あのクルマに乗りたい! 話題のクルマ試乗レポ 第306回
アイドルはFIAT 500との甘い生活を夢見るか? FIAT 500 TwinAir Dorcevitaレビュー
2023年02月19日 15時00分更新
何も足さない、何も引かない運転席
運転席に座ると「どこかレトロな感じですね」というのが第一印象。そしてハンドル周りを見て「日本車と違い、結構アッサリしていますね」というように、ボタン類の少なさが新鮮のようです。ちなみに「運転支援はバックセンサーのみ」「バックカメラはルームミラーに小さく映る」「ヘッドライトは非オート」でして、「アラウンドビューモニターって何ですか?」「高速道路での同一車線云々って何それ美味しいの?」と、イマドキの軽自動車では当たり前となりつつ機能は一切ありません。普通なら「ないの?」と選択肢から外れるのですが、FIAT 500だと「別にイラナイよね」と思えてしまうから不思議。そう、カワイイは正義なのです。
ナビはスマホをつなげてのディスプレイオーディオ方式。簡単につながりますし、機能面で大きな不満はありませんでした。画面はちょっと小さいように思えますし、文字が見づらい時もありましたが、画面を見続けながら運転するわけではないので、これでよいと思います。それに大きなディスプレイは、このクルマの世界観と合わないような気がします。
独特の操作性に戸惑うものの
2気筒エンジンの走りは爽快
それでは、ゆみちぃ部長に乗ってもらいましょう。まずはシートポジションの設定から。ですが「どこにあるんですか?」と右往左往。通常右側にあるのですが、クルマの中心部分にあります。それがパーキングブレーキと近くてちょっとやりづらそう。続いてエンジンを始動させようとしますが、「あれ? ボタンはどこですか?」と車内を見回します。そして「え? 鍵を回すんですか?」と驚いた表情をみせます。
次に戸惑ったのがシフトレバー。「これ、どうなっているんですか?」というわけで、日本車で見かける「P」と「D」と書かれたポジションがないのです。これは何かというと、セミATで、オートマで動かすこともできるのですが、基本的には手でシフトをした方がスムースに走れるというもの。「なんですか? それ」と言いながら、とりあえずシフトを左に倒して発進。
バイクに乗ったことがある人なら「2気筒エンジンってこうだよね」という、特有のパルス感を伴なう乗り心地とサウンド。一方、マルチシリンダーしか知らない方からすると「なんだコレ?」という感覚。EV大好きのゆみちぃ部長にとっては、対極に位置するのですが「これはコレでいいかもですね」と、これまた意外と好反応。そう、カワイイは正義ですから。パルス感のある振動がお好みでない方は、1.4リットル4気筒エンジンが用意されていますので、こちらをどうぞ。
パワー不足を感じることは少ないものの、ガンガン踏んで飛ばすクルマではありません。トコトコと走るのが良い感じ。ゆみちぃ部長はATのまま走らせますが、ギアが変わる度にシフトショックが。これはセミATを駆使し、さらにシフトアップ時にアクセルを抜くなどの動作をすると、かなり低減されます。「なんか……、昔のクルマみたいですね」と親のクルマを思い出したかのようなゆみちぃ部長。
乗り心地は、欧州車らしく国産車と比べると硬め。街乗りしている時、道路工事など道が荒れている場所では、耐えられないほどではありませんが、ドライバーに強いインパクトを伝えてきます。ボディーは今の水準からすると、ちょっと緩めの印象ですが、それゆえ「車全体で衝撃をいなしているのでは?」とも感じました。なんでも硬ければイイ、というものでもないのです。そして車体が軽いので、ハンドリングは軽快そのもの。街乗りで、ちょっとしたゴーカート気分が味わえるのです。
意外に思ったのは高速道路での安定性。エンジンを回すと「大丈夫なの?」と少し心配になる音が聞こえるのですが、新東名120km/h区間では「これ、ちょっとスゴいかも」と驚くほど。考えてみたら、日本よりも車速の高い道路がある欧州なのだから当然なのですが。
折角なので、ゆみちぃ部長にオープンカー体験をしてもらいました。ルーフはフルオープンとルーフ部のみのセミオープンの2段階が選択可能。髪が乱れる、日焼けするという理由から、オープンカーは苦手という女性は多く、ゆみちぃ部長もその一人。でも街乗りでは風の巻き込みはそれほど多くありません。これなら楽しんでもらえると思ったのですが「あの……雨が降ってきてませんか?」という事で取材終了。「楽しいかもしれませんが、今日はダメでしたね」というわけで、ゆみちぃ部長のオープンカー体験は、また別の日にしましょう。
「今のクルマの方が機能面で優れていると思いますが、可愛くてオシャレなので気にならないですね」とFIAT 500に好印象を抱くゆみちぃ部長。「なんか、一生懸命に走っているような感じがしますね。それが見た目とあっていて、愛おしく思えます」と、多少の欠点もポジティブに捉えられるほど気に入ったご様子。そして何度も「カワイイ」とFIAT 500を見回したのでした。やっぱりカワイイは正義なのですね。
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