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連載:今週の「ざっくり知っておきたいIT業界データ」 第68回

IT市場トレンドやユーザー動向を「3行まとめ」で理解する 1月28日~2月3日

2025年にはSaaS購入者の過半数が「IT部門以外」、Web会議の裏側、ゼロトラスト実装率、ほか

2023年02月06日 08時00分更新

文● 末岡洋子 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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 本連載「ざっくり知っておきたいIT業界データ」では、過去1週間に調査会社などから発表されたIT市場予測やユーザー動向などのデータを、それぞれ3行にまとめてお伝えします。

 今回(2023年1月28日~2月3日)は、テクノロジープロバイダー向けの市場トレンド、大企業/政府組織が警戒すべきサイバー脅威、Linux Foundationの年次オープンソースレポート、ウェブ会議の実態、国内の統合型マーケティング支援(MA)についてのデータを紹介します。

■[トレンド]2025年までにSaaSの95%がPLGを市場戦略に採用(ガートナージャパン、2月2日)
・2025年までに成功する先進テクノロジソリューションの55%が「IT部門以外の購入者」に提供される
・2025年までにSaaS事業者の95%が「プロダクト・レッド・グロース(PLG)」を採用
・IT部門のみで購入しない「連携型購入」が加速

 2023年のテクノロジ・プロバイダ向けのトレンドをまとめた。大きなトレンドは、(1)ビジネスにおけるテクノロジへの依存度の高まり、(2)テクノロジが生み出す新たな機会、(3)外部のマクロ環境によるインパクト、の3つ。そのうち(1)ではいわゆる“テクノロジの民主化”が進み、IT部門以外など従来とは異なる購入者に提供されるため、ベンダーも新たな市場に参入すると予測している。市場参入戦略としては「プロダクト・レッド・グロース(PLG、製品が主役となる営業手法)」がトレンドであり、SaaSの95%が新規顧客獲得のためにセルフサービス型PLGを採用すると予想している。

■[セキュリティ]大企業や政府組織が警戒すべきサイバー脅威トレンドは?(カスペルスキー、1月31日)
・ランサムウェア攻撃者が不正侵入を公開する件数が増加、500件を超える月も
・マルウェア・アズ・ア・サービスにより、ランサムウェア攻撃は今後も増加
・クラウドが攻撃経路として利用される

 同社Security Servicesチームが、大企業や政府組織が備えるべきサイバー脅威を予測した。ランサムウェア攻撃者が自らが行った不正侵入を公開する行為が増えており、2021年には月200~300件だったのが、2021年末~2022年上半期にかけては月500件を超えることもあったという。あわせて、マルウェア・アズ・ア・サービスの出現によるランサムウェア攻撃の増加、不正侵入した企業への初期アクセスをダークネットで取引するサイバー犯罪者などにも注意を呼びかけている。ほかにも、個人データの漏洩増加により企業のメールが悪用されるリスク、犯罪者が話題作りのために虚偽のデータ漏洩を投稿するリスクもトレンドに挙げている。

ランサムウェアを仕掛ける攻撃者が、企業・組織への不正侵入後に自らのブログに投稿するケースが増えているという(出典:カスペルスキー)

■[オープンソース]Linux Foundation、2022年のコミュニティ貢献価値は260億ドル(Linux Foundation Japan、1月31日)
・傘下プロジェクトのリポジトリからのコード出荷は毎週5260万行
・2022年、60万5000人のテクニカルコントリビューターが参加
・コントリビューション(貢献)を金額換算すると260億ドル規模に

 非営利団体Linux Foundation(LF)の年次報告書「セキュリティとイノベーションでリーダーシップ( Leadership in Security and Innovation)」より。2022年、LFは「PyTorch」など79のプロジェクトを追加し、1万2000以上のリポジトリから毎週5260万行のコードを出荷した。テクニカルコントリビューターの数は60万5000人で、プログラマーの世界平均給与と就業時間に基づくと、控えめに見ても260億ドルの価値があったとしている。

2022年のLinux Foundationの活動のインフォグラフィック(出典;Linux Foundation)

■[セキュリティ][ゼロトラスト]クラウド移行中企業の94%がゼロトラスト実装、従来型では不十分(ゼットスケーラー、2月2日)
・ゼロトラスト アーキテクチャーを実装済み/実装中/実装予定の企業は94%
・66%が「従来型ネットワーク・セキュリティでは安全なクラウド変換ができない」
・投資の最優先は「デジタル・エクスペリエンス・モニタリング(DEM)」

 クラウド移行中のIT部門の意思決定者を対象とした調査レポート「2023年版 ゼロトラスト トランスフォーメーションの現状」より。ゼロトラストアーキテクチャを「実装済み」「実装中」「実装予定」は日本で94%、グローバルでも90%以上だった。ゼロトラスト実装を進める理由として、66%が「従来型ネットワークセキュリティでは安全なクラウド変換を図れない」、「従来型ファイアウォールやVPNよりもゼロトラスト・ネットワーク・アクセス(ZTNA)のほうが明らかに優れている」と回答した(グローバルは68%)。今後1年優先する投資について、日本は「デジタル・エクスペリエンス・モニタリング(DEM)」がトップ、グローバルは「ZTNA」だった。

■[働き方]24%が経験、ウェブ会議中に「関係ない仕事をする」(ネオジャパン、1月31日)
・ウェブ会議についやってしまったこと、最多は「関係ない仕事」(24%)
・19%が「人に見せられない身だしなみでの参加」
・カメラは「常にON」が30%、「常にOFF」21%

 ビジネスパーソン400人を対象にしたウェブ会議の実態調査。調査は12月に実施した。ウェブ会議中についやってしまったことについては、トップが「その会議とは関係ない仕事をする」(24%)、続いて「人には見せられない身だしなみで参加」(19%)だった。「機材や通信環境のせいにしてサボる」という回答も7.8%あった。ウェブカメラのオン・オフについては、オン(常にON/どちらかというとON)が58.6%。オン派からは「顔を見て話すことがコミュニケーションの一環」などの意見が挙がり、一方でオフ派からは「社内の人が嫌いで顔を見たくない」という声も。なお、他のメンバーがカメラをオフにしている場合に持つ印象については「他のことをしながら参加していると思う」(21.5%)が最多だった。

ウェブ会議でついやってしまったこと。「関係ない仕事をする」が24%で最も多い(出典:ネオジャパン)

他のメンバーがカメラをオフにしていたらどう思うかについては、「他のことをしながら参加しているのかなと思う」が最多(出典:ネオジャパン)

■[マーケティング]統合マーケティング支援市場はBtoBが牽引、2021年度は前年比16%増で成長(アイ・ティ・アール、1月31日)
・統合型マーケティング支援市場は2021年度234.5億円、前年同期比16%増
・前年度比成長率はBtoBが18%、BtoCが15%
・2022年度は前年比14%で成長の見込み

 国内の統合型マーケティング支援(MA:マーケティング・オートメーション)のBtoB、BtoC別の市場規模についての調査。新規ユーザーの増加、大企業などでの既存システムの拡張が進んでいることから、2021年度の市場規模(BtoBとBtoCの合計)は、前年同期から16.7%増加し234億5000万円となった。2022年度も14.5%増で成長を見込む。市場の牽引役はBtoBで、2021年度はBtoBは前年度比18.6%、BtoCは同15.1%の増加となった。この傾向は2022年度も続くと見ており、2026年度のBtoB向け市場は210億円、2021年から26年までのCAGRは13.8%、BtoC向け市場は200億円、同9.9%と予測している。

国内統合型マーケティング支援市場の規模の推移と予測。濃い青がBtoB、水色がBtoC(出典:ITR)

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