以前、画像生成AIを使ったイラストの模倣、「AIトレパク」が問題になっているという話をしましたが、画像生成AIと著作権の問題は国際的にも複雑化しています。まだ、現時点ではどうなるのかがはっきりしない混沌とした状況が進み続けています。しかし、現時点で大きなボトルネックになっているのは、計算をするGPUのチップ性能であるため、長い目で見たときには、今後必ず起きると予測できるのは、画像生成AIがリアルタイムに使われるようになり、それで生み出されるコンテンツが登場する未来です。
画像生成AIが集団訴訟を起こされる
アメリカで、1月に画像生成AIを開発し、サービスを展開しているStablity AIやMidjourneyなどを相手取って集団訴訟が提起されました(米The Vergeの記事)。著作権侵害を理由に、損害賠償と利用差し止めを求めています。プレスリリースでは「LAION-5Bデータセットに含まれる数十億の著作権で保護された画像で訓練され、アーティストからの補償や同意なしにダウンロードされ使用されています。(略)AI画像商品は、単にアーティストの権利を侵害するだけでなく、その狙いがあろうとなかろうと、アーティストという職業を消滅させることになる」と厳しい論調で述べています。LAION-5Bデータセットは、ドイツでAI向けの研究目的で作られ、主にネット上から収集された約58億枚のカラー画像のデータとタグ付けに利用できるテキスト処理が施されたデータです。
原告の立場からすれば、ドイツで研究用に作られた画像データセット(LAION-5B)をAIの学習に利用して、それを大規模に商用利用にも使うことはフェアユースの概念から大きく逸脱しているという主張です。アメリカの著作権法にはフェアユース条項があり、「批評、解説、ニュース報道、学問、研究を目的とする場合、著作権のある作品を許可なしで『限定』利用することを著作権法違反としない」とするものですが、その範囲をめぐって明確な定義がないため、裁判で争点が発生しやすいポイントです。
原告は「これらの製品が、大量の知的財産の使用を伴う他の新技術と同じルールに従うことを保証することを目的」としており、さらに「音楽のストリーミングが法律の範囲内で実現できるのであれば、AI製品も同じように実現できるはず」とも述べており、裁判を通じて、何らかの画像生成AIへのレギュレーションづくりに向かわせることも意図していることも明らかにしています。
この裁判以外にも、マイクロソフトとOpenAIに対しても集団訴訟が提起されるなど、生成系AIへの事業者を相手にした複数の集団訴訟が始まっています。まだ裁判は始まったばかりで、画像生成AIを提供する企業は全面的に争うと考えられるため、どのような結果になるのかはまったくわかりません。ただ、その結果は画像生成AIの未来に大きな影響を及ぼすと考えられているため注目されています。ちなみに日本においては、2019年の改正著作権法により、日本国内で画像生成AIが学習する場合は、どのような画像データセットを使っても合法です。

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