普段は音もなく走り
スポーツモードで本来の姿を見せる
それでは走らせてみよう。フロントドアウィンドウに貼り合わせガラスを用いていること、そしてEVということから、静粛性はめっぽう高いのが印象的。あまり正しい表現でないことを承知の上で言えば、音もなく景色が流れる様子は気味が悪いほどだ。
足回りはアウディにしては硬めで、スポーティー車両なのかと錯覚するほど。極言すればID.4と似ている。ゆえに、ハンドリングもID.4と同じフィールだったりする。ちなみにタイヤはハンコック。これもまたID.4と同じだ。
ではアウディらしさはどこにあるのか? というと、SPORTモードで、その姿を現す。怒涛の加速は、まさにワープ体験といったところ。とても200PSそこそこのクルマとは思えないのは、モーターゆえのトルクの立ち上がり方と、RRという駆動レイアウトによるトラクションのかかりの良さゆえだろう。
大型SUVのe-tronと似ているのはイイモノ感。とにかくイイ、という言葉が口をつぐんでくる。不満を言う方がどうかしている、とさえ思えるほどで、不満点を見出そうとすると「だったらアウディではなく、そちらをお買い求めください」と言われてしまうだろう。驚くほど高い完成度に、ただただ圧倒されてしまった。さすがアウディ、恐るべしである。
インフラ事情も含めて
アウディは日本でEVを推進する
試乗後、アウディ・ジャパンのブランドディレクターを務めるフォルクスワーゲングループジャパンのマティアス・シェーパース代表取締役社長のプレゼンテーションを聞いた。そこにはアウディのEVに対する不退転の決意を感じた。
「日本メーカーは、カーボンニュートラルという問題に対して、様々な方法を模索している。それは大切なことだ。だが、アウディはEVで行くと決め、そこに邁進する。そしてプレミアムEV市場でトップを取る」。なかなか言える話ではない。経済紙の記者なら「日本のEV化は遅れている」という話も含めて、喜んで記事化することだろう。
とはいえ、優れたEV車を作っても充電できなければ意味はない。マティアス・シェーパース氏は、日本のインフラ事情についても語る。「現在、日本の急速充電機の多くは50kWh止まりです。いまだ20kWhなどの充電機が多い。それらは本当に急速充電と言えるのでしょうか」。いくらバケツが大きくても、蛇口から出てくる水の量が少なければ、いつまで経ってもバケツに水は貯まらない。90kWh級の急速充電機は、今後必要不可欠となる。だが一向にこの数は増えない。
「私たちは全国のディーラーに90kWh級の急速充電設備を導入していくとともに、ポルシェ、VWのディーラーに設置している急速充電機を使えるネットワーク「プレミアム チャージング アライアンス」を立ち上げました」。このプレミアム チャージ アライアンスは日本独自のもの。ドイツでは行なっていない。
「日本には日本の事情があります。単純に欧米と同じ戦略を取るわけにはいきません」。これに関しては全面的にその通りだ。単に欧米がEV政策に舵を切っているからといって、インフラが整っていない日本も欧米と同じ速度でやっていいのか? という思いを抱いていた。それゆえ輸入車の販社同士でネットワークを構築しようという考えは、同じVWグループだからできる話とはいえ、実に素晴らしい取り組みである。その数は圧倒的なものになるだろう。
また、独自の社内制度によって、顧客が抱くEVへの不満を解消する販売員を増やしていくという。ソフトとハードの両面で顧客満足度をあげていく。プレミアムブランドならではの考えだ。
アウディは今後も魅力的なEV車を出していくとコミットしている。魅力的なクルマを作るとともに、インフラも整備していくというアウディにこれからも注目していきたい。

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