2023年7月から電動キックボードが、自転車とほぼ同様に免許なしで乗れるようになる。
最高時速は時速20km以下で、16歳以上の人であれば運転免許は不要。ヘルメットの着用は「努力義務」とされた。
車やバイク、自転車とともに車道を走ることになるが、新しいタイプの交通手段を免許なしで使えるようになるため、一定の混乱も予想される。
安全性をめぐって懸念や反発の声もある中で、新しい制度が導入される背景には、「モビリティ(移動手段)の多様化」が進んでいる現状がある。
歩行者や車、自転車だけでなく、自動運転車や自動走行ロボットなども道路を移動する近い未来が近づいていることを実感させる動きだ。
実は背景にあるのは高齢化と人手不足?
今回のルール改正をさかのぼると、警察庁が主催した「多様な交通主体の交通ルール等の在り方に関する有識者検討会」の報告書(2021年12月公表)に行き着く。
この報告書は、移動手段を取り巻く現状を次のように記している。
「新たなモビリティについては、我が国の既存の交通ルールの下では十分にその性能や利便性を生かすことができない可能性が指摘されている現状にあり、交通ルール等の在り方の見直しを求められている状況にある」
この数年、日本国内のあちこちの自治体で、新しいモビリティを使った実証実験が盛んに行なわれている。
背景には、高齢化と人手不足があるようだ。
たとえば、コロナ禍で外に出られない、あるいは忙しくて時間がないといったときには、ネットスーパーで食品を買って届けてもらうことがある。
倉庫から配送拠点まではトラックによる大量輸送が可能だが、最も消費者に近い配送拠点から消費者宅までは、多くの人手がいる。
しかしこの仕事は、大量の荷物を時間内に届けるかなりきつい仕事のようだ。高齢化が進み、人手不足が盛んに報じられている中で、今後人手の確保が心配されている仕事の一つだろう。
2022年5月には、楽天グループ、パナソニックホールディングス、西友が茨城県つくば市で、配送ロボットが利用者の自宅に食品を届ける実証実験を実施している。
さらに人手不足が指摘されているのは、高齢者や障がい者のケアを担う介護職員だ。
厚生労働省は、2025年に32万人の介護職員を確保する必要があるとの推計を発表している。
車いすでの移動を介助するのも介護職員の仕事に含まれるが、2022年8月には成田空港内で、自動運転の電動車いすの実証実験が行なわれている。
警察庁の有識者会議の報告書が述べていたように、電動キックボードや配送ロボットなど新しいテクノロジーを道路に実装していくには、ルールの変更が順次、必要とされる状況がある。
死亡事故も起きている
新しいモビリティが普及する中で、やはり大きな心配事は安全だ。
警察庁の公表資料によれば、2020年から2022年6月までに電動キックボードが絡む人身事故は49件発生し、計51人が負傷している。
2022年9月には、電動キックボードを運転していた50代の男性が駐車場の車止めに衝突し、頭を強く打って死亡する事故が起きた。
9月26日付の朝日新聞の記事によれば、この事故は電動キックボードが絡む死亡事故として初めての事例という。
第三の走行帯の必要性

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