業務を変えるkintoneユーザー事例 第310回
kintoneを用いて現場のプライドを守るチャレンジ
「そんなことも知らんで、介護やってるんですか?」 救急隊員の一言からkintone×AIの組織変革が始まった
2026年05月29日 09時00分更新
救急搬送に駆けつけた救急隊員に言われた「そんなことも知らんで、介護やってるんですか?」の一言。憤ると共に、悔しい思いをした介護事業者の社長は、組織改革に乗り出す。それはkintoneを用いて現場のプライドを守るチャレンジでもあった。
kintone hive 2026 osakaの4番手として登壇したのは、神戸の介護事業者であるやないメディカルサービスの柳井寛之さん。「私はエンジニアではない。でも組織は変えられた」と語る柳井さんは、経営者の目線でkintoneの導入と浸透を語った。
救急隊員の一言で感じた怒りと気づき
やないメディカルサービスは「サ高住」と言われるサービス付き高齢者向け住宅「アリビオ塩屋」やデイサービス、訪問介護、居宅介護事業所などを手がける介護事業者。神戸市垂水区でサービスを展開しており、社員数は50名程度になる。
今回のタイトルは「kintone×AI~素人が挑戦した組織変革~」というもの。「私はエンジニアではございません。でも、組織を変革することはできたと思います。kintoneとAIを掛け合わせながら、どのように組織を変えていったかをお話ししたい」という柳井さんは、kintone導入のきっかけになったある出来事を語り始める。
サ高住の運営では、事故がつきもの。ある日、利用者が転倒し、救急搬送されることになった。こうした搬送のときに必要なのが、利用者の食事や排便、服薬などの記録だ。もちろん記録は用意されているが、まとめて出すのに手間取ってしまった。この結果、救急車の救急隊員から言われたのが、「そんなことも知らんで、介護やってるんですか」だったという。
柳井さんは「ありえないですよね。めちゃくちゃ腹立ちました。ちゃんと記録もあるのに、なんでこんな言われ方せなあかんの」と関西弁で声を震わせる。ただ、情報がまとまっていなかったことは事実。しかし、問題は介護業界特有の紙での記録ではなく、情報の分断だったという。
抵抗する社員を変えるのではなく、環境を変える
紙の記録から脱却すべく、「ノーコードでアプリが作れる」という謳い文句に誘われた柳井さんが選択したのがkintoneだ。無料期間中に出会ったのは、kintoneの伴走支援を行なってくれる「おはし総研」の西垣さん。柳井さんが現場と経営の部分、西垣さんがkintoneの技術面を役割として受け持つことで、kintoneの導入がスタートする。
とはいえ、kintone導入には壁がつきもの。社員からは「kintoneって何ですか?」「そもそもちゃんとできているのに、なんで別のツールが必要なんですか?」という声が出てくる。では、どのようにkintoneを導入するか? 柳井さんが考えたのは、抵抗する社員を説得するのではなく、環境自体を変えることだ。
最初に手を付けたのはバックオフィス。やったのは、Excelを取り込み、関連付けるというシンプルな作業だ。「要は利用者と社員の名簿データを整えただけ」(柳井さん)。その上で、幹部職員に対して、IF関数などExcelと同じように使えることをアピール。また、gusuku Customine(アールスリーインスティテュート)やkrewData(メシウス)などのプラグインでカスタマイズやデータ分析が容易になると説明した。
この結果、幹部職員が参加する会議の様子が少しづつ変化していった。「みんなやってます」とか、「だいたいこうですよ」といったあいまいだった表現が、導入以降は「何%上がった」といった事実・数字ベースの会話に変化していったのだ。
プライドが邪魔して人に聞けない社長の相談相手はChatGPT
さて、この時期、柳井さんがkintoneで困っていたのは西暦表記をどのように和暦で表示するかという問題だ。「こんなのプラグインを使えば、一発で解決できるはずです。でも、私は変なプライドが邪魔して、人に聞けないんです(笑)」と柳井さんは語る。
そんなプライドがあっても、気軽に聞ける相手が、当時流行り始めていたChatGPTだ。「kintoneで和暦表示するにはどうしたらいい?」と聞いたところ、JavaScriptのコードが返ってきた。エンジニアではない柳井さんはJavaScriptも知らなかったし、もちろんコードも読めなかったが、たまたま時間があったため、kintoneに組み込んでみたら、うまく動いたという。
調子に乗った柳井さんは、課題が現れるたびに、ChatGPTにコードを書いてもらう。以降、1年半で27回もコードを組み込んでいたという。「私は折れ線グラフがきらい。スムースじゃないし、曲線じゃないので変化が見えにくい」という課題についても、ChatGPTで解決。普段利用している表現に近づくと、幹部も俄然使うようになる。この段階で、いよいよ全職員が日常的にkintoneを利用できる環境の構築に進むこととなる。
全職員が利用するアプリとして選んだのが、出退勤を打刻・管理するタイムカードアプリだ。ポータル画面からアプリを選べるようにし、選択式でクリック数も極限まで削減。出退勤をとにかく容易にできるようしたという。
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