作家のタッチが簡単に模倣できてしまう
さらにいまStable Diffusionで問題として認識されつつあるのが、簡単に追加学習用モデルを作れてしまうがゆえに起きてしまう、画風のコピーです。
21年7月に論文として発表されていたLoRA(Low-Rank Adaptation of Large Language Models:大規模言語モデルの低ランク適応)という手法が、昨年12月ごろにStable Diffusionで使えるようにしたプログラムが注目を集めるようになりました。この方法は学習によってターゲットする画像を30枚あまり用意して学習させると、その画像に近い雰囲気の画像を生成する学習データを生み出せる手法です。しかも必要とするVRAMの量も少なくてすみ、計算時間も10分程度で、新しい概念として学習を完了できるため、非常に簡単に特殊な学習データを追加で作れるメリットがあります。
その特性を利用して、有名なイラストレーターの画像を用意して学習させ、その学習モデルデータが公開されることが次々に起こるようになりました。
たとえば、1月に公開された「Pastel Mix」というモデルは中国人のイラストレーターMatchaさんのイラストを大量に読み込ませたものではないかとされています。本人も「(自分の絵をAIに)使わないでほしい」とTwitterで発言していますが、すでに学習済みモデルとして広く流通してしまっています。作成者もMatchaさんの画像を使ったと断言はしていませんが、ファンの人から見ると独特な色彩が似ていると感じられるというわけです。
難しいのは、作成されたデータは、Matchaさんの特徴は出しているように思われるものの、著作物としての依拠性を追求できるかがわからないところなんですよね。特徴的な配色は出力画像に出ているように見えますが、画風に著作権はないというのが一般的な解釈ではあります。やはり、根拠となる判例が作られないと、なんとも言えない状況です。
こうした形で特定のイラストレーターの画風を学習させるようなものが出てくると、アーティストにしてみれば「一所懸命に描いた絵を画像生成AIにパクられた」という気持ちになってしまいます。ただこれらのモデルは、ほぼ無料で公開されており、有料サービスとして出てきていないこともあり、的確な被害額の算定が難しく、訴えようもないという実情があります。
さらには、AI画像をSNSで積極的に発表している人の画像を、さらにLoRAで学習させて、その学習モデルデータを配布するというケースも登場しました。2月6日に公開された「Phantom Diffusion」というモデルデータでは、日本人のAI画像を発表している48人の直近の画像30枚を個別に学習し公開されています。それぞれのモデルデータが、その人の画像っぽい絵柄を生成します。このことが意味するのは、何の学習データやどのような設定で画像を生成しているのかがわからなくても、その人の作風を画像生成AIは学ぶことが可能になったという事実です。これも著作権的にどう位置づけるべきなのか、現状ははっきりとしません。
同じシード値とプロンプト(テキストによる命令)で出力した例。それぞれのDiffusionは、852wa(左)、Defpoint(中央)、swingwings(右)。元の作者の作風に似ているようでもあり、似ていないようでもあり。(画像:筆者作成)
著作権問題は、世界レベルで混沌としている状況で、どのようになっていくのかは現時点では見通せないのが実情です。
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