利用しており、Teslaが自前で設計したのはNNA(Neural Network Accelerator)とSafety&Securityのユニットのみと言ってもいい。

FSDの内部構成

 GPUは公表されていないが、時期および構成を考えるとMali-G71 MP16あたりではないかという気がする。ただ1GHz駆動で600GFlopsと発表されており、微妙に数字が合わない(G71だとスペック上は543.4GFlops)ので、もう少し動作周波数が上なのか、キャッシュなどの関係で性能が上がってるかのどちらかかと思われる。

 ちなみにSafetyは2つのFSDを冗長構成(Lockstep動作)させるための制御回路であり、Securityは文字通りセキュリティ対策の部分である。

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