スキルアップや資格取得への近道、無償のオンライン講座「Microsoft Virtual Training Days」とは〔後編〕
無償の学習リソースだけでマイクロソフトの資格試験を受けてみたら……?
2023年01月25日 11時00分更新
“ラーニングパスの入口”Virtual Training Daysを受講してみる
前編記事では、マイクロソフトが考えるスキルアップのためのラーニングパスの全体像や、学びを支援する各種学習リソースについて教わった。
■前編記事の要点まとめ
・マイクロソフトでは、ロールベース=職種別(開発者/システム管理者/専門エンジニア/一般ユーザーなど)の体系的なラーニングパスを用意している
・それぞれのラーニングパスは「ファンダメンタルズ(初級)」「アソシエイト(中級)」「エキスパート(上級)」の3段階でステップアップしていく
・それぞれの段階に対応したマイクロソフト認定資格もあり、各レベルのスキルを持っていることを公式に証明できる
・“ラーニングパスの入口”として無償のオンライン講座「Microsoft Virtual Training Days」を提供しており、無償の学習コンテンツ「Microsoft Learn」と組み合わせて自学自習ができる
Azureテクノロジーについて体系的に、かつ効率良く学びたいと考えた筆者は、まず“ラーニングパスの入口”として勧められたVirtual Training Daysをオンライン受講することから始めることにした。がんばるぞー。
Microsoft Virtual Training Days:手軽に受講できるオンライン講座
前編記事でも紹介したとおり、Virtual Training Daysはマイクロソフトが提供する無償のオンライン講座(ウェビナー)だ。Azureを中心に、現在はDynamics 365、Microsoft 365、セキュリティ、Power Platformも含めて30以上のトレーニングコースが提供されている。
各コースの開講日程はあらかじめ決まっており(オンデマンド配信方式ではない)、毎月10コース程度が開講される。Webサイトには直近の開催スケジュール一覧が掲載されており、そこから参加登録もできる。早めに参加登録してスケジュールを空けておくのが確実だが、開催2日前の16時まで登録を受け付けているので、スケジュールの余裕ができたときに受講するというのも良さそうだ。
筆者は今回、前編記事で勧められた次の2コースを受講することにした。どちらも人気が高く、受講者の多いコースだという。
・ファンダメンタルズ:「Azure Fundamentals(Azureの基礎)」
・アソシエイト:「.NETアプリの最新化」
いずれも開催日程は2日間となっているが、実際の受講時間は半日(午前または午後)×2日間である(たとえばAzureの基礎は3.5時間+3.5時間、.NETアプリの最新化は3時間+2.5時間)。コースによっては1日だけで終わるものもある。
実は筆者も、よく調べる前は「平日のスケジュールをまるまる2日間空けるのは厳しいな……」と思っていたのだが、実際は半日ずつだったため調整しやすかった。受講者の多くは仕事をしながらスキルアップを目指す方だと思うので、こうしてコンパクトに受講できるのは助かるはずだ。
どのコースでも、Webサイトから簡単な受講者登録を行えば登録完了メールが届く。準備はこれだけだ。開催の3日前には、参加用のリンク(URL)が記載されたリマインダーメールが届く。
Virtual Training Daysを活用するために知っておきたいこと
筆者はまず、ファンダメンタルズ(初級)レベルの「Azure Fundamentals(Azureの基礎)」を受講した。
開始時間に参加用リンクからログインすると、画面にはいくつかのウィンドウが表示される。講師のプレゼンテーションが表示される中央のウィンドウのほか、マイクロソフトのエキスパートに質問が送信できるウィンドウ、学習リソースへのリンクが表示されたウィンドウなどがある。それぞれ拡大/縮小や移動、非表示化ができるので、自分好みに調整して受講をスタートしよう。
「Azureの基礎」コースの1日目(パート1)、2日目(パート2)の構成は次のとおりだ。
ファンダメンタルズレベルのコースは、対象分野の前知識がない初級者から受講できるようになっている。たとえば今回の「Azureの基礎」でも、最初は「クラウドコンピューティングとは」「クラウドモデル(パブリック/プライベート/ハイブリッド)の比較」「クラウドのメリット」といったレベルからスタートした。「これからクラウドについて学びたい」という受講者でも十分に参加できる。
講義中にわからないことがあれば、いつでも画面右の「AzureのエキスパートとのQ&A」ウィンドウから質問することができる。講義中はマイクロソフトのエキスパートが待機しており、日本語での質疑応答に応答してくれる。この仕組みもVirtual Training Daysの大きな特徴でありメリットだ。
もっとも、Virtual Training Daysの講義はそれなりに速いスピード感で、テンポ良く進む。特に初学者の場合は、知っておくべき言葉や概念が次々に出てきて少し苦労するかもしれない。講義で学んだ内容は、忘れないうちに「Microsoft Learn」などでしっかり復習を行って、場合によっては自ら手を動かしクラウド環境を操作しながら、確実に知識を定着させていくのがよいだろう。時間に余裕がある場合は、受講前にMicrosoft Learnを使って概要を予習しておくのもお勧めだ。
前編記事でも触れたとおり、Virtual Training Daysは“ラーニングパスの入口”と位置づけられており、学ぶべき事柄の概要を短時間でコンパクトに教えてくれる。ただし、それをしっかりと理解し、さらに深掘りして身につけていくためには、やはり自学自習の時間も必要である。この点はよく理解しておきたい。
講義中、画面左下の「リソース」ウィンドウには、聴講者が学習する際に役立つ各種リソースの資料やリンクが並んでいる。たとえば「関連リンク」のPDFをダウンロードすると、このコースに対応したMicrosoft Learnのラーニングパスや、「AZ-900」認定試験の申し込みページ、さらに「Azure Portal」の基本操作に関するドキュメントなどへのリンクが記載されていた。
さらに、2日間のコース終了後には「スキルアップ情報のご案内」というメールが届いた。メールのリンク先からダウンロードできる資料には、職種別のラーニングパス、Azure関連の認定資格に関する詳しい紹介、学習リソースの紹介などが記されている。これも価値の高い資料なので、届くメールを見落とさずに入手してほしい。
Virtual Training Daysで受講したら、Microsoft Learnですぐに復習する
筆者自身は「Azureの基礎」コースを受講してどう感じたのか。
IT分野の編集者兼記者ということもあり、まず冒頭のパートで説明されるクラウドコンピューティングの一般概念については「知っていることのおさらい」という感じで気楽に聞くことができた。
しかし、講義が進んでAzure固有のアーキテクチャ、固有のサービスの話になってくると、知らない事柄や理解不足の事柄も増えてきた。たとえば「Azure Resource Manager(ARM)」を中心とした管理レイヤーの構成、「Azure Policy」「Azure Blueprints」の細かな機能などについては、実務としてAzureを触っていないこともあり、理解が浅いことに気づけた。こうして自分の「まだ学べていない部分」「理解があやふやな部分」を知り、そこを重点的に復習すれば効率良く学習を進められる。これがVirtual Training Daysの効果だろう。
ちなみに、2日間のコースは6つのモジュール(単元)に分かれており、各モジュールの終わりでは「まとめ」の振り返りもなされる。また、画面左上のウィンドウ(情報と知識チェック)には簡単な確認問題も表示される。これらも「自分がわかっていない部分」の確認に使えるはずだ。
受講後の復習として、前述した「関連リンク」資料にあったMicrosoft Learnのラーニングパスを学ぶことにした。Virtual Training Daysのコースと同じ領域をカバーしているが、説明内容はさらに詳しい。そこで、「すでによく知っている」と感じた部分は流し読み程度にして、「よく知らない、わからない」と思った部分を重点的に読み、理解を深めていった。
ちなみにMicrosoft Learnの学習コンテンツには、テキストやビデオだけでなくAzureサンドボックス(無償の試用環境)を使って実際に操作を行う演習もある。ふだんの実務でAzureに触れる機会が少ない筆者のような学習者にとっては、こうして手を動かす体験が(しかも安全に、無償で)できるのもありがたい点だ。
無償の自習のみで「AZ-900」資格試験を受験してみた結果は……?
筆者が受講した「Azureの基礎」は、AZ-900(Microsoft Azure Fundamentals)資格試験に対応している。業務の合間を縫ってMicrosoft Learnで2週間ほど自習を行い、自信が付いてきたところでAZ-900の受験に挑むことにした。受験申し込みはマイクロソフトの公式サイトからできる。試験はPearson VUEの指定会場、またはオンラインで受けることができるので、筆者はオンライン受験を選択した。
ちなみに、2日間の「Azureの基礎」講座を終えたところで「AZ-900 復習コンテンツのご案内」という案内メールが届いていた。メールのリンク先で登録すると、マイクロソフトの公式ラーニングパートナー講師による、AZ-900試験対策のためのウェビナー(オンデマンド方式)が無償で受講できる。試験の概要や回答方法の説明から、試験範囲に対応した50問の想定問題まで、効率良く試験の直前対策が行える。全体で3時間超となかなかのボリュームだが、再生速度が調節できるので、筆者は1.5倍速で再生しながらポイントを見直していった。
AZ-900の試験時間は60分間だ。ただし、オンライン受験の場合は不正防止のため、試験開始前にPCのWebカメラで周囲の環境を試験官に確認してもらう必要がある。そのため、試験開始15分前のログインが推奨されている。
AZ-900の出題範囲は次のとおりとなっている(カッコ内は点数配分)。
・クラウドの概念について説明する(25~30%)
・Azureのアーキテクチャとサービスについて説明する(35~40%)
・Azureの管理とガバナンスについて説明する(30~35%)
問題数は平均で44問であり、1問あたり平均1分半ほどで解いていけばよい。もっとも、回答はすべて選択式や並べ替え式であり、マウス操作だけで進む(キーボード入力は必要ない)ので、内容をしっかり理解できていれば1問あたり10~20秒もあれば十分回答できるだろう。
筆者の場合は、見直し作業も含めて50~55分程度で回答が終了した。なお、前述した試験対策ウェビナーで学んだ内容がかなり役立ったことも記しておこう。
回答を終了すると、即座に採点が行われて合否判定も表示される。1000点満点中の700点が合格ラインだ。筆者の結果は「835点」。すばらしい成績とは言いがたいが、無事に合格することができてひとまず安心した。ほっ。
終了後には、各分野における正答率や他の受験者との成績比較のスコアレポートも表示される。筆者の場合は、もともと自信のなかった「Azureのアーキテクチャとサービスの説明」の分野が“弱み”だったようだ。一応合格できたとはいえ、この部分についてはあらためて学び直しをしたいところだ。
なお、取得した資格は「LinkedIn」の資格欄に登録することができる。自らの知識やスキルをアピールしてキャリアアップするチャンスにもつながるので、忘れずに登録しておこう。
アソシエイト(中級)レベルの「.NETアプリの最新化」も受講してみる
さて冒頭で触れたとおり、筆者はVirtual Training Daysの「.NETアプリの最新化」コースも受講してみた。こちらはアソシエイトレベルのコースであり、想定する参加者も「開発担当者、IT担当者」と明記されている。開発や運用の実務経験がない筆者にとっては、やや難易度が高そうだ。
「.NETアプリの最新化」の1日目(パート1)、2日目(パート2)の内容は次のとおりだ。オンプレミス運用してきたレガシーな.NETアプリをクラウド移行するうえで検討が必要なさまざまな項目(アセスメント、マイグレーション、最適化、セキュリティ対策、モニタリング)と、それを支援するAzureのツール(サービス)群を紹介する。
ちなみに「.NETアプリの最新化」は、「AZ-204:Developing Solutions for Microsoft Azure」資格試験の“関連コース”と位置づけられているが、「Azureの基礎」コースのように試験範囲全体をカバーしているわけではない(もちろん試験対策の一部としては役立つのだが)。アソシエイト以上のコースは、より実践的/具体的なスキルアップに特化しているものと捉えるのがよさそうだ。
実際に「.NETアプリの最新化」を受講してみると、具体的なクラウド移行のストーリーをベースとして、ライブデモを交えながら実践的な解説が行われる。単なるクラウド移行にとどまらない、クラウドのメリットを生かすためのベストプラクティスも紹介されるため、現場で活用できそうな内容だ。
たとえばAzureが提供する豊富なマイグレーション/アセスメントツール、コンピュートサービス、データベースサービスのそれぞれについて、どんな場合にどれを利用すべきなのかが説明される。また、セキュリティ対策や稼働状態のモニタリングといった、実運用のうえで欠かせない項目も網羅している。
受講前は難易度が高そうだと不安に感じていた筆者だが、いざ受講してみると意外と講義の内容にはついて行けた。ライブデモで実際の画面も見せながら解説してくれる点が、初級者にもわかりやすかったのだろう。とはいえ「大づかみに概要を把握できた」というレベルでしかなく、受講後にはMicrosoft Learnを使った復習や演習は確実に必要だが、やはりこちらも“ラーニングパスの入口”として役立ちそうだ。
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以上、本記事では筆者が実際にMicrosoft Virtual Training Daysを受講し、Microsoft Learnで学んでみたレポートをお届けした。
今回の記事ではAzureのラーニングパスに絞って紹介したが、マイクロソフトではDynamics 365、Microsoft 365、セキュリティ、Power Platformのラーニングパス、および学習リソースも同じように提供している。無償で利用できるものも多いので、ぜひとも活用いただき、スキルアップやキャリアアップのための学びを効率良くスムーズに進めていただけたら幸いだ。
■ Virtual Training Days「.NETアプリの最新化」
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(提供:日本マイクロソフト)