半年以内の事業化に向けPoC中、データ事業売上「1.1兆円」を目指す
三菱電機×燈が“爆速”で挑むフィジカルAI 工場無人化に向けた“ラストピース”を埋める
2026年03月31日 10時00分更新
2026年1月の年頭会見にて高市総理は、「フィジカルAI」を日本の成長戦略に据えている。その中で象徴的な事例として挙げられた「工場無人化」の実現に向けて、急ピッチでPoC(概念実証)を進めているのが三菱電機だ。AIスタートアップの燈(あかり)との二人三脚で、半年以内のPoC完了とその後の事業化を目指す。
三菱電機と燈は、2026年3月17日、フィジカルAI戦略に関する発表会を開催。三菱電機の代表執行役 執行役社長 CEOである漆間啓氏は、「『人が創造して、AIが動かす社会』の実現に向けて、燈とのWin-Winの関係を築きながら、スピードを高めてフィジカルAIと向き合っていく」と語った。
“循環型デジタル・エンジニアリング企業”への転換を次ステージへ
2021年の漆間氏の社長就任以降、「循環型デジタル・エンジニアリング企業」への変革を推進する三菱電機。顧客データをデジタル空間に集約・分析して、新たな価値を創出し、顧客や社会に還元しながら成長していく企業を目指している。
この目標に向け、2024年5月、データの集約と共創のためのデジタル基盤「Serendie®」を提供開始。2026年1月には、OTセキュリティ事業の拡大とデータ活用の高度化を目的に、米セキュリティ企業「Nozomi Networks」を完全子会社化したばかりだ。そして、満を持して本腰を入れるのが、データ活用を次のステージに引き上げる「フィジカルAI」である。
フィジカルAI領域における三菱電機の強みは、止められない現場を支えるPLCなどの制御機器の展開から得られたノウハウだ。漆間氏は、「制御機器を中心に、様々な現場で蓄積してきた知見を活かせるのがフィジカルAI。“現場の暗黙知”をAI化することで、省人化にまでつなげられる」と強調した。
三菱電機が求めた「爆速」のAI実装力
フィジカルAIの事業化に向けた中核的な取り組みのひとつが、さまざまな企業とのパートナー戦略だ。その一環として、東京大学発のAIスタートアップである燈との連携を進めている。
2026年1月、三菱電機は燈への出資と、同社との協業を発表した。2021年の創業からわずか5年足らずの燈だが、すでに企業評価額が1000億円の大台に到達するなど、急成長を遂げている。建設業のDX支援から事業を始め、現在では製造業を含めたものづくり産業全体へとターゲットを拡大中だ。
三菱電機がフィジカルAIのパートナーとして燈を選んだ理由は、「ベンチャーならではのスピード力」への期待だという。大企業である三菱電機の場合、意思決定や開発にどうしても時間を要するのは否めない。一方の燈は、5つの行動指針の1つに「爆速」の二文字を掲げる企業だ。漆間氏は、今回の協業を機に「我々も“爆速”に近づいていきたい」と語る。
燈の代表取締役社長 兼 CEOである野呂侑希氏は、同社の強みとして、独自開発したデジタルツインの構築基盤である「Melchior(メルキオール)」と「AIの実装力」を挙げる。
「未だデータ化されていない現場の情報をデジタル空間に取り込み、Melchiorでシミュレーションする。そうして培ったAIを現場の機器に還元するというサイクルを、高精度かつ迅速に回せることが最大の強み」(野呂氏)
この燈のデジタルツインやAI実装技術、そしてスピード感を、三菱電機の強みである現場の知見や制御技術と融合することで、三菱電機はフィジカルAIの事業化を目指していく。
三菱電機では、2026年1月に、AI領域のCoE(Center of Excellence)組織となる「AXイノベーションセンター」も新設している。これまでAI戦略室や生産技術センターなどに分散していたAI人材が集結し、フィジカルAIの標準化や事業化に向けてのスケールを担う組織だ。フィジカルAIを社会や企業に実装していく実行部隊として、燈との密な連携が始まっているという。
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