営業向けウェビナー開催、セールスフォースやLIFULLにおける具体的な活用方法を紹介
営業活動をデジタル化するための「Sales Cloud×Slack連携」を知る
2023年01月20日 08時00分更新
セールスフォースによる買収統合を経て、SalesforceとSlackのサービス間連携がより簡単、便利になっている。セールスフォース・ジャパンが2022年12月に開催した「Slack×Salesforce 営業フロアのデジタル化」体験ウェビナーでは、2つのサービス間連携で実現する新しい営業スタイルを、セールスフォース自身や不動産情報サービスのLIFULLにおける具体的な事例も交えながら紹介した。
なぜSlack×Salesforceの導入で「勝ち続ける営業組織」が実現するのか
このウェビナーでは、営業活動に役立つSlackの機能群を紹介したうえで、セールスフォース自身が営業活動においてどのようにSlackを活用しているのか、さらにLIFULLでSalesforceとSlackの連携をどう実現したのかといった具体的な事例が紹介された。
セールスフォース・ジャパンでSlackのマーケティングを率いる伊藤氏はまず、「営業活動のデジタルシフト」という動向について話した。
近年では営業活動も“デジタルファースト”になりつつある。たとえばある調査では、B2B領域の意思決定者は、4人中3人が「リモートでの人的交流」や「デジタルセルフサービス」を好み、また50%が「リモートワークにより購入プロセスがシンプルになった」と回答したという。
さらに、デジタルを取り入れることは「勝ち続ける営業組織」づくりにもつながると伊藤氏は語る。
Slackは、メッセージや資料のやり取りをトピックやプロジェクトごとに整理できる「チャンネル」、取引先やパートナーなど社外とのやり取りがセキュアにできる「Slackコネクト」、さらには「Salesforce Customer 360」連携などの機能を備えている。そのため、Slackを導入することで「クイックレスポンス」「顧客とのキャッチボール」「本質に向けた議論の深掘り」が可能になると、伊藤氏は説明する。たとえば、セールスフォースのCRM「Sales Cloud」とSlackを連携させることで、「営業生産性が26%向上する」という調査結果もある。こうした環境を用意することで、Slackは「勝ち続ける営業組織」を支援するとした。
実際、Forrester Researchの調査からも、Slackのビジネスインパクトは明らかだ。Slackコネクトの活用などによる商談プロセスの効率化によって商談サイクルが15%短縮されたり、成約率が13%改善するといった効果があり、「売上へのインパクトは1.41倍」と算出されている。また、顧客とのエンゲージメントが強化されることで契約継続率が2.1ポイント向上、顧客生涯価値(LTV)も5.4ポイント向上するなど、契約継続率にもインパクトがあることが報告されている。
進化する「Digital HQ」の最新機能「Slack canvas」
伊藤氏は「Digital HQ」の機能拡充にも触れた。Digital HQとは“デジタルの新しい職場”を意味しており、「リモートワークか出社かの選択ではなく、両方のいいところを実現するもの」だと伊藤氏は説明する。
Digital HQでしか得られないビジネスインパクトもある。たとえば、Slackチャンネル上で行き交うオープンなコミュニケーションやコラボレーションを通じて、自分が参加していない商談やプロジェクトの情報に触れることができ、これがイノベーションにつながることがある。また、短い動画を作成してチャンネルに投稿できる「クリップ」機能は、Web会議のように出席者の時間調整を行うことなく、それぞれの都合の良い時間に共有や確認ができる。また「ハドルミーティング」機能は、現実の職場で“ちょっといい?”と声をかけていたような手軽なコミュニケーションをDigital HQ上で実現する。ハドルミーティングはもともと音声会話のみの機能だったが、2022年のアップデートで動画にも対応し、資料の共有やリアクションもできるようになった。
Digital HQに追加された最新の機能が「Slack canvas」だ。2022年9月のSalesforce年次イベント「Dreamforce」で発表されたcanvasは、Salesforceのドキュメント作成・共有ツール「Quip」をSlackに統合したもので、チャンネルにいる複数のメンバーが、テキスト、画像、URLの埋め込みなどを使って、ナレッジを集約したページを作る。チェックリスト、ナンバリングなども利用でき、カード形式でわかりやすくレイアウトを整理することもできる。
伊藤氏は「チャンネルのスレッドでは情報が高速に流れていく。canvasを使えば、そうした情報を一カ所にまとめて整理、共有できる」と、その位置づけを説明した。なおSlack canvasは、2023年春に一般提供開始を予定している。
セールスフォースの営業チームはSlackをどう使っているのか?
それでは実際に、セールスフォース自身の営業活動ではSlackをどのように活用しているのだろうか。
セールスフォースジャパンのSlack事業統括 ビジネスグロース本部で中堅中小企業向け営業チームを率いる花房洵也氏は、Slackの導入で得られたメリットについて、「部門を越えたコラボレーション」「お客様とつながる」「業務を遂行」の3つから説明した。
まずは「部門を超えたコラボレーション」だ。取引先の顧客単位でチャンネルを作成し、営業、ソリューションエンジニア、カスタマーサクセスなどその顧客に関わる各部門の担当者が、効率よく情報共有をしながらディスカッションや作戦会議を行っているという。Salesfoceと連携することで、Salesforceに登録した商談メモが自動的にSlackにも通知されるようにした。これにより「商談の変化をいち早く捉えることができる」と花房氏は説明する。
「お客様とつながる」は、Slackコネクトを利用した顧客との密なコミュニケーションだ。Slackを導入している顧客企業も増えていることから、初回訪問時に「今後のやり取りはSlackでしましょう」と提案して、Slackコネクトで接続するようにしているという。つながった状態を維持することで接触頻度が増えることはもちろん、Slackでのやり取りを管理職がチェックできる、マーケティングや広報といった他部署のメンバーに参加してもらいたい場合もチャンネルに招待するだけで簡単に情報共有とやり取りができる、といったメリットがある。もちろん顧客とも、ハドルミーティングなどの機能を活用してコミュニケーションを深めることができる。
「業務の遂行」では、オリジナルアプリ「Midas」を使った簡単な資料作成、モバイルのSlackアプリを使った商談情報入力/更新や承認プロセスの効率化などを紹介した。どの部署に問い合わせればよいのかわからない質問については、「ライトクエスチョン」という専用のチャンネルを設けているという。またSlack内に社内の情報を蓄積しておくことで、提案中の顧客に類似した過去の提案内容を探すことも簡単にできると説明した。
「営業はとにかく業務過多で多忙。だからこそSlackを利用して効率的、効果的に仕事を進めることができる。多くの案件に対応できたり、商談サイクルの短縮が図れる」と花房氏は語った。
LIFULLにおけるSalesforce×Slackの連携とその効果
営業チームがSalesforceとSlackの連携によるメリットを体感しているのが、不動産情報サービスのLIFULLだ。LIFULL テクノロジー本部 コーポレートエンジニアリングユニットでユニット長を務める籔田綾一氏がゲスト出席し、連携の背景や連携のための実際の作業などについて語った。
LIFULLでは以前から、業務の基幹部分でSalesforce CRMを導入していた。ここに顧客情報、商談情報などを蓄積し、販売管理システムと連携させたり、マーケティング部門が「Marketing Cloud」で利用したり、「Experience Cloud」に出力して不動産会社などの顧客に提供している。また、BIツールの「Tableau」もセールスフォース買収前から利用してきたという。
このようなシステムを4~5年かけて作り上げてきたLIFULLだが、そこにSlackが加わった背景が、同社がコロナ前に掲げた「デジタルワークスペース」構想だ。
「いつでも仕事ができる(デジタルワークスペースの)環境を作るにあたって、中心になるのはコミュニケーション。それまで使っていたコミュニケーションツールでは、話の流れを追うのが大変だった。Slackの『スレッド』は魅力的だった」(籔田氏)
スレッド機能に加えて、籔田氏はSlackの魅力として「送信時間の設定」(「予定送信機能」)「アプリケーションとの連携」「パブリックチャンネルによる透明性」などを挙げる。
導入してから半年後に社内アンケートをとったところ、エンジニアやデザイナーの部門ではSlackの活用が進んでいた一方で、営業部はまだこれからという状態であることがわかった。「営業部門は普通のチャットツールとしての使い方にとどまっており、もっと活用できるんじゃないかと気がついた」(籔田氏)。
そこで、営業チームが日常的に使っているSalesforceとの連携を考えた。実はSlackの導入後、営業チームでも業務連絡はSlackに移行していたが、Salesforceからの通知はメールのままだったため、一本化することができず非効率な状態だったのだ。SalesforceとSlackを連携させることで、Salesforceからの通知もSlackで受け取るようにできないか――。
2ステップで簡単に連携できるSales CloudとSlack
ここでSalesforceとSlackの連携について整理しておきたい。両者を連携させるには「Sales Cloud for Slack」と「Salesforce for Slack」という2つのアプローチがある。
Slackの連携アプリカタログである「AppDirectory」を検索すると、「Salesforce」「Salesforce for Slack」「Sales Cloud for Slack」という3つのアプリが存在する。伊藤氏によると、「Salesforce」はSalesforceの買収統合以前から存在するSlack製の連携アプリ、「Salesforce for Slack」や「Sales Cloud for Slack」は買収後にセールスフォースが開発した連携アプリである。
名前も似ているため混乱しそうだが、伊藤氏はSales Cloud for SlackとSalesforce for Slackは「共存関係」にあると説明し、機能比較表を見せた。用途と必要な機能に応じて選択し、あるいは併用するとよいという。なおSales Cloud for Slackは現在一般提供中(GA)、Salesforce for Slackはベータ扱いだ。
今回、LIFULLの籔田氏が採用したのはSalesforce for Slackのほうだ。それ以前にSales Cloud for Slackを使って連携させたときはプログラムを書く必要があり「ハードルが高かった」という。2022年8月ごろにSalesforce for Slackが新たに登場したため、さっそく使ってみたころ、簡単に連携できて「感動しました」と籔田氏は語る。「今までの苦労はなんだったのかと(笑)」(籔田氏)。
Salesforce for Slackによる連携は、(1)Salesforce側の設定(Slackの初期設定)、(2)Slack側の設定(Salesforce for Slackの追加)という2ステップで完了する。
(1)は、Salesforceに管理者としてログインし、契約条件に同意してSalesforce for Slackを有効化、さらにSlack Salesユーザーを権限セットで有効にするという流れだ。籔田氏は、Slack連携を有効にしてもSalesforceのユーザーに権限セットを付与しなければ連携ができない点に触れ、「誰が利用できるのかのガバナンスを効かせることができる」と説明した。
また(2)は、SlackのAppDirectoryでSalesforce for Slackを検索して「追加」をクリック。Salesforceとの認証画面をはさみ、「受け入れる」を選択するだけだ。注意点としては、Slackと連携できるSalesforce組織は1つに限定されている点だという。
「このくらい簡単に連携できる。『ネイティブにSalesforceと連携できるなんて、Slackずるい』と思った」と籔田氏が笑うと、伊藤氏は「これがセールスフォースとの合併によるアドバンテージ」だと返した。
SalesforceからSlackにメッセージを飛ばすフローを作成しているが、Slackのフロー作成機能も多機能化やユーザーインタフェースの改良などが進んでおり、「直感的にできるようになっている」と伊藤氏は紹介した。
籔田氏は自らの体験から、SlackとSales Cloudとの連携について「最初に連携しやすいのはSalesforce for Slack。連携はこうやってできるんだという感触を掴んだ後に、Sales Cloud for Slackを試してもらうのもありかなと思います」と感想を述べた。
なおセールスフォースでは2022年12月、Sales Cloud側にさらなるSlackとのネイティブ連携機能を持たせることも発表している。詳細はまだ明らかになっておらず、2023年初頭にもその情報が出てくる見込みだ。また一般提供開始は2023年春を予定しているという。
籔田氏は今後の展開について「システムを構築して終わりではない。2周目として、Slackを業務の最初のトリガーと位置づけている」と語る。Slackに情報を集約し、それをトリガーとしてSalesforceをはじめとするさまざまなツールで作業をしていくようにしたいと考えているという。
まとめとして伊藤氏は「SlackはSystems of Engagement(SoE)のレイヤー、SalesforceはSystems of Record(SoR)のレイヤー」と位置付け、営業に関わるすべての情報が蓄積されているSoRのSalesforceを、SoEのSlackで活かすことができると語った。
(提供:Slack)