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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第709回

電気自動車のTeslaが手掛ける自動運転用システムDojo AIプロセッサーの昨今

2023年03月06日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII

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 今回取り上げるのはTeslaのDojoである。そもそもTeslaの車と言えば電動車であることと、他社に先駆けて自動運転の仕組みを取り入れていることが特徴なのはご存じのとおり。ついでに言えばその自動運転のシステムを自社で構築していることも特徴的である。

 下の画像は2019年に開催されたPytorch DevCon 2019でTeslaのAndrej Karpathy博士(Sr Director of AI:現在はTeslaから離職した模様)が示した、Teslaの自動運転に関わるスタックの様子であるが、ハードウェアとしてTeslaの車に搭載されるのは、上から2つ目の“Inference @ FSD Computer”である。

Karpathy博士の講演そのものはYoutubeで見られる

 FSDは“Full Self Drive”の略で、このチップ自身もなかなか壮絶な代物で、当然Teslaの内製である。このFSDの詳細は別の機会に紹介するとして、右下に謎の“Dojo Cluster”というコンポーネントがあるのがわるだろうか?

 Teslaの自動運転車の場合、走行時にその走行の様子を記録したデータ(含ビデオデータ)を、常にTesla社に送信している。Teslaはそのデータを基に、より良い自動運転のアルゴリズムを常に改良し続けている。この改良を担うのがDojoだ。

 要するにFSDは自動運転のアルゴリズムを使って推論を行ない、それを基に運転操作をする。一方でその際に得られた運転データを利用して学習し、より良い自動運転アルゴリズムを開発する。この学習を行なうためのシステムがDojoである。

 このDojoの詳細が公開されたのは昨年8月に開催されたHotChips 34である。実はこの時点でもまだDojoはフル稼働していない。ではDojoが完成するまでの間はどうしていたか? というと、NVIDIAのA100ベースのスーパーコンピューターを構築し、ここで学習していた。

 下の画像はこのスーパーコンピューターのプレスリリースでの写真だが、A100を5760枚集積したクラスターでこの学習処理をしていた。

これもまたKarpathy博士とのZoom会議で示されたスライド。出典はCVPR'21の“Workshop on Autonomous Driving”だが、スライドの下には“(next up:Dojo)”とあるものの、Dojoの話はここでは出てこない

 ただこのクラスターを利用しても、一部のアルゴリズムでは学習に1か月近くを要するものがあったらしい。Dojoの目的は、これを1日に短縮することである。つまり現在のA100ベースのクラスターよりも30倍高速なシステムを構築するというのがDojoのターゲットとなる。

 さてそのDojoであるが、基本となるタイル(Compute Die+I/O Die)の構成はCelebrasのWSEを連想させる、巨大なウェハーサイズの構造である。

個々のCompute Dieの内部構造は後述。WSEと異なり、Dojoでは良品のダイのみを選別してタイルを構成する

 これだけでも大概であるのだが、このウェハーサイズのタイルは、それぞれ個別にパワーデリバリーと冷却をワンパッケージにした形で構成される。

個々のタイルあたり15KWだから壮絶である。構造的には、昔のIBMのZシリーズのプロセッサーモジュールを思い出す

 こんな構造になるから、当然液冷になるのだろう。ちなみにTeslaによれば、1個のタイルあたりで9PFlops(BF16/CFP8)の演算性能を実現、オンタイルメモリーは11GBのECC付きSRAMで、帯域はオンタイルメモリーのみで10TB/秒、オフタイル(つまりタイル間でのメモリー転送)を含めると平均36TB/秒とされている。

 ただこのコンピュートタイルは純粋に計算をするだけの処理なので、外部とのI/Fがない。これを担うのが、Dojo Interface Processorである。

DIPはDojo Interface Processorの略。1つのコンピュートタイルにDIPカードが5枚接続される

 こちらは外部の共有メモリーと、ネットワーク/ホストとのI/Fを担う格好である。1つのDIPカードにはDIPが2つ搭載され、それぞれのDIPにはHBM2が2つづつ接続されている。

 このDIPの中身は明確にはなっていないが、下の写真を見る限りはArmベースのSoCでイーサネットを内蔵したチップのようだ。

HBM2は8GB積層がDIPあたり2つで16GB、トータル32GBという計算になる

 外部I/FはPCIe Gen4 x16で、これがボード上のPCIe Switch経由につながり、最終的にホストに接続される構成らしい。ちなみにコンピュートタイル自身も相互接続可能になっており、それぞれ9TB/秒で接続される。

要するに各タイルには9TB/秒のリンクが4対用意され、タイル同士を接続することも、DIPカードを接続することも可能というわけだ

 ここで少しおもしろいのが、コンピュートタイル同士の接続とDIP経由の接続の使い分けである。コンピュートタイル同士はけっこうな数の接続が可能であるが、規模が大きいと当然その際の通信の遅延が大きくなる。

縦に30もつなぐ形になるとも思えないのだが。あとHyperCube的に、一番上と一番下のタイルをつないでしまえばHop数の最大値は半分に減る気もするのだが、そういう構成はできないらしい

 その場合、DIP経由で直接Point-to-Pointで通信を行なうことで、Hop数を大幅に減らせることになる。TeslaはこれをZ-Plane Topologyと呼んでいるが、要するに相手との距離次第でコンピュートタイル同士の接続とDIP経由の接続を使いわけすることで、遅延を大幅に減らせるというわけだ。

ただし帯域そのものはコンピュートリンク同士の接続より当然減るので、そのあたりの使い分け方は難しそうだ

 実際のDojoのシステム全体は下の画像のとおりである。複数のコンピュートタイル同士を相互接続し、その外側にDIPが並ぶ構造だ。これを組み合わせて、1EFlopsの演算性能とオンタイルで1.3TBのSRAM、それに13TBのHBMメモリーが用意される格好になる。

Dojoのシステム。CPU+DRAMというのはホストのCPUのことである

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