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LINE WORKS DAY 23で聞いた「愛があるからリーダー」

まとめない、引っ張らない TEAM NACSリーダー森崎氏が考えるリーダーとは

2023年03月13日 09時00分更新

文● 柳谷智宣 編集●MOVIEW 清水

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 2023年2月9日、「LINE WORKS DAY 23」がWITH HARAJUKU HALLにて開催された。SESSION 1では、TEAM NACSを率いる森崎博之氏が登壇。フリーアナウンサーの進藤晶子氏との掛け合いで、「TEAM NACS流 リーダーの「いい仕事」」というテーマで軽妙なトークで盛り上がった。今回はそのレポートを紹介する。

「TEAM NACS流 リーダーの「いい仕事」」に登壇した森崎博之氏(右)。進行はフリーアナウンサーの進藤晶子氏(左)

どんなことがあっても、続けていればいい

 TEAM NACS(チーム・ナックス)は、森崎博之氏と安田顕氏、戸次重幸氏、大泉洋氏、音尾琢真氏の5人による演劇ユニットだ。北海道学園大学の先輩・後輩で、1996年に「LETTER~変わり続けるベクトルの障壁~」のために結成された。森崎氏と安田氏の大学卒業時に一度解散したのだが、1997年に再結成。2004年には「LOOSER~失い続けるアルバム~」で初めての東京公演。2021年には「マスターピース~傑作を君に~」を上演し、千秋楽でネット配信され、ライブビューイングも合わせて10万3000人を動員したという(以下、敬称略)。

進藤:演劇の枠を超えた動員数のように思います。今、その5人が集まった本公演は、日本一チケットが取れない舞台と言われています。森崎さんは、今年、27年目を迎えたTEAM NACSを率いてこられたリーダーです。やっぱり北海道でのお仕事が多いのですか?

森崎:僕は他の4人と違って、北海道の札幌に家を建てて、家族5人で暮らしています。やっぱり居心地がよくて、ずっと札幌からは出ないつもりです。1分でも多く、北海道の空気が吸っていたいですね。

進藤:いろんなお仕事されてますけど、農業に関する番組「あぐり王国北海道NEXT」は北海道放送で放送されて、今年で15年目ですね。

森崎:間もなく700回を迎えます。長寿番組というのが、まずすごいのですが、もっとすごいのは北海道に700も農業のネタがあるっていうことですね。

進藤:やっぱり食の宝庫ですね。番組ではSDGsとかスマート農業を扱っていらして、LINE WORKSも農業の分野で活用されてるらしいですね。

森崎:農業は高齢化とかいろいろな問題がありますけども、IT技術はその課題を打破してくれる手段として非常に有効だと思います。

進藤:TEAM NACSは27年目に入られたということですが、どうですか、振り返ってみて、あっという間ですか、やっと27年ですか?

森崎:どっちも思うな。人から27年目ですね、と言われたら、びっくりします。ただ、自分では、いろいろ重ねてきたなとも思います。27年経っても、僕らは大学の先輩、後輩です。(学生の頃は)部室でずっと帰らずにずっと何の用もないのに、ずっと部室にいて5人でバカ話していました。

今はその時とは違って、それぞれ家庭を持って、あまり会話もないですけど、そんな中でもね、ふとした時に、その部室の雰囲気に戻るんですよ。

進藤:「継続」が1番大変だと、しみじみ思うんですけれど、27年も長く続いた理由は何ですか?

森崎:おっしゃる通り、続けることがすごく大変なことですよね。それぞれの私たちのステージに沿って付き合い方は変化しました。大学の頃は先輩、後輩ですから、けっこう、私はいばっていたと思います。TEAM NACSは僕が大学を卒業する時に1回解散していて、また復活して5人でやるぞ! という時は、私はかなり旗を振って、牽引していました。

今はそうじゃなくて、なるべく波風立たないように、1歩引いたとこから俯瞰で見ているような感じの関わり方です。ステージによって、付き合い方は変わると思いますが、大事なことは続けることですから、どんなことがあっても、続けていればいいなと僕は思ってます。

個性的な5人をまとめたことはない

進藤:上手な俯瞰の仕方って、コツがあるんですか。

森崎:個性的な5人をよくまとめられますね、と言われます。申し訳ないですけど、一度もまとめたことはないんです。まとめる、ということがあまりいいことだとは思ってないです。5人が5人、それぞれの正論があります。それぞれがいい意見を持ってるのに、ひとつに絞るっていうことを、私はあまりいいとは思わないです。

うちの中で引っ張る存在は他にいますし、すごいやつもいる。だから、リーダーが4番で、ピッチャーで、2刀流で足も速くて、みたいな必要はない。それぞれに持ち場がある、居場所があるという方が、僕は集団が長持ちすると思ってます。だから、僕はまとめない、引っ張らない、すごくないリーダーというものを考えています。リーダーの役割って総務みたいな感じじゃないですかね。

進藤:なるほど。でも、この27年の間にはリーダーとしてどうしたらいいのか悩まれた時期もきっとあったと思います。

森崎:僕は2007年にすごく悩みました。東京で色々と連ドラに出していただいていたんですが、正直ちょっと呼吸がしにくかったんです。でも、みんなも頑張ってるから、俺も頑張んなきゃな、と思っていました。その頃はリーダーなんだから、引っ張らなきゃ、すごくなきゃって思っていました。リーダーという肩書きに縛られていたんです。

ちょっとこの仕事、俺どうなのかな、なんて、ちょっと本気で思ってたことがありました。その時、うちの現社長が北海道で農業の仕事はどうだ、って言ってくれましてね。あぐり王国北海道NEXTっていう番組が2008年にスタートしました。その時、私は北海道に両足をつけてやっていれば、なんか呼吸がしやすいぞ、となりました。

みんなと同じ方向に向かっていくより、1人違う方に行った方が、5人で描く5角形って大きくなるのではないかなと。そのうちメンバーもね、それぞれ自分の得意分野見つけて、方向性がちょっとずつ大きい方向に広がった気がします。

その仕事をいただいた時に、僕思ったんです。そうか、内々のリーダーでもいいやって。やっぱり、僕は5人というチームを一番愛する存在になろうと思いました。だから、僕がリーダーにさせてもらってるのは、この5人を愛してるからなんです。

進藤:愛があるからリーダーなんですね。そういう気持ちでいらっしゃるからこそ、5人の皆さんそれぞれにチームの活動もされるし、個人の活動も自由に羽ばたいて、今があるっていうことですね。

森崎:たとえば、会社のリーダーである社長は、やっぱりその会社のことを一番に愛してる人がなるべきです。家庭で言うと、家庭のことを一番に愛してる人。だから、俺はチームのお母さんになろうと思いました。お母さんって、家庭のこと愛してるじゃないですか。

全員が80歳になった2056年に解散したい

進藤:TEAM NACSはいろいろな偉業を成し遂げていますが、この先どういう風にしていこうみたいな話は、5人でなさるんですか。

森崎:次の本公演をどうしようか、という目先のことは話しますが、将来のことはほとんど話しません。でも、僕はこういう質問を受けることも多いから、勝手に思ってることがあります。

僕ら1回解散しているんですが、次に解散するのは2056年って言っています。1996年結成なので60周年になる2056年は一番年下の音尾琢真が80歳になるんです。そこで、5人並んだ舞台の上で、本日のご来場ありがとうございました、って頭下げて、なんとなく解散したいです。全員が80歳になった、というゴールを僕の中では考えています。その道が険しくても、なんとか5人でそのゴールまで行こうと思っています。

たとえば、今度は動員数20万人を目指すとか、ブロードウェイの海外公演をしようとか、そういう目標とかもあるのかもしれない。でも、私ちょっと興味がなくて、そんなことよりも、1番困難な目標「続ける」をTEAM NACSでずっとやりたいです。どんな手を使っても2056年の目標まで行こうという思い、私をリーダーにさせてくれるのかもしれません。

進藤:大きい目標を決めて、どんな道を辿っても、そこに辿り着くっていうことですね。

森崎:そうですね。本当にそう。やっぱり5人で到達するというゴールさえあれば、自分がリーダーとしていばり続けられる感じがします。

進藤:今日のテーマにつながりますね。大学のサークルで繋がって、そこからいろんな活動が始まって、皆さんのいい仕事になる。森崎さんがチームで、繋がったな、今俺たちいい仕事してるなって思う瞬間ってどんな時ですか

森崎:TEAM NACSでは、間違いなく本公演ですね。舞台の上です。私たちは、そこに向かって一生懸命で協力し合うのが、たまらないからやっています。こっちを見てくださってる人が、みんな笑顔で見守ってくれていると、今日もいい仕事しているなと思えます。

LINE WORKSの皆さんも、3年ぶりの開催だとお聞きしました。ようやく今回、有観客でやるので、すごく大変な準備もあったし、すごく今日うれしいと思います。関係者の皆さんも、すごく今日の開催を喜んで、張り切ってやっているっていう感じがあるじゃないですか。そこに私も、その熱意みたいなものに乗れたら、これ間違いなくいい仕事しているなと思います。つながっているし、愛もあります。

進藤:今日はリーダー論っていうことで、いろんなお話を伺わせていただきました。最後に、皆様に何かメッセージいただいてもよろしいですか。

森崎:特別なことを申し上げたつもりはなくて、僕らって皆、実は何かのリーダーですよね。違いなく自分の人生のリーダーであるし、たとえば、会社というグループのリーダーだったりね。愛を持ってないとリーダーは大変です。自分と向き合う時もそうです。やっぱり、自分のことを愛していないと、なかなか大変です。

僕はすごく愛情というか、懐を広げて、集団や個人に向き合った時に、リーダーとしてすごく楽になった、という経験があります。何かの参考にしていただけたらうれしいです。

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