エリアLOVEウォーカー総編集長・玉置泰紀の「チャレンジャー・インタビュー」番外編
万博と日本のものづくりがつながる可能性を関西オープンファクトリーフォーラムに見た
近畿経済産業局は2023年3月13日、大阪市都島区のオープンイノベーション施設であるQUINTBRIDGE(クイントブリッジ)で、関西オープンファクトリーフォーラム Vol.14「地域一体型OF×EXPO2025大阪・関西万博の可能性」を開催した。近畿経済産業局は、関西各地に広がりをみせる地域一体型オープンファクトリーの「要素化」「可視化」「活性化」に取り組んでおり、地域を越えた緩やかなネットワークの形成に向けた支援を行なっている。全国各地での地域一体型オープンファクトリーの先駆的事例を知る機会となり、地域の産地で躍動する企業等がクロストークを繰り広げることで、これからオープンファクトリーに取り組みたいと考えている企業や自治体、支援に回る金融機関などに、多くの気づきにつながる刺激を生む機会になっている。
「地域一体型オープンファクトリー」は、2025大阪・関西万博を控える関西において特に広がりを見せており、今回のフォーラムイベントでは、地球規模のさまざまな課題に取り組むために、世界各地から英知が集まる「大阪・関西万博」を地域一体型オープンファクトリーのキーパーソンを通して掛け合わせることで、「万博プラスワン」の可能性があるのか探り、キーパーソンの感性を通して気づきに触れる機会として開催された。
「地域一体型オープンファクトリー」とは、ものづくりに関わる中小企業や工芸品産地など、一定の産業集積がみられる地域を中心に、企業単独ではなく、地域内の企業等が面として集まり、地域を一体的に見せていく試みだが、2025年の万博で魅せる「日本」はまさに、その「ものづくり」の部分ではないのかと訴えた。
国内でも最大級の地域一体型オープンファクトリーを運営する新潟県の「工場の祭典」と福井県の「RENEW」のキーパーソンを迎えたフォーラムに、筆者も、ものづくりというレイヤーを見据えた多層レイヤーの可能性=メタ観光について語り、クロストークで意見を交わした。
メタ観光の多層レイヤーの楽しみ、シビックプライドを地域一体型オープンファクトリーに感じた
「オープンファクトリー」は、ものづくり企業が生産現場を外部に公開したり、来場者にものづくりを体験してもらう取組のことを指し、これまでも、工場見学やツアーといった形態で実施されてきた取組をエリアの様々な企業が一体となって取り組んだ発展形。 近年では、ものづくりに関わる中小企業や工芸品産地など、一定の産業集積がみられる地域を中心に、企業単独ではなく、地域内の企業等が面として集まり、地域を一体的に見せていく「地域一体型オープンファクトリー」へと進化をみせている。
地域一体型オープンファクトリーは、開催する地域社会(住民)にとっては、自らのまちの魅力や奥行きを再認識する契機となり、企業にとっては、地域社会と新しい接点を持つことで、 地域の企業としての意識(ローカル・カンパニー・プライド)の芽生えやイノベーティブな着想を得る機会につながっていく。NHKの朝の連続テレビ小説「舞いあがれ!」(2022年10月3日〜2023年3月31日)でも、東大阪でのオープンファクトリーが取り上げられ話題になった。
筆者が理事を務める一般社団法人メタ観光推進機構では、メタ観光を「地域の文化資源・魅力の多様な同時に一度では見れない価値(アニメ聖地やインスタ映え、微地形等)を多層レイヤーのオンライン地図に可視化して楽しむ新しい観光」と定義しているが、地域一体型オープンファクトリーはまさに、その地域の見えていなかった価値を可視化した新しいレイヤーを作った、と言える。
メタ観光は、名所・旧跡を回ったり、アニメやドラマの聖地を巡るという一つのレイヤーにとどまらず、様々なレイヤーがその土地に重なっていることを楽しむ観光で、そういったことを多層的に知ることで、より深く地域への愛を改めて感じるシビックプライド醸成が大きなテーマなのだが、地域一体型オープンファクトリーが開く世界はまさに、地域の人たちやものづくりの歴史がつながる実感が持てるうえに、その技術や製品がほかの土地へ、さらには世界に広がっていく可能性がある。
2025年大阪・関西万博の可能性もそこにある。新たな関西の魅力を発信する手段としての地域一体型オープンファクトリー。関西各地に広がる地域一体型オープンファクトリー内でどのようなイノベーションが生まれているのか、その要因を調査するとともに、各キーパーソンのネットワークを構築・活用することで、 中小企業が主役となる地域一体型オープンファクトリーと外部資源(大手企業、ベンチャー企業等)との協業可能性を検討することを目的として調査を実施するなど、様々な角度から取組が始まっており、夢洲の万博会場やバーチャル万博で、その素晴らしさを広める。日本の持つ魅力の核心はそこにこそある。
フォーラムでは以下のプレゼンが行なわれた。
●株式会社玉川堂番頭の山田立氏
「燕三条は工場で人をつなげる」
山田氏は、百貨店勤務を経て2010年に玉川堂に入社。営業・企画全般を担当し、鎚起銅器の技術の伝承に力を注ぐ。2016、2018、2021年には「燕三条 工場の祭典」の実行委員長も務めた。2018年に産業観光を推進する目的で株式会社つくるを設立、燕三条地域全体の産地の発展に尽力している。
●合同会社TSUGI代表/クリエイティブディレクターの新山直広氏
「来たれ若人、ものづくりのまちへ。「EtoC」で描く未来の地域」
新山氏は、合同会社TSUGI代表/一般社団法人SOE副理事/RENEWディレクター。2009年福井県鯖江市に移住。鯖江市役所を経て2015年TSUGI LLC.を設立。「創造的な産地をつくる」をビジョンに、地域特化型デザイナーとしてSAVA!STORE、RENEWの運営など、ものづくり・まちづくり・観光分野を横断し、地域に必要な活動を行なっている。
●公益社団法人2025年日本国際博覧会協会・機運醸成局企画部・審議役の今野水己氏
2025年大阪・関西万博への参加の可能性。
●株式会社オカムラ関西支社・WORK MILLコミュニティマネージャーの岡本栄理氏
2025年に開催される大阪・関西万博の認知拡大と、さまざまな企業やクリエイターを結びつけ、関西全体を盛り上げる相乗効果を生むことを目的に活動する有志団体「demo!expo(デモエキスポ)」が取り組む「EXPO酒場」は関西から全国へ広がりつつある。
●近畿経済産業局・イノベーション推進室総括係長の津田哲史氏
今回のフォーラムを総括してコメントをもらった。
「今回の開催で、関西だけでなく、各地のOFと万博の繋がり方をそれぞれが具体的にイメージ出来るようになったことが大きな収穫です。
夢洲の会場と各地のOFはどうしても物理的距離が存在するため、お互いを知らないと『なんとなく連携できそう?』という想像の域を脱することは非常に難しいですが、セッションを通して互いの知ったことで、『これは連携できそう!』という具体の言葉となって表れたと思われます。
万博まであと2年と少し。今回の交流をきっかけとして、開催年には互いの魅力を活かし合う、オールジャパンでの万博機運が醸成されていくよう、当局としても各地・他機関との連携を深めていきたいと思います」
■近畿経済産業局の公式サイト
https://www.kansai.meti.go.jp/1-9chushoresearch/openfactory/openfactory.html
全国初!国内の地域一体型オープンファクトリーを取りまとめた事例集を公表
近畿経済産業局では、全国各地で広がりを見せる地域一体型オープンファクトリーについて、39事例を因数分解し、どのようなキーパーソンたちが躍動し、どのようなイノベーションが生まれているのかを「OPEN FACTORY REPORT 1.0」(リンクから全文を見ることができる)としてとりまとめた。
「OPEN FACTORY REPORT 1.0」は、全国のオープンファクトリーの取組を一覧できる全国初の資料。各地の取組の特色やエッセンスに触れ、その魅力を存分に感じることができる。
2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)は、万博を彩る催事について、その方向性を示す「催事コンセプト」を公表
公益社団法人2025年日本国際博覧会協会は2023年3月14日、2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)のテーマ「いのち輝く未来社会のデザイン」を多彩な方法で表現し、万博を彩る催事について、その方向性を示す「催事コンセプト」を小橋賢児・催事企画プロデューサーから公表した。関西オープンファクトリーフォーラムと万博をつなげる可能性も、この催事にあるかもしれない。
万博における催事には、開会式などの「公式行事」、協会が主導的に企画して万博のテーマや催事コンセプトを発信する「主催者催事」、企業・団体・自治体等の参加による「参加催事」がある。発表では、「主催者催事」について、コンセプトを発表するとともに、企業・団体からの協賛募集も開始する。
<大阪・関西万博催事コンセプト>
その一歩が、未来を動かす。
大阪・関西万博のテーマである「いのち輝く未来社会のデザイン」を体現したコンセプト。このコンセプトのもと、万博へ参加する人たちに、「未来にいのちをつなぐ一歩」のきっかけをつくる。
<主催者催事コンセプト>
地球共感覚 地球とつながる。未来とつながる。
共感覚とは、一般的にひとつの感覚刺激に対して、異なる種類の感覚も感じる知覚現象のこと。それは太古から続く自然=地球とのつながりの中で、本来誰もが持っていた感覚なのかもしれない。主催者催事では、そうした地球とつながる感覚の拡張体験の提供に挑戦していく。
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