エリアLOVEWalker総編集長・玉置泰紀の「チャレンジャー・インタビュー」番外編

話題の新名所、静嘉堂@丸の内の新美術館記念展Ⅱは七福うさぎがやってきた

文●玉置泰紀(一般社団法人メタ観光推進機構理事)

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 静嘉堂@丸の内 (東京・丸の内、明治生命館1階)では、静嘉堂創設130周年・新美術館開館記念展Ⅱ「初春はつはるを祝う ―七福うさぎがやってくる!」を開催中(2023年1月2日〜2月4日)。同美術館は静嘉堂文庫美術館(世田谷区岡本)の展示ギャラリーとして2022年10月に稼働を開始した。美術館が1階に入っている明治生命館も重要文化財だが、元々の建物を生かしたユニークな美術館の新年最初の展覧会を見てきた。

 静嘉堂@丸の内が開館して初めての春を迎える令和5年は、同美術館の基盤を作った岩崎小彌太(三菱第4代社長、1879~1945)の還暦から7回りした卯年にあたり、その記念として祝賀の人形たちを展示するとともに、中国・日本の寿ぎの絵画、新春にふさわしい宴の器まで、吉祥性にあふれる作品を一挙公開する。

酒井抱一『絵手鑑のうち 富士山・波』(江戸時代・19世紀、絹本着色/紙本墨画)。空は濃紺、旭日は朱、白い富士山を幾何学的に構成している。抱一は姫路藩主の酒井家に生まれ、江戸琳派の祖とされる。

静嘉堂@丸の内の各展示室をつなぐホワイエ部分

兎の冠を戴く総勢58体の御所人形行列は壮観

 メインの展示である、福をはこぶ七福神と童子たち、総勢58体の兎の冠を戴く御所人形の一大群像は、卯年生まれの岩﨑小彌太の還暦を祝って、夫人の孝子さんが京都の人形司・ 丸平大木人形店の五世 大木平藏に 制作させたもの。衣装や持ち物、乗り物など、すべてが木彫彩色で精巧に仕上げられた本作は、昭和14年(1939年)8月に、東京麻布の鳥居坂本邸における還暦祝賀会で披露された。布袋と弁天は、それぞれ小彌太と夫人の姿を写したともいわれ、鯛車を曳き、楽器を奏で、餅をついて、寿ぎの宴をくりひろげている。

京都の人形司・ 丸平大木人形店の五世 大木平藏による、卯年生まれの岩﨑小彌太の還暦祝いの一大群像。人形数58体61人。長さ10メートルに及ぶ。五世 大木平藏が職人を指揮した御所人形は衣装や持ち物もすべて木彫りで、胡粉を塗り重ねて入念に下地を施したのち彩色されて仕上げられている

■ほかの注目出展作品

惺入(樂家13代)『樂兎香合』(大正~昭和時代・20世紀)

 惺入による干支の鳥獣をかたどった香合のシリーズの一作。素地の白土がそのまま生かされており、目と耳の内側は黄土を塗って赤く仕上げてある。昭和初期の作品と考えられる

横山大観『日之出』(大正~昭和時代・20世紀、絹本着色)

 松を頂く山々が雲海に浮かび、その彼方に日が昇る。雲や湿潤な空気感は、大観ならではの朦朧体による描写。大観の円熟期の作品。

西村道仁『波兎文撫肩平佂』(桃山時代・16~17世紀)

 謡曲「竹生島」の一節から波兎文を表す釜は、江戸初期まで多く制作された。京の釜師、大西家10代の浄雪に作者と極められた西村道仁は、室町末期〜桃山時代の代表的な釜師。

■曜変天目(稲葉天目)は見逃せない

 国宝7件を含む、約6,500件の東洋古美術品を収蔵する静嘉堂文庫美術館だが、なかでも、完全な形では世界に3件しかない中国・南宋時代の国宝、曜変天目(稲葉天目。建窯。南宋時代12〜13世紀。施釉陶器)は人気を集めている。曜変天目とは、中国の福建省建陽県水吉鎮付近にあった窯、建窯の黒釉茶碗で斑紋の周囲に青色を主とする光彩があらわれたものをいうが、完全な形で現存するものは、国内に伝存する稲葉天目を含めて3点のみ。本来、「曜変」は「窯変」を意味し、しだいに輝きを表す「曜」の字が当てられるようになった。本作は、光彩が「見込み」全体に鮮やかに現れた一碗。江戸幕府第3代将軍、徳川家光から春日局に下賜されたといわれ、後に淀藩主の稲葉家に伝わったため「稲葉天目」といわれる。1934年、岩﨑小彌太の所有となった。

 年内は、ほぼ展示される予定。貸し出しなどで、見られない時期もあるかもしれないので、要確認。

■「ほぼ実寸の曜変天目ぬいぐるみ」が大人気

 株式会社Eastが、静嘉堂@丸の内のオープンに合わせて制作したミュージアムグッズで、同美術館のミュージアムショップで販売している。5800円。本物を手に取ることができないため、布で実寸大のぬいぐるみに再現した。発売以来、SNSで大人気となり、品切れが続いている。取材時(2022年1月10日)に、ショップに聞いたところでは、まだ入手のめどが立っていないとのこと。これは欲しい!

■ミュージアムグッズも充実

 「ほぼ実寸の曜変天目ぬいぐるみ」以外にもセンス抜群のグッズがそろっている。

■静嘉堂@丸の内とは

 静嘉堂は、三菱の創業者である岩崎彌太郎の弟、岩﨑彌之助(1851~1908、三菱第二代社長)と岩﨑小彌太(1879~1945 三菱第四代社長)の父子二代によって創設・拡充されたコレクションで、国宝7件、重要文化財84件を含む、およそ20万冊の古典籍(漢籍12万冊・和書8万冊)と6,500件の東洋古美術品を収蔵している。「静嘉堂」の名称は中国の古典『詩経』の大雅、既酔編の「籩豆静嘉へんとうせいか」の句から採った彌之助の堂号で、祖先の霊前への供物が美しく整うという意味。

 静嘉堂文庫は、1892年(明治25)東京駿河台の岩﨑彌之助邸内に創設され、次いで小彌太が高輪邸に文庫を移設したが、1924年(大正13)に、小彌太は父の17回忌に玉川霊廟(ジョサイア・コンドル設計)の側に現在の文庫(桜井小太郎設計)を建設した。その後、1992年(平成4)4月、静嘉堂創設100周年を記念し、静嘉堂文庫美術館を新設。創設130周年の2022年(令和4)10月に満を持して、岩﨑彌之助が美術館建設を願っていた東京丸の内の、重要文化財・明治生命館1階にて展示活動を始めた。

■展覧会概要

会期
2023年1月2日〜2月4日
休館日
月曜日、1月10日
開館時間
10:00 – 17:00 (入館は16:30まで)
金曜日は18:00 (入館は17:30)まで
会場
静嘉堂@丸の内 (明治生命館1階)
入館料
一般 1500円
大高生 1000円
障がい者手帳を所持する人(同伴者1名・無料を含む) 700円
中学生以下 無料

■公式サイト
https://www.seikado.or.jp/exhibition/current_exhibition/

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